MVP(Minimum Viable Product)とは?実践するメリットと検証方法

Interaction Design Foundation

Interaction Design Foundationはグローバルにデザインレベルの向上を目指す、デンマーク発の非営利団体です。

この記事はInteraction Design Foundationからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Minimum Viable Product (MVP) and Design - Balancing Risk to Gain Reward

MVP(実用最小限の製品: minimum viable product)という考え方が広まったのは少し前のことです。MVPはFrank Robinson氏によって定義され、起業家であり学者のSteve Blank氏と、リーンスタートアップ(Lean Startup)を提唱したEric Ries氏という2人のプロダクトデザインの権威によって有名になりました。

MVPとは?

簡単に定義すると、MVPとは、製品を提供する上で必要最小限の機能のみをもつ、もっともシンプルな製品です。しかし一般的には、「顧客価値があり、利益を生み出せる最小限のもの」と考えられています。

MVP戦略においては、価値基準を理解することが決定的に重要です。たとえば、車輪は車輪だけではユーザーにとって価値がありませんが、スケートボードになれば価値を持ちます。車輪は、移動手段となって初めてユーザーが価値を感じるのです。

また一般的には、チームとしてどの顧客層をターゲットにするか定義することも重要です。ターゲットには、製品のアーリーアダプターになってくれる可能性がある、こだわりが特に強い人がなることが多いです。アーリーアダプターは、精度の高い技術が製品に実装されるのを待つのではなく、製品の欠点を大目に見て購買してくれます。こういった顧客層は、MVPに対するフィードバックを集め、さらなる製品開発に向けた戦略方針を決めるのに役立ちます。

MVPを使うことで、販売したい新製品の開発に打ち込むまでの流れを簡潔に表現できます。市場に参入したあと、より魅力的な製品を目指して急速に開発を繰り返すのか、もしくは製品が使えない、必要性がないと市場に判断されて開発を中止するのかを判断するのに、MVPは役立つのです。

Eric Ries氏は「MVPを構築しようと考えているときには、調査したいことに直接結びつかない機能やプロセス、労力を取り除く、という原則に従いましょう。」と述べました。

言い変えれば、MVP戦略は、使用できる製品を提供することだけを追求します。エモーショナルデザインは、将来製品開発を反復するときに考えます。

MVPプロ​​セスを使用するメリットとは?

MVPプロ​​セスを活用することには、いくつか重要なメリットが存在します。デザインだけでなく、企業や投資家にも利点があります。

  • 完全な製品を開発するために膨大なリソースを割かなくても、製品が必要かどうか調査できます。
  • 製品の提供を素早く繰り返すことで、チームが顧客の実際のニーズとウォンツを学習するのを早めることができます。
  • 公開時は最小限の機能に集中することで、開発チームが費やす無駄な時間を最小限に抑えることができます。
  • 初めからすべての機能をもつ完全な製品を開発するよりも早く市場に製品を投入できるので、理論的には、販売収益も早く獲得できるでしょう。
  • 自分たちが注目している市場に競合企業も参入しようとしていても、競争的優位を得ることができます。

MVPのメリットを活かすには、「もっともシンプルな製品を開発して、初期段階で製品を構築する必要があったのかどうかテストする」という原則に従いましょう。テストの目的は、開発を進めるべきか、やめるべきかを判断することです。

MVPのデザインは、繰り返し検討できます。つまり、最初の試行ですべてがうまくいく必要はありません。

MVP - テストアプローチ

Webサイトとアプリケーション

製品の需要をテストするもっとも簡単な方法の1つは、製品のWebサイトを作成し、アクセス状況を調査することです。Webサイトは完璧に機能しなくても、何が利用できるかを説明し、詳細な情報を提供するために顧客にクリックをうながすモックアップで十分です。クリック数を訪問者数と比較して、製品への関心度を判断することができます。

サービス

サービスを販売する際に、もっとも簡単にテストする方法は、サービスを提供する製品を構築することではなく、誰かにサービスを試してもらい、そのサービスに対していくら支払えるか計ってみることです。この方法であれば、払える額が正確にわかるまで繰り返しテストすることができます。

新機能

既存の製品に新しい機能を加える前に、既存のWebサイトにその機能の広告を載せて、より多くの情報を提供するリンクを設置するべきかもしれません。リンク先では、新機能が現在開発中であることを説明します。リンクの訪問者数を調査することで、開発を始める前に、新機能のニーズを適切に理解することができます。

「早期のリリース、頻繁なリリース」との違いは?

MVP戦略は、オープンソース戦略で使われる「早期のリリース、頻繁なリリース」と比較されることがあります。どちらの戦略も、クライアントからのフィードバックを把握して開発を反復する点は同じです。しかし、MVP戦略は消費者と対峙し、取った戦略が正しいか検証するという明確な目的があります。

一方でオープンソース戦略は、消費者自身が次の戦略を決めるなど、消費者に大きく依存する点でMVP戦略とは異なります。両方とも製品を開発するための優れた手法ですが、MVP戦略は、すべての機能を実装する製品に向けて、より素早く簡潔にアプローチできます。

MVPがありふれた製品になるとは限りません。上のグラフからわかるように、顧客に小さな利点を提供するだけでなく、高品質の製品を提供することにも価値があります。

まとめ

MVP戦略は、起業したばかりの会社にとって理想的なデザインの手法です。しかし、投資や資本のリスクが高いと考えられるデザインの場合は、大きな企業でもしばしば採用されます。MVP戦略では、できるだけ短期間でシンプルな製品を市場に投入して、製品の実現可能性を検証し、次に反復するときにはどの機能を追加するべきか判断するために、デザインします。つまり、価値のあるフィードバックを継続的に集めることで、開発を反復するたびに改善された製品を提供する、顧客中心のデザインなのです。

参考文献

リーンスタートアップとErik Reis氏の著書についてもっと知りたい方はこちら:

http://www.actionablebooks.com/en-ca/summaries/the-lean-startup/

MVP戦略を正しく実施できているか確認するにはこちら:

http://www.panozzaj.com/blog/2012/01/11/signs-you-arent-really-building-a-minimum-viable-product/


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