マーケティングオートメーション時代のマーケターに求められるスキル

倉澤大樹

株式会社フォトクリエイト ウェブアナリスト。一般社団法人ウェブ解析士協会上級ウェブ解析士。ウェブサイトのKPI設計や施策に対する効果測定、改善を主に行なっています。

テクノロジーの発達により、マーケティングも日々進化しています。より高機能なツールやサービスによって様々なデータが取れ、施策の幅も出てきますが、この状況はマーケターの仕事をどう変えていくのでしょうか?

今回はマーケティングオートメーションを軸に、マーケターに求められるスキルや考え方について見ていきたいと思います。

マーケティングオートメーション(MA)とは?

マーケティングオートメーション(以下、MA)とは、メールやSNS、Webなど企業のマーケティング活動を自動化するための仕組みやプラットフォームのことを言います。

また、アクション(メール配信/プッシュ通知など)を自動化出来ることに加え、顧客のステータス(潜在顧客や見込み顧客など)を見える化し、区別したアクションを取り、効率的に顧客獲得が出来ることもMAの特徴の一つです。

C向け企業でMAが必要とされる背景

一般的にMAはB向け企業の営業活動の場面で語られる事が多いのですが、昨今C向け企業でもMAが導入され、その事例などが共有され始めていることを踏まえ、本記事でもC向け企業でのMAについて見ていきます。

昨今、C向け企業でMAが必要とされている背景として、「顧客と企業の接点が多様化してきたこと」「顧客の情報が入手しやすくなってきたこと」にあると考えます。企業が顧客に情報を発信出来る場、もしくは顧客が企業の情報を入手する場がWeb上だけではなく、FacebookやLINEなどのSNS、ショートメッセージ(SMS)などが登場したことで、より個別に合った方法でコミュニケーションを取る必要が出てきました。

このように年々広がり続けるチャネルで、顧客一人一人とコミュニケーションを取ることは、企業がいくら人的リソースを割いても不可能です。そこで、出来るだけ個々に合った最適だと思われるコミュニケーションをシナリオ化し、機械に反復させることで効率化を図り、そして自動化させることでヒューマンエラーを削減するということが、現在MAが必要とされている理由ではないでしょうか。

C向け企業でMAの導入がはじまり、企業の顧客に対するマーケティング活動が自動化される状況をみて、多くの人がマーケターの仕事がMAに奪われると危惧しました。しかし、MAを導入/設計を行なった現場のマーケターが感じるところとは乖離があります。むしろ、MAを導入することで現場のマーケターは求められる仕事や知識に幅が広がるはずです。

MAの登場によってマーケターに求められること

顧客の状況に合わせた施策の設計

どの顧客に」「どのタイミングで」「どの様な方法で」アプローチするのか、いわゆるシナリオを設計する必要があります。

例えば、ECサイトで商品Aをカートに入れたが購入に至らなかったユーザーが複数いたとします。このユーザーは、購入まで時間を置いて考えたい、他の商品と比較したいなどの理由から購入に至っていないことが考えられますが、比較的購入意欲が高いと判断できます。

このユーザーに対し、カートに商品を入れた3日後にメールを配信します。その結果、何人かのユーザーは購買に至りました。メールを開封したが購買に至っていない人には、クッキーを利用してディスプレイ広告を表示し、追いかけ購買を促進します。

このように「カートに商品を入れたユーザーに」「カート追加後3日後に」「メールやディスプレイ広告で」アプローチし、その後のユーザーの状況(メール開封の有無)に応じて、アプローチの手段を変えるというカゴ落ちシナリオは、昨今EC事業者で行われ始めている代表的なシナリオ例です。

ここでどういうシナリオを設計するかで、MAを導入したことの成否が問われると言っても過言ではありません。

シナリオを設計する上で大事なのは、どの顧客がボリュームゾーンで、育成、または獲得できる余地があるのかを見極めることです。

例えば、ECサイトで新規顧客は比較的獲得できているのに、それを知らずに新規訪問客に対して購買を促すアプローチをしても、費用対効果はどうしても薄くなってしまいます。

つまり、マーケターは自社の課題をアクセスログや購買ログから把握し、自社のサービスや顧客にあったシナリオを設計を行う必要があります。

データベースへの知識

シナリオを設計し、実装段階に移行する上でマーケターが気をつけないといけないことは、そのシナリオの実現可能性です。

シナリオを実現するためには、必要なデータが社内で蓄積/整備されているかを知る必要があるので、データベース(以下、DB)およびDBのテーブルに関する知識が求められます。そもそも、シナリオを開始するための鍵となるデータが、社内のDBで蓄積されていないというのはよくあることです。

昨今のMAツールは従来のソフトウェア型とは異なり、クラウド型が主流です。クラウド型でDBを変更する場合、自社のDBからMA内にデータを送り、新しくテーブルを設定する必要があります。つまり、マーケターはシナリオを考えることに加えて自社のDBの構造についての知識を必要とされます。

また、行なったシナリオに対して評価を行うためにも、DBからデータを引き出し、新しく仮説を立てシナリオを再考し、そして実装していくというスキルも今後のマーケターに必要とされるでしょう。

まとめ

MAを導入したことでアクション(メール配信やプッシュを通知など)自体を自動化できたとしても、マーケターは決して(シナリオを)考えるだけの仕事に変わるのではなく、データを引き出し、新しく仮説を立てるなど、より自分で手を動かすことも必要になってきます。

具体的には、SQLを用いたデータ抽出、データ・マイニングツール(R/SaS/SPSSなど)を用いたデータのハンドリング、データ分析手法への理解(統計学)、そして分析結果から仮説や課題を発見するスキルなどが求められると言えます。

つまりMA登場によって、今後マーケターはデータでより顧客とリレーションシップを図る、データベースマーケターの役割を担うことになるのです。


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