ユーザーテストのファシリテーションにおける10のルール

Jeff Sauro

Six-Sigmaの統計アナリストで、デンバー大学の非常勤講師。ユーザー体験を定量化する先駆者。UXに関する本を5冊出版しているほか、論文審査を経た研究論文は20以上。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

10 GOLDEN RULES OF FACILITATION

ファシリテーションは、ユーザー体験を測定・評価するための有益な方法です。優れたファシリテーターは、セッション(ユーザーテスト、フォーカスグループなど)をスムーズに進行し、参加者をリラックスさせ、どんな状況でも有益なデータを得ることができます。

Joe Dumas氏とBeth Loring氏は、ユーザビリティに関するファシリテーションに興味がある人にとっての必読書である素晴らしいガイドブックを執筆しました。

ほぼ10年前の本ですが、それでもファシリテーションの10の黄金律などは、気づきを与えてくれるものです。今回、私はMeasuringUで年間数百のファシリテーションを行った経験をもとに、このルールに少し修正を加えました。

優れたファシリテーションは、スクリプトやルールに従うだけのものではありません。ステークホルダーと参加者のニーズのバランスをとりながら、意味のあるデータを得るために、いつ、どのようにルールを適用するべきか、また、どのような場合にスクリプトからそれるべきかを知るということが、優れたファシリテーションに必要とされます。

1. 目的によってスタイルを変える

すべての調査が、同じように作られているわけではありません。ファシリテーションのスタイルは、調査の目的や開発の進捗状況によって変える必要があります。

数値を重視する構造化された調査から、あまり構造化されていない事前調査的なものまで、ファシリテーターはさまざまなセッションを進行します。

ファシリテーターはどの程度、セッションに関わるべきか検討するべきでしょう。それこそ、ベビーシッターのように積極的にサポートすることもあれば、セラピストのように振るまうこともあります。

2. 参加者の権利を尊重する

参加者に対する倫理的な対応については、社会科学において長く、そして時に暗い歴史があります。倫理的に問題があるとされたスタンフォード監獄実験から、私たちは長い道のりを歩んできました。ファシリテーターとして、我々は参加者の権利を考慮する必要があります。

編注:スタンフォード監獄実験とは、刑務所を舞台に一般人を看守と受刑者のグループに分けて行われた実験。実験途中で中止され、倫理的に問題がある議論となった。

参加者は、不快に感じた場合やめることができ、質問したり思ったことを話したりできるということを知っていなければなりません(インフォームド・コンセント=説明を受けた上での同意)。

ほとんどの調査は、簡単で苦痛を強いるものではありません。しかし、参加者が何かを購入したり、自身のアカウントにログインしたり、個人情報を使用したりする必要がある場合は、状況は複雑となるかもしれません。不快と感じる状況を最小限に抑えるため、調査の中で必要とされることは、参加者が事前に理解しているようにしましょう。

3. 参加者に多少のストレスをかけても良い

参加者がタスクに苦戦しているからといって、すぐに介入するべきではありません。これは、新米のファシリテーターにとっては、慣れることが難しい課題の1つでしょう。

Dumas氏とLoring氏は、これを「未来のユーザーへの手助け」と呼んでいます。ユーザビリティテストにおいて参加者を苦戦させることは、ユーザビリティの修正につながる可能性があります。これによって、ほかの多くのユーザーを同様の問題から救うことになるでしょう。ただし、参加者に対し、Stanley Milgram氏のようにするという意味ではありません。

編注:Stanley Milgram氏は、倫理的に問題があるとされるミルグラム実験を行った心理学者。

参加者の権利を尊重しなければなりません。しかし、少し悪戦苦闘するくらいであれば、インタラクションにおける問題を見つけ、修正するための洞察となります。

4. 責任者としての自覚をもって対応する

参加者は、ファシリテーターのことを責任者として見ています。これはつまり、計画を管理し、質問に答え、混乱に対処し、そしてセッションを時間通りに行う必要があるということです。また、これには、たまにいる非協力的な参加者や、注意散漫な参加者への対処や、参加者をタスクに集中させることも含まれます。

これまでに、セッションの途中で友だちにメッセージを送ったり、電話に出たりして、明らかに集中していない参加者がいました。また、大幅に遅刻してきたり、不適切なコメントをしたりする参加者もいました。このような場合、ファシリテーターは方向転換を行い、参加者に集中を促さなければなりません。そして、あまりないですが、セッションを早く終わらせる必要があることもあります。

5. プロフェッショナルであり続ける

友好的であることは構いませんが、参加者と友だちになる必要はありません。質問と調査では、プロフェッショナルのように振る舞ってください。参加者は間違えることもありますし、混乱することもあるでしょう。落胆させるような言葉を言ったり、ため息をつかないようにしましょう。そしてもちろん、参加者をけなしたり、嘲笑しないでください。参加者が協力的でない場合は、丁寧にセッションを終了しましょう(補償を行い、再び招待しないようにしましょう)。

ファシリテーションは難しい仕事です。その日に終わらせる必要があるタスクが、ほかにも大量にあることもあるでしょう。ですが、調査に関係のないタスクを行うことで、参加者の気をそらせないようにしてください(たとえば、電話に出たりパソコン操作を行うなど)。クライアントに至急連絡をする必要がある場合など、避けられないこともありますが、なるべく短くすませプロフェッショナルであり続けましょう。

6. 参加者に話をさせる

新米ファシリテーターには、気まずい沈黙を破って参加者に話しかけたくなる誘惑があるかもしれません(特に参加者が苦戦している場合)。

ファシリテーターが話をするのは問題ありません。しかし、話し過ぎてしまうと、参加者の考えを理解し、インタラクションの課題を明らかにすることを妨げてしまう可能性があります。ファシリテーターの歌があるとしたら、それは「私は黙るから、あなたが私に話して。」となるでしょう。

7. 直感は害にも助けにもなり得る

生活においても同様ですが、ファシリテーションにおける直感は、害にも助けにもなりえます。

新米のファシリテーターは、「沈黙を破る」ために直感的に話したり、手助けをしたり、また参加者に手掛かりを提供したりするかもしれません(これはすべて直感的な反応です)。

一方、経験豊富なファシリテーターは、参加者が手助けを必要としている場合、いつスクリプトからそれるべきかわかっています。

8. 中立を保ち、バイアスを最小限に抑える

バイアス(偏見)は、どんな調査にも存在します。質問の方法だけでなく、ファシリテーターが質問に答える方法にもバイアスが入る可能性があります。

たとえば、参加者はファシリテーターの振る舞いを手掛かりに、自分のやっていることが正しいかどうか確認しようとします。

バイアスは排除できませんが、特定し、最小限に抑えることはできます。参加者を落胆させてはいけませんが、褒めることは最小限にして中立を保つ必要があります。ファシリテーターは、ポジティブ(タスクの成功)およびネガティブ(タスクの失敗とユーザビリティの問題)な行動両方に対して、中立的な反応を示すべきです。

9. 誤って情報を明らかにしない

参加者を困惑させたり、不必要にイライラさせたりしてはいけません。しかし、インターフェイスを使う上で、鍵となる機能やステップを明らかにしてもいけません。

参加者をサポートをしたりヒントを与えて、情報を明らかにしすぎることもあります。また、参加者が行動したあとの、ファシリテーターの発言や、ファシリテーターが行動するタイミングといった些細な情報もあります。

1年前、私がメモをとり始めたので、何か間違えたことを知った、と私に語った参加者がいました。

10. 自分の振る舞いを監視し、管理する

早口で話す、情報を誤って明らかにする、もしくは参加者に対しタスクを完了するための十分な時間を与えないなど、悪い習慣はすぐに形成されます。

可能であれば、同僚にファシリテートの振る舞いを監視してもらい、改善のための提案をしてもらいましょう。もしくは、苦痛に感じるかもしれませんが、自身のセッションを録画して見るという改善方法もあります。

Moderating Usability Testsは、手始めとして読む(または再読する)のに良いでしょう。


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