B2BとB2Cのデザインにおいて気をつけるべきポイント

Jenna Erickson

Jenna Erickson氏は、Codal社のクリエイティブ分野の戦略家です。Codal社はシカゴに拠点を置き、モバイルサイト設計に関するトータル・ソリューションを提供しています。

この記事はUsabilityGeekからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Designing For B2B Vs. B2C Websites

ECサイトをデザインする際は、購買者がどんな人であるかを考えることが大事です。あなたのECサイトは企業と消費者どちら向けのものでしょうか?

B2B(企業 to 企業)とB2C(企業 to 消費者)のどちらのウェブサイトも、わかりやすく簡潔であることが求められます。美しい見た目のデザインも必要です。また、製品やサービスの詳細情報が提供されていなければなりません。

しかし、消費者のニーズと企業のニーズは異なる傾向があります。詳細情報の量やUX、デザインに関するニーズは、B2BとB2Cでは一致しません。

私が働いているCodalは、B2BとB2Cの両方のデザインと開発を請け負っている会社で、日常的にこれらに関する議題や質問に直面します。

そこで今回は、消費者と企業のそれぞれに対してデザインする際に考慮すべき重要な要素について、私たちの経験をもとに、述べていきたいと思います。

購入のプロセス

B2Cにおける購入プロセス

B2Cの購入プロセスは、B2Bに比べると単純です。多くの場合、「なんとなく興味がある」段階から「購入」へと変化するのに要する時間はとても短いです。また消費者は、使いやすくスムーズな購入のプロセスを好みます。

ユーザーは何かを購入する時にユーザー登録を求められることを嫌います。ユーザーは購入のための情報を入力して、クリックするだけで購入できる方を好みます。消費者にはどのサイトで購入するかという選択肢が多くあるので、ウェブサイトとプロダクトは競争の中で目立つ必要があります。

B2Bにおける購入プロセス

これに対して、B2Bの購入プロセスはより複雑であることが一般的です。購入には複数の段階があり、フォームの入力、企業情報などの交換、提案に対する評価、承認などを経て、購入が行われます。ほとんどの企業は、特定の購入手続きやガイドラインを設けており、これに従って購入しなければなりません。サービスを利用する企業は、そのウェブサイトを持つ企業に対して、できるだけ多くの情報を提供する必要があります。

B2Cとは異なり、最後の購入するのボタンがクリックされる前のどこかの時点で、企業情報の提供が常に求められることを覚えておくべきです。

心理的な要素

B2Cにおける感情

B2Cにおける購入は、感情的な要素と結びついて行われます。
多くの場合、消費者は感情が引き金となって購入をします。つまり、製品やサービスを見て抱く感情により、消費者は購入をしようと決定します。

例えば、Apple社のiPhoneは、サムスン社のGalaxyと同じような特徴を持っている製品です。しかし、Appleというブランド力が消費者に与える感情により、消費者はiPhoneをよりおしゃれだと感じるのです。

ブランド力は感情を左右する大きな要素であり、特にB2Bに比べるとB2Cの領域では大きな役割を担います。

B2Bにおける感情

B2Bの購入にも感情的な要素が関わりますが、B2Cとは異なります。チーム全体や、時には会社単位で影響をおよぼす行為なので決断をするのにより慎重になります。リスク回避と恐れが、B2Bの購入に関わる2つの典型的な感情です。

1つの嫌な経験が悪い評価につながり、チームへも悪影響をおよぼします。さらに、他のクライアントの決定にも影響をおよぼす可能性があります。

価格帯のモデル

B2Cにおける価格表示

B2Cの価格は、どのサイトにおいても直接的で分かりやすく目立つ形で表示されます。
ディスカウントのコードを持っている場合を除き、価格は消費者の間で差異はありません。唯一隠れているコストは送料であり、通常はウェブサイト内のどこかに掲載されています。また、アップセリング(up-selling)やクロスセリング(cross-selling)も、B2Cのウェブサイトにおいて注意すべきです。

編注:アップセリング・クロスセリング
アップセリングとは購入を検討している商品より価格の高い製品を提案・販売すること、クロスセリングとは購入した製品と関連する製品を提案・販売することです。

B2Bにおける価格表示

B2Bの価格はB2Cほど明瞭ではなく、顧客のニーズに応じて値段が変わります。B2Bのウェブサイトには、通常では製品やサービスに関わる価格は表示されません。また、一般的にB2Bのウェブサイトでは、企業の種類に応じてさまざまなオプションや明確なプランを提供しており、幅広い企業規模や業種のニーズに合わせれられるようにしています。

B2B向けのサービスと製品では、価格は企業のニーズに応じて設定されるため、料金を前払いとすることがあります。価格の設定だけでなく、開発やメンテナンス、設置などの費用が掛かることがあり、これらはウェブサイト上には記載されていないことがあります。これは企業内での予算承認の都合から、ユーザーにとってストレスとなることがあります。

ウェブサイト上である程度の価格表示をすることで、顧客の満足度を向上させたり、あまり高い金額を使わないユーザーに対応する時間を節約したりすることが可能なこともあります。

購入の決断

B2Cにおける購入の決断

B2Cの場合、ウェブサイトは1人の人間(購入者/購入決断者)とだけ、やり取りをするものになります。購入を決める人は、自分の決定を他の人に対して説明したり、許可を得る必要がありません。

消費者が購入を決めるのは、多くの場合において衝動的なものであり、あらかじめ計画を立てておいて行われるものではないでしょう。

B2Bにおける購入の決断

B2Bのウェブサイトにおいては、ユーザーの背後には複数のチームメンバーが存在することがほとんどです。さまざまな関係者が一連の購入手続きに関わるケースもあり、購入決定までには長く複雑な道のりを要します。B2Bの顧客は、購入する数カ月前から、リサーチを始めるかも知れません。

一般的に、B2Bのサービスや製品は、B2Cの価格より高く設定されています。B2B向けの製品はより高額なため、意思決定者は製品やサービスが自分たちのシステムやワークフローに適しているかを確認する必要があるでしょう。

デザインに対して、どのように影響するのか?

B2Cサイトのデザイン

B2Cのサイトをデザインするにあたり、コンテンツ戦略は基準以上のものであるべきです。サイトにはキャッチーでインパクトのある見出しが必要で、消費者にアピールできるものでなくてはなりません。消費者が探しているのは膨大な量の情報ではないので、たくさんのコンテンツをサイトに載せることは好まれません。最小限のコンテンツと、大きくインパクトのある画像を使うことで成果をあげることができます。

他のウェブサイトでも同じ製品を購入できることが多いので、デザインはユニークで、競合よりも目立つものでなくてはなりません。ユーサビリティとユーザー体験は常に改善され、支払いプロセスも最大限スムーズにするべきです。

また、ユーザーが「購入する」をクリックして実際に支払いを行うプロセスは最重要であり、最小限のステップで構成されなければなりません。さらに、製品やサービスに関する情報は、分かりやすい言葉で明記されてなければなりません。そうでないと、消費者が購入のプロセスを煩わしいと感じます。

大多数の消費者が、数回ウェブサイトに訪れるだけで購入を行うということを覚えておきましょう。ファースト・インプレッションはとにかく大切です。

B2Cのウェブサイトの良い例として、American Apparelを紹介します。

画像提供:American Apparel

Image source: American Apparel

デザインには大きな画像を使いキャッチーでインパクトある見出しを載せて、ユーザーがコンバーションするようにしています。もう一つの優れたB2Cの例としては、ASOSが挙げられます。大きな画像と印象に残る見出しを使っており、B2Cの領域で何を行おうとしているのか、目的がしっかりと伝わるサイトです。

画像提供:ASOS

Image source: ASOS

B2Bサイトのデザイン

B2Bサイトに訪れるユーザーは、できるだけ多くの情報を求めています。コンバーションを実現するには、ウェブサイトに対する絶対的な信頼をユーザーから得なければなりません。もしウェブサイトが有用な情報を提供できておらず、信頼性に乏しく思えるようなら、コンバーション率を上げることはできないでしょう。

B2Bのウェブサイトに対しては、ユニークなデザインの重要性は下がります。デザインは、コンテンツや情報により焦点を当てるものであるべきです。ウェブサイトではユーザーに対して常に情報が提供されるようにしましょう。

デザインにはさまざまタイプのCTAがあることが望ましいです。CTAには、ライブチャットや電話番号、テキストメッセージ、Eメールアドレスなどが含まれます。これらのCTAででは、個別のやりとりができるべきです。

B2Bサイトにおけるコンテンツ戦略では、さまざまなタイプのコンテンツを用意するべきです。これには、より詳しい情報や、ビデオによる説明、体験談、ポッドキャスト、ブログ、FAQ、オンラインセミナー、商品のデモ動画などが挙げられます。さまざまな情報を提供することで、ユーザーがより理解を深める手助けをすることができるでしょう。

B2Bでは初めての訪問の段階で、購入が行われることはまずありません。リードを獲得するには時間をかける必要があり、デザインもこのことを考慮して行うことが大切です。

製品やサービスが企業にとって相応しいと確信できるように、コンテンツには競合他社との比較や総合的な情報を含めるようにしましょう。Neilsen Norman Group社によると、これはとても重要であり、技術仕様やAPI仕様、インテグレーションの詳細などが含まれていると良いでしょう。

最後に、どんなに価格が複雑であるように思えても、モデルとなるある程度の価格帯が提供されていなければなりません。大まかな予算を計算する機能が提供されているだけでも、顧客にとってはとても便利です。

B2Bのサイトとして、優秀な例を探しているのならば、ZenDeckのサイトをチェックしてみてください。

画像提供:ZenDeck

Image credit: ZenDeck

ZenDeckは実に情報がよくまとまっており、さまざまなタイプのCTAが使われています。また、ウェブ上のセミナーや、ブログ、商品デモ、サイトツアー、開発者インフォメーションなどの、さまざまなコンテンツが提供されていることが特徴です。さらに、価格帯のモデルを確認することもできます。

結論

B2BとB2Cサイトには、それぞれ異なるニーズを持つ閲覧者がいます。

B2Bのウェブサイトをデザインする際には、できるだけ多くの情報を載せて、複雑で長期にわたる購入のサイクルをサポートすることが要求されます。一方で、B2Cのウェブサイトには、ビジュアルデザインやUX、ユーサビリティという点が重点的に考慮されるべきです。

以上のことは、全てのウェブサイトにとって重要なことでありますが、B2Cのウェブサイトに対しては、特にその重要性が強調されています。最後に、どのようなケースであれ、価格を出来るだけ分かりやすく伝えるようにしましょう。


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