親和図法(しんわずほう、Affinity Diagram)とは、情報やアイディアを視覚的に見える形で整理する手法です。
親和図法では共通点をもとに情報をグルーピング(親和)することでパターンを明確に、製品をデザインする上での情報の階層を把握することを可能にします(バスケット解析と同様のものです)。
親和図法とは?
この手法は、開発者の川喜田二郎氏にちなんで、KJ法としても知られています。川喜田氏は、1960年代に7つの品質管理法を考案し、親和分析はこの1つとして開発されました。文化人類学の研究者だった川喜田氏は、ユーザー分析における行動の発生と継続的利用に関する功績を残しています。
親和図法は、図の下部にアイディアや情報、観察結果の個々のアイテムを配置するところから始まり、上部にグループや関係性を集約していく帰納的な手法です。
その主な利点は、関係がないように見える情報をまとめ隠れたな関連性やパターンを発見し、潜在的なテーマを高度な技術を要さず迅速に明らかにすることです。
親和図の作り方
親和図を作成するにあたり、私たちのチームで最近用いたやり方を紹介したいと思います。
1. アイディアを出し合う:それぞれが手元のポストイットやインデックス・カードに記入し、壁や模造紙に貼ります。(または、デジタルなツールでも、同様なものがあれば、それでも良いです)。
2. 似たような項目をグループにまとめる:同じような項目を、一カ所にまとめて置きます。カードを使った整理法と同様のもので、まとめていく中で、グループの階層構造や関係性も、作っておくようにします。
3. グループの名前を付ける:異なる色のポストイットを使い、個々のグループやグループを更にまとめた大グループに名前を付けていきます。グループごとの関係性を示す矢印を、その関係性に応じて(1つの項目と1つの項目、1つと複数、複数と複数など)使用することも可能です。今回の私たちのやり方では矢印は使いませんでした。
4. 親和図の応用:グループを作成したり十分な評価を行ったりするほど項目の量が多くない場合は、チームのメンバー各々で項目のグループ化や整理を行い、相似性マトリックスを作成して関係性の整合具合を数値化します。
親和図法が活用できる状況
関連性がない情報が数多くあるような時は、親和図法が役に立つケースです。具体的には、以下のような状況が想定されます。
行動観察を行っている時:コンテクスト調査法によるインタビューで、対象者の観察を行った後に、彼らの言動について書き並べていきます。
ミーティングなどで、アイディアや意見を出し合った後:チームメンバーや顧客などから製品や仕事の進め方、新しいアイディアなどについて出されたアイディアを、既に述べたような手順で整理します。
調査結果の言語データ分析において:自由記述形式の質問に対する似たような回答をグループごとにまとめてテーマの理解に活用します。
ユーサビリティに関する問題点を整理する時:ユーサビリティに関する問題点は、共通の原因から発生していることがよくあり、ユーザーから寄せられる問題も大抵はみんな同じようなものです。親和図法を用いて根本的な原因を突き止めましょう。問題となっているテーマや、考えられるデザインの解決策を明確にします。
ユーザー・インターフェイスを設計する時:Beyer氏とHolzblatt氏の二人は、Contextual Designの著書の中で、より優れたシステムを構築するための主要な方法として親和図法を奨励しています。
親和図法を使うにあたり考慮すべきこと
親和図法を実際に用いる前に、以下のことについて覚えておきましょう。
ポストイットを使うのがベストです
次のような理由から、親和図法にはポストイットが使われる傾向があります。
- 貼れるだけでなく、剥がすのも簡単だからです。
- 必要に応じて、情報を書き加えることができます。
- 大体のオフィスの中にあるもので、カラーバリエーションに富んでいます。また価格もたくさん買いやすい金額です。
時間を管理しましょう
親和図法を活用した作業は、出されるメモの数に応じて数分で終わるものから数日間を要するものまでさまざまです。私たちが今回行ったケースでは、2時間かかりました。
チームで行うか個人で行うか決めましょう
ソートセッション中には、話をしない方が良いという議論もあります。アイディアを出し合う作業と結果を総計する作業を別々に行い、グループによる判断により結果集計を行う方が、より良い成果を出すこともあります。しかしこのやり方においては、チーム全体がやり方を厳守し行う必要があります。発言をしっかり声に出すことで、意見の重複を防ぎ詳細な部分もしっかりと認識できるようにします。
他の手法と関連付けて応用することを想定しましょう
Rapid Solving with Post-it Notesの著書の中で、アイディアのまとめ方や、ポストイットの使い方が、詳しく解説されています。例えば、FOG分析が紹介されていますが、これは以下の3つの英単語の頭文字、F、O、Gを取って、名付けられた手法です。
Fact(事実):実証に用いる情報です。
Opinion(意見):よくFactと間違えられますが、自分のアイディアを可視化できる形に出して、後に検証するものです。
Guess(推測):実証的されたアイディアではありませんが、新しいデザインや機能を考えだす際に活用されます(後に検証されます)。
親和図法を作成することは、関連性がなさそうに見えるアイディアを整理するためのファースト・ステップです。
主にポストイットを使った簡単な手段ですが、デジタルのツールを用いて行いたい場合はハイテクな手法にもなります(その場合、遠隔地のメンバーも作業に含めることが可能でしょう)。グループで行われる作業ですので、各々のアイディアを声に出して寄せ合えるという利点もあります。