Webライティングにおけるコンテンツ戦略

Bjørn Bergslien

BjørnはNetlife Researchのコンテントストラテジストです。仕事以外の時間ではノルウェーのオスロにある彼のオフィスでブログを書いたりツイートしたりしています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Step Before Writing (2015-03-03)

私は過去に二回、Web編集者として仕事をしたことがあります。どちらの時も、会社側からは一刻も早い記事公開を常に迫られていましたが、一方で抱えている原稿は到底公開できないようなクオリティの低いものでした。その後、コンサルタントとして働くようになってからも、私は他のWeb編集者たちが、まったく同じ問題と格闘しているのを見てきました。

彼らは社内からの要求に疲弊しながら必死にコンテンツの生産に取り組み、同時にそれによって引き起こされる低品質なクオリティに再度苦しめられます。しかしそんなWeb編集者やコピーライターたちのような状況でもまだ、工夫によってはこのような問題をどうにか克服し、共感の得られるコンテンツを作り出すことができるのです。

1970年、インターネットが普及する25年も前のことですが、アメリカの作家で未来学者のAlvin Tofflerが語った「インフォーメーション・オーバーロード(情報の過負荷)」という言葉が流行語になりました。今日、Webサイトの総数は10億を超えました。Tofflerが流行らせた概念が今日、現実になったのです。統計的に詳しく見てみましょう。

・Instagramでは毎日8000万の写真がアップロードされている

・Facebookでは毎日3億の写真がアップロードされている

・Twitterでは毎日5億ものツイートがされている

・WordPress.comでは毎月4000万の記事が投稿されている

・YouTubeでは毎日50万のビデオがアップロードされている

・毎日5億4500万の電子メールが送信されている

基本的に、私たちの周りにはコンテンツが溢れかえっているのです。

歴史家学者でThe Informationの著者でもあるJames Gleichは「安っぽい情報は、注意を引くのにお金がかかる」と言っています。彼が言いたいことはつまり、私たちは情報の洪水の中で、日々山ほどのコンテンツに触れているので、誰の制作したどんな情報に注意を払うか、より慎重に吟味するようになっているということです。

顧客の注意を引きつける鍵は、言うまでもなく、いかに感動的で魅力的な、売れるコンテンツを作って提供するかということです。そのためにWeb編集者、コピーライター、デザイナー、情報設計者、開発者やその他のWeb制作担当者は、実際に仕事に取りかかる前に考えるべきことがあります。この思考プロセスを開始するにはいくつか方法がありますが、良質なコンテンツを作るためにまず最初にやるべきことは、「良質」ということの意味を定義することです。

Webにおける良質なコンテンツとは?

良質なWebコンテンツは、いきなりWordやGoogle Docsの空白のページを開いてすぐ書き始められるものではありません。私たちはシェークスピアやヘミングウェイが書くような文章を書きたいわけではないのです。あえて言うと良質なコンテンツを作ることは「正しい言葉を選ぶ」ということでさえありません。

良質なコンテンツは、ビジネスの目標に合致し、顧客のニーズを満たします。コンテンツ戦略家のErin Kissaneは著書『The Elements of Content Strategy』の中で「良いコンテンツ作りの原則はたった一つ、コンテンツをあなたのビジネス顧客、そしてそのコンテキストに最適なものにするということだけです」と書いています。

ここが私たちの出発点です。

イギリス政府のWebサイトgov.ukは実に良質なコンテンツを持っています。彼らの目標の一つは、Webサイトで必要な情報を提供することによって、人々からの質問の電話やeメールを減らすことです。彼らのコンテンツはその目標に叶ったものなので、 コンテンツの条件を満たした「良質な」ものだと言えるのです。

例えば、ある人が学生ビザの取得申請を出したかったとします。彼はまず、Student Visitor Visaのページを訪れます。ここには基本的な疑問について答えが書かれています。

・学生ビザ取得の要件を満たしているか?

・どのように学生ビザ取得の申請を出せばよいか?

・申請にいくらかかるか?

・申請の許可、却下の決定までにどれくらい時間がかかるか?

さらに、関連するページヘのリンクが貼られているので、申請書式、必要な資格やもの、同時に提出する書類、また「UKビザが必要になったときチェックの項目」などの関連するページを見て回ることができるのです。こうした疑問に答えることで、コンテンツは特定の顧客のニーズを満たすことができます。と同時に、このページはイギリス政府の経費節減に貢献します。なぜなら、彼らはわざわざイギリス内務省に電話をかけたり、実際に出向いたりする代わりに、インターネット上ですべての必要な情報を見つけることができるからです。ネット上ですべてを確認し、そして願書をオンラインで提出することができるのです。

良質なコンテンツを生み出す方法

私がコンテントストラテジストとして仕事をしているノルウェーのUX代理店Netlife Researchでは、コピーライター、コンテンツホルダー、Web編集者たちがコンテンツを作成する際に役立つツールやテクニックをまとめたメソッドセットを開発しました。実際に筆をとる前に、コンテンツの目的確認やユーザータスクの整理ができるものです。

その中でも最もよく使われているのは、次の三つです。

1. コアモデル

2. コンテンツ・フレームワーク

3. ペア・ライティング

これらのメソッドはコンテンツ戦略の代替品ではなくて、その戦略を補助するものです。では、それぞれについて詳しく見て行きましょう。

コアモデル

コアモデルは同僚のAre Hallandが作ったもので、ビジネスの目標やユーザータスク、そこにあるコンテキストをマップに書き出すためのツールです。コアモデルは、企画デザインのコンセプトを決める段階で、プロジェクトに関係する様々なメンバーからの意見を取り入れるのに役立ちます。コピーライターやコンテンツの所有者、編集者だけではなく、プロダクトの専門家やマーケット担当、コミュニケーションアドバイザー、開発者といった人たちからも広く意見を得ることができます。

プロジェクトに関係する人たちはコアモデルを用いることで、ペア、あるいは何人かのグループに分かれて、ビジネスの目標、ユーザータスク、顧客のこれまでの経路(顧客はどうやってこのページに辿り着いたかなど)、そして顧客のこれからの経路(顧客が次にやるべきことなど)について書き出して、議論することができます。このメソッドはまた、核になるコンテンツを目に見えるように描き出すのにも使えます。

Netlife Researchのコアモデル手法

Netlife Researchのコアモデル手法

コアモデルは古いコンテンツを改善したり、新規のコンテンツを作る時、ウェブサイトの構造を考えるときにも便利です。空白のページではなく、より構造化された、ビジネス指向の、顧客中心の考え方に焦点を合わせることが可能になるのです。

コンテンツ・フレームワーク

コンテンツ・フレームワークは、コピーライターや編集者が、クライアントやその領域の専門家、上司、コンテンツの所有者たちに、新しいコンテンツについて要望を出す前に記入してもらうための書式です。このフレームワークには、事実に基づくメッセージやビジネスの目標、期待する顧客層などについて書いてもらう欄があり、ライターや編集者がビジネスの目標に合った、ユーザーの役に立つコンテンツを制作するための知識を前もって得ることができます。

コンテンツ・フレームワークによって、素晴らしいコンテンツを作るのに不可欠な以下のような要素について尋ねることが可能です。

・このコンテンツの目標は?

・そのコンテンツはビジネスの目標や戦略のためにどう役立つか?

・公開されると、誰がそれを読むか?

・読んだ人たちは次に何をすると思うか?

・なぜ彼らはそれを読むのか?

・コピーにはどのようなキーワードを含めるべきか?

Netlife Researchのコンテンツ・フレームワーク

Netlife Researchのコンテンツ・フレームワーク

このフレームワークは、ビジネスについてライターと編集者が意見をまとめることができるばかりでなく、他の制作関係者や役員、クライアントたちから後でライターに何か言われるより前に、彼らの言いたいことや、何のためにそれを言いたいのかといったことを得ることも可能にします。コンテンツ・フレームワークは日常的になされているコンテンツ開発作業にも使う事が可能です。

ペア・ライティング

二人一組のペアで書くアイデアは、ペアでプログラミング作業を行うペア・プログラミングから派生した技術です。ペア・プログラミングでは、二人の内一方が主役のプログラマー(運転手)となってコードを記述し、もう一人(助手)がコードの一行一行を逐一確認します。共同作業のためのアイデアです。で、効果はあるのかと聴かれたならば、間違いなく、あります。「生産の現場におけるペア・デザイニングの効果を検証する」などの様々な研究により、ペアで共同作業することが品質と作業時間の両面で有効であることが実証されています。

私たちのプロジェクトの多くで、コンテンツを作り出すプロセスにこの技術を使うことができます。まず、どのページについて作業をするかいくつか選択しておきます。それから、今回キーとなる人たちとプロジェクトのメンバーを集めてワークショップを開きます。そのワークショップで、参加者に二人一組のペアを作ってもらい、前もって準備しておいたページを作成する作業に取り掛かってもらうのです。主役のライターが原稿を書き、もう一方はその問題点を尋ねます。しばらくやってもらった後、より多くの意見を取り入れるためにパートナーを交換してもらいます。

Netlife Researchのライティング・ワークショップ

Netlife Researchのライティング・ワークショップ

そうやって人々が共にコンテンツ作りの作業を行っていると、奇跡が起きます。突然、どれだけたくさんのコピーを書けるかではなく、コンテンツの意味や品質、それに関係した事柄に焦点を当てた、実りのある議論になるのです。従って、これは素晴らしい執筆の成果をもたらすメソッドであると言えます。このメソッドは使えば使うほど良いものになります。月に一度、ペア・ライティングのために集まってもらう機会を作ることから始めると良いでしょう。

これらすべてのメソッドは、人々がコンテンツを書き始める前に、まず考えてもらうようにさせるという点で非常に価値のあるものです。このメソッドを使うことで、Web編集者やライターは、大量のコンテンツを生産し早く公開しろという内部からのプレッシャーに対処することができます。また、徐々に品質の高いコンテンツを作りとこれを管理するための新しい仕組みを確立することができるでしょう。

さらに読んでほしいもの

コンテンツ戦略の専門家や、これらのメソッドについてより詳しく学びたいクリエイターに、そのメソッドや成功に導く運用方法について書かれた以下の記事を読むことをおすすめします。

Designing Inside Out for Better Results

Ida Aalenによって書かれたもので、コアモデルとは何か、とその使い方について説明した素晴らしい記事です。

Write better content by working in pairs

私の書いたもので、ペア・ライティングとは何か、また、それを有益なものにするために段階を踏んでやってもらいたいことをまとめたガイドです。

Pair writing: A revolution in content creation

Gerry MacGovernが共同作業とネットワーク志向のプロセスを、コンテンツ制作に活かす方法について書いています。