UXでもビジュアルデザインは大事?

Marli Mesibov

Marliは教育とゲームが大好きなコンテンツ・ストラテジストです。彼女の仕事はゲームデザインからWebアプリケーション、モバイルにまで及びます。MarliはTwitterでもUXデザイン、文学、マペットについて発信しています。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

How Visual Design Makes for Great UX (2015-11-17)

エモーショナル・デザイン―微笑を誘うモノたちのために』において、著者のDon Norman氏は、「システムの見た目は、美しさとユーザビリティ両方のユーザー認識に影響があったのに対して、ユーザビリティはこれらに全く影響がなかった」と語りました。つまり、ビジュアルデザインは、実際のユーザビリティと同じくらい全体のエクスペリエンスに影響するということです。

ビジュアルデザインがユーザビリティと同じくらい、またはそれ以上に大事かもしれないという考えは、何だかしっくりこないでしょう。人間は、見た目の美しい物や人に惹かれてしまうもので、大人も子供も、外見が魅力的だと感じる人をより信用する傾向があるという研究結果があるほどです。アプリやサイトにおいても同じで、人は見た目が良いアプリケーションを好意的に受け止める傾向があります。

この記事では、なぜ人は見た目の良いインターフェースを好むのか、それは私達が人間としてどういう存在だということなのか、私達はUX実践者としてより良いUXを作り出すためにこの知識をどう有効利用できるのかということについて見ていきます。

美しさとは何か?

UXにおける美について考える前に、まず考えなければならない問題があります。モノが客観的に見て魅力的だというのはどういう意味なのでしょうか。これは何世代も問われ続けている疑問です。哲学者達は、ピタゴラスの時代から既に美とは何かを問い続けており、ピタゴラスの弟子達は美とは「調和がとれた状態で、黄金比のように数学的関係を有する」と考えていました。数学哲学者達はそれ以来、美を計測しようと試みてきました。 

一方で、ヴォルテールは美とは定義できないものであると唱えました。「美は見る人の目の中にある(美は主観的なものに過ぎない)」という名言が生み出されたことにも通じるでしょう。イギリスの経験論者達はこの考え方を継承し、美しさを感じることは快さを感じることと同じであり、美を感じる人の内省的認識だととらえてきました。

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科学者の中には、見た目に美しいものは健康に良いと考える人もいます。それ故に、病気は魅力を半減させるし、体に良いとされる果実のようなものは美しく見えると彼らは言います。この理論には重大な欠陥がある(例えば美しい毒蛙はどうでしょう)ものの、考慮に値すると言えるかもしれません。

また、美しさは社会的かつ文化的な背景が影響すると考える人もいます。例えば、アメリカではほとんどの子供がディズニーを見て育ち、魔女や悪者は醜く、ヒーローやヒロインは美しいという見方を無意識に覚えますが、実際にはもっと根が深いものです。ファッションやひげの形の流行、体形まで様々なものが美と見なされ、私達は日々身の回りのメディアに強く影響されていますが、その同じトレンドが十年も経てばそれは恥ずかしいもの、惨めなものに変わってしまいます。文化的な姿勢が変われば、その文化が美しいとするものも変わるのです。

UXデザインに置き換えてみましょう。インタラクションやサイト要素には、ユーザビリティと関連させているから魅力的だと感じているものがあるかもしれません。同じように、今は魅力的に見えるWebのトレンドやビジュアルコンテンツが、数ヵ月後、数年後も人を惹きつけるとは限りません。例えば、かつてはComic Sansは誰もが好んで使っていたフォントでしたし、フラッシュを使ったスプラッシュページがデザインの良いサイトのシンボルとなっていた時代もありましたが今はそうではないでしょう。

UXにおけるビジュアルデザイン

見た目が「完璧に美しい」ものは存在しないということが理解できれば、UXにおけるビジュアルデザインの役割について掘り下げて考えることができます。ビジュアルデザインはただ美しく見せるだけのものではないということです。

米連邦政府運営のUsability.govは、ビジュアルデザインの定義を、デザイン又はインタラクションを強化してユーザーを引き込むために「戦略的に画像、色、フォント、その他の要素を実装すること」としていますが、ビジュアルデザインはインタラクションデザインとは異なります。インタラクションデザインはタスク完了のために必要な機能性に焦点を当てますが、ビジュアルデザインは、適切な機能性に目を向けさせたり、サイズや色、余白の使用などを通してページ上のタスクを優先させたり、視覚的合図を使ってブランドの信用を高めたりして、ユーザーを引き込むものです。

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ビジュアルデザインはグラフィックデザインとUXデザインを一緒にしたものだという考え方もあります。どちらも常に進化している分野であるという注意は必要ですが、グラフィックデザインは一般的に静止画像や映像のデザインと言っても差し支えないでしょう。UXデザインはインタラクションデザインとUIデザインを組み込んだもので、コミュニケーションにフォーカスしています。ビジュアルデザインは、ちょうどその中間に位置し、コミュニケーションやユーザビリティを高める目的で静止画像や映像を組み込んでいくものです。

ビジュアルデザインは、ユーザーがスクリーンを見るように大きな効果を発揮することがあります。ユーザーがスクリーンに視覚的な魅力だけでなく、より良い機能性や使いやすさ、そして人間らしさまで求めるようになってきていることも考えられます。

相互関係

GoogleのプロダクトディレクターであるLuke Wroblewski氏はビジュアルデザインとユーザーアクションの相互関係を長年調査してきており、2008年の発表『ビジュアル・ヒエラルキー(視覚的階層)とのコミュニケーション』でUXにおけるビジュアルデザインの役割について説明しました。ビジュアル・ヒエラルキー、つまりスクリーンのどこに各アイテムを置き、どうやって関心を向けさせるかということは、以下の点に役立つと言っています。

・メッセージのやりとりをする

・アクションを明らかにする

・情報をまとめる

彼はデザイナー達に、どこにどうやって情報を表示させるかということをよく考えるよう促し、たくさんのヒントやアドバイスをしてくれています。魅力的なビジュアル・ヒエラルキーとは使いやすいものなのです。

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しかしこの著書から7年経った今(元記事公開年:2015年)でも、UXの仕事でビジュアルデザインの重要性について言われることはあまりありません。

StackExchangeでは、この議論が続いています。ユーザーの一人が「UIの見た目がエクスペリエンスに影響することを指摘するためだけに本当にリサーチが必要なの?  結局のところ、人は表紙で本を判断するものだよ」と言うと、他のユーザーが「ビジュアルデザインが大事なら、マイクロソフトのひどい製品がなんであんなに成功するのか誰か説明して。もう20年もOutlookを使ってるけど、同じインターフェースが二度使われたなんてことはないみたいだけど(もちろん僕は馬鹿じゃないし)。それなのに、市場シェアはずっと高いままだよね!」と反論しています。

これはどういうことでしょう。美しさは主観的なものだから、マイクロソフトの製品が美しく見えるユーザーもいるということでしょうか。それとも、ビジュアルデザインは、結局はあった方が良いというだけのもので、Wroblewski氏が言っていたような必要不可欠なものではないということでしょうか。

StackExchangeのユーザーの一人はうまくバランスをとっているようで「ビジュアルデザインは、UX全体のうちの一つか二つの側面に過ぎない。ユーザーの目標達成という文脈では必ずしも一番重要な部分ではないが、必然的にユーザーの認識に結びついている」と言っています。もちろん、加えて彼は「良い/悪いビジュアルデザインは本当にUXに影響するのか?」と聞いています。ここで皆さんは「はい、影響します」と答えるでしょうが、それではどのように影響するのでしょうか。それこそが重要な難問です。

論理的に考えると、身なりを整えた人が面接で好意的に見られるのと同じように、視覚的に魅力あるサイトの方がメリットがあると言えます。訪れたサイトがあまり魅力的に見えないものでも、良いエクスペリエンスさえあれば、ユーザーは満足していってくれるでしょう。しかし、もしあまり魅力的でないサイトで何かちょっとした問題が起こってしまうと、ユーザーはすぐに去ってしまいます。サイトが(流行にとらわれないシンプルなデザインであれ、今のトレンドなデザインであれ)魅力的であれば、ユーザーはなんとなく信用し、もう一度チャンスをくれようとします。

UXデザイナーにとっての意味

UXデザイナーにとっては、ここから主に二つのことが学べます。一つ目は、エクスペリエンスの失敗をビジュアルデザインだけに頼って挽回しようとしないことです。どんなに魅力的なビジュアルでも、ユーザーにとってだめな、またはひどい作りの特徴や機能を改善してくれるわけではありません。二つ目に、ビジュアルデザインを無視してはいけないということです! 競合と比べられたときに、アプリケーションの使いやすさがほとんど同じであれば、ビジュアルデザインがユーザーの選択の決め手になることだってあり得るのです。

UXPinのJerry Cao氏はCreative BloqFast Companyの両方で記事を書いていますが、どちらもビジュアルデザインのルールのリストを提供しています。UXデザイナーにとって最初の一歩として確認しておきたいことを以下に挙げておきます。

・一貫性を持つこと。一貫性がないと、どんな美しいデザインも醜い寄せ集めになってしまいます。感情が視覚を乗っ取ってしまうのはこういう所です。一貫性がなく混乱してしまうような見た目だと、ユーザーにはそのサイトが美しく見えなくなります。

・ビジュアルのコンセプトは紙にも描いてテストすること。Cao氏もCreative Bloqで言っていますが、「オンラインの時、どんなにそれが正確な言い回しであろうと、人は『サイトとインタラクション』しているのではなく『サイトを見て』いる」ものです。私達はビジュアルに強く反応しますし、優れたブランディングは私達がどれだけそのブランドを信用してインタラクションに応じるかに影響してきます。

・トレンドに惑わされないこと。過去100年もの間リトルブラックドレスがファッションの世界でずっと愛され続けているのには理由があります。シンプルさ。清楚さ。上品さ。同じように、シンプルで清楚で上品なビジュアルデザインが、トレンドでは約束されないようなやり方で時代を超えて好まれるものとして現れるでしょう。例えばフラットデザインのいくつかの特徴はこれからも維持されるでしょうが、全体として見れば、数年で多くのアプリが「2015年っぽさ」を醸し出してしまうようになるはずです。


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