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スーパーマリオのステージ1-1から学べるUX

横山 宗幸

上海で働くさすらいのゲームデザイナー/ディレクター。日本語、中国語、英語、名古屋弁のマルチリンガルということになっている。

ファミコンの初代スーパーマリオブラザーズには優れたUXを作りあげるためのヒントがたくさんあります。

今回の記事では、スーパーマリオの1-1に散りばめられた「ユーザーに新しいことを自然に覚えてもらう工夫」を紹介します。

新規コンテンツの「色々覚えるのめんどくさい問題」

新しいコンテンツでは、ユーザーにいかに使い方や遊び方を理解してもらうかが非常に大きな課題です。

クリエイターは「新しくて誰も見たことがないものを作りたい!」と思うものですが、ユーザーにとってみればコンテンツを初めて利用するときの面倒くささがその斬新さに比例して大きくなっていきます。最初の「覚える」段階のUXが悪ければ、その先にどれだけステキな体験が待っていたとしても、そこに到達する前に多くのユーザーは離脱してしまいます。

ゲームコンテンツを例にとると、一番問題になるのは最初のルール説明です。

プレイヤーにとって、新しいルールを覚えることはかなり面倒な行為なので、ゲーム開発者は「いかに自然な形でゲームのルールを覚えてもらうか」というのがいつでも悩みの種です。

最近のスマホゲームなどはチュートリアルがかなり充実してきているものの、ポップアップウインドウなどを使って文章でルールを説明しても、多くのプレイヤーは鬱陶しく思いただ読み飛ばすばかりで、あんまり意味が無い場合が多いです。

マリオにはチュートリアルは存在しない

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ここで突然ですが、皆さんが初めてスーパーマリオを遊んだ日のことを思い出してみてください。

お小遣いを貯めて新品のソフトを買って、意気揚々と家に帰ってきてカセットをフーフーして本体にセットしたあの日のことです。あるいはファミコンがある友達の家で初めてプレイしたときのことでも構いません。

(そもそも遊んだことがない、というヤングボーイor ガールたちはWii Uなどのバーチャルコンソールで買うか、レトロゲームショップに駆け込んでください)

そうしてはたと思い出すのは、そう、チュートリアルが全くありません。一応説明書などもついてきましたが、正直あんまり見なかったですよね。面倒ですし…。にも関わらず、当時の僕たちは遊んですぐにマリオのルールをすんなりと理解して、サクサクと遊べていました。

なぜ、マリオはチュートリアルなしですぐに遊べてしまうのでしょうか。実はこれ、開発者である宮本茂さんが「説明なしに触ってすぐに遊べるゲーム」を目指して、最初の面である1-1を非常に緻密に設計したからなんです。

つまり、マリオの1-1を遊ぶことで、ユーザーは自然にマリオの世界のルールや遊びかたを学ぶことができる構造になっているんですね。それでは実際にどのような工夫がされているのかを見ていきましょう!

マリオに見る「新しいことを自然に覚えてもらう工夫」

教え1:「敵は踏めば倒せるよ!」

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マリオシリーズにおける最大の発明である「敵は踏むと倒せる」という機能、これは当時まだ他のゲームにはなかなか見られなかったものですが、この機能を学ぶのが最初のクリボーです。最初のクリボーは単独で非常にゆっくりと近づいてきます。これはBダッシュを知らない初心者が敵を避けようとジャンプをした場合、たまたま踏みつけられる速度に調整されているためです。

教え2:「はてなブロックを叩いてみよう!」

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アイテムやコインが獲得できる「はてなブロック」は、明るくなったり暗くなったりと明滅させることでプレイヤーの注意が向くようになっています。気になったプレイヤーがジャンプでブロックを叩くとコインが出現し、「ブロックを叩くといいことがある」と学習します。

教え3:「キノコはパワーアップアイテムだよ!」

ご存知の通り、キノコはマリオが大きくなるパワーアップアイテムですが、初回プレイの多くの人は怪しげなキノコを初めて見たとき、敵と判断してキノコを避けてしまうことが多かったそうです。そこで宮本さんはプレイヤーに「キノコを取るとパワーアップできる」ということをいかに体験してもらうかを丁寧に考えました。

kinoko

上の画像はマリオの1-1の最初にキノコが出てくる場所です。はてなブロックを叩いたプレイヤーは、怪しいキノコが飛び出てきたことに少しびっくりしつつも、キノコはそのまま前方に流れていくのでひと安心。しかしそのキノコはなんと土管に跳ね返って自分のところに戻ってきてます。マリオの頭上にはブロックがあるためにジャンプして避けることもできません。こうして初めてのプレイヤーは、強制的にキノコに触れることになります。キノコに触れたマリオは大きくなり、ジャンプ力がアップし、ブロックも壊せるように! こうしてプレイヤーはキノコが良いアイテムであるということを、プレイを通じて自然に学習します。

教え4:「色んなアイテムがあるよ!」

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実は1-1面には、キノコ、ファイヤーフラワー、スター、1UPキノコとこれ以降のゲームに登場する全てのアイテムが登場するんです。2で説明したキノコの効果を体験しているユーザーはすでに「はてなブロックから出てくるものは良いアイテムだ」ということを学習済みなので、これらのアイテムを積極的に取り、その効果を体験できるようになっているんですね。

教え5:「実は土管に入れるよ!」

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お城にたどり着き、1-1をクリアした後にも工夫が隠れています。1-2に行く前にマリオは自動で歩いて土管の中に入っていきます。直接次の面に飛ばずに、わざとこのようなシーンを入れることで、プレイヤーにマリオが土管に入れることをそれとなく知らせます。そしてもう一度1-1をプレイした時、様々な土管に入れるかどうかを試すと、プレイヤーは隠れたコイン置き場を発見することになります。

初心者の気持ちを知る宮本茂式ユーザーテスト

このように初心者にルールを伝えるアイデアが盛りだくさんのマリオの1-1なわけですが、宮本さんはどのようにして初心者の気持ちを理解していたのでしょうか。

実は開発中にゲームの内容を全く知らないチーム外の社員を連れてきて、何も説明せずにコントローラーを渡し、それを後ろから観察するというプロセスを頻繁に繰り返したそうです。一般的に言って開発者は知らずのうちに自身のサービスに慣れすぎてしまうため、往々にして初心者の気持ちを忘れてしまいがちです。

宮本さんは背後からの観察によって、最初に遊ぶプレイヤーがどこで失敗するのか、ゲームのどのルールが理解できないのか、などを徹底的に洗い出し、それらの点をゲーム内で自然に学習できるように工夫しているのです。

まとめ

新規ユーザーにコンテンツの使い方や遊び方を覚えてもらうためには、ユーザーテストなどを実施してどのようなポイントが理解されづらいかを洗い出しましょう。

そしてそのポイントを単に説明しようとするのではなく、「いかに自然に覚えてもらうか」という視点を意識し、伝え方を工夫をすることで、ユーザーに対してよりわかりやすくストレスが少ないUXを提供することができるようになります!


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