「デザインの決定にユーザーを巻き込む」と聞くと、フォーカスグループによってインターフェイスをデザインすることを思い浮かべる人もいるでしょう。
Steve Jobs氏の名言に、ユーザーは自分が何を欲しているかを知らないというものがあります。またHenry Ford氏は、「私が人々に何が欲しいか聞いたとしたら、彼らはより速く走る馬だと答えたでしょう。」という名言を残しました。
Jobs氏とFord氏の発言は的を射ていました。イノベーションに関して、エンドユーザーに頼ることは不可能です。
良いインターフェイスには、デザインのスキルと人間の行動についてのインサイトが求められます。
しかしデザインの決定は、ユーザーの行動を直接反映していなければなりません。ユーザーの意見をまとめたり、優れた推測をしたりするだけでは不十分です。ユーザーからのフィードバックをデザインの決定に組み込むことで、データを活用してより良いデザインの決定をすることができます。
この記事では、デザイナーがデータやテストを用いてより良いデザインの決定を行うための5つの事例を紹介します。
1. アイコン
ビジネスアナリストからCEOまで、私たちはみな、デザイナーに何が「直感的」で何が「ひどい」かを伝えたがります。これは特にアイコンのデザインに関して顕著なようです。理想的には、コンパクトな画像をアイコンに用いて、ユーザーが迅速かつ直感的にその機能にアクセスできるようにします。しかし現実には、抽象的なソフトウェアの機能を表現するには不十分なアイコンが多いです。
デザインの疑問:対象となる機能に対して、どのようなアイコンがもっとも適するでしょうか?
テスト方法:アイコンが適しているかテストするために、関連付けと想起、自由回答のテストを組み合わせて行いましょう。
- 関連付け:選定された参加者にアイコンを見せて、ランダムに4つの選択肢を与えます。そのうち1つはこちらが意図している選択肢で、残りは無関係なものです。このとき正しく選択された数を数えて、アイコンの正確度を測定します。そして意図する関連付けをできたと思われるユーザーの割合を判定しましょう。
- 想起:参加者にアイコンを短い間見せ、それらのアイコンについて覚えている単語や機能を書いてもらいます。結果をワードクラウドにまとめて、キーワードが何度出てきたか数えましょう。
- 自由回答:参加者にアイコンを見せて、連想する単語やフレーズを書き並べてもらいましょう。
2. リモコンのレイアウト
リモコンは、テレビやステレオから、ビデオレコーダー、Apple TVまで、あらゆるUIの入り口です。ボタンの数や配置と利用できる機能は、良い意味でも悪い意味でも体験において主要な役割を担います。
デザインの疑問:リモコンのボタン数を減らすことには、どのような効果があるでしょうか?
テスト方法:リモコンのボタンの数や種類を変えることの効果を検証するために、2つの忠実度が低いリモコンを作成します。1つが既存のもので、もう1つが計画案です。そして参加者に2つのリモコンで同じタスクを行ってもらいます。新しいデバイスで共通するすべての機能を使用したときに、既存のものと比べてどれくらい時間がかかったか、どれくらい認識が難しかったかを記録します。
私たちは最近同じような調査を行いました。USBケーブルで繋いだケーブルテレビのインターフェイスを操作するリモコンについて、2種類のプロトタイプを3Dプリントで作成しました。テスト前、私たちはボタンを減らすことで実際にどんな効果があるのかはわかりませんでした。調査の結果、デザインにおいていくつかの改善点が見つけられましたが、既存のタイプのほうが使いやすいと確認されました。
3. ボタンの配置
理想的なボタンの配置やデザインについての意見はさまざまです。これらの意見は、検索や送信、OK、キャンセルなどのボタンの並びや位置、色などについてです。私たちの結論では、「正しい」構造は状況に応じて異なります。
デザインの疑問:どのようなボタンの配置であれば、エラーが少なくより効果的にフォームを送信できるでしょうか?
テスト方法:使用される状況を模倣して作られたフォームにおける、ボタンのレイアウトをいくつか制作しましょう。参加者がアクションを完了するのにかかった時間を測って、参加者が起こしたエラーの回数をカウントします。時間やエラーの確率に違いが表れない場合、ボタンごとのパフォーマンスの違いが少ないか、ユーザーにとって差異を認識できない程度であるということです。
4. 店頭受取 vs 配達
Amazonに対抗するために、現在では多くの販売店がネットで購買した客に店頭受取のオプションを提案しています。商品を入手するスピードとコストを判断する際に、顧客はもう1つ代替案を考慮することができるのです。スピードとコストの代替案をどう表示するかは、売上の達成やカゴ落ち率に大きな影響を与えます。顧客が選択肢を理解しやすく、それぞれの長所と短所を判断しやすいことが重要です。これを実行するのは言うほど簡単なことではありません。
デザインの疑問:店頭受取と配達を比べるとき、どのような送料の説明が、顧客にとってわかりやすいでしょうか?
テスト方法:会計画面のモックアップデザインから、参加者に配達のオプションを選択してもらいます。参加者に対して、たとえば以下のようにシナリオをいくつか提示します。
- 可能な限り早く受け取りたい
- もっとも安い送料で購入したい
- 早く受け取りたいが、店頭受取はしたくない
その後、どのデザイン案がもっとも正しい判断に結び付いているかを決定します。また使いづらさの認識やタスク時間という2次的な尺度も踏まえます。
5. 色と名称
共通する機能のラベルや色の設定によって、ナビゲーションがわかりやすくなることも、わかりにくくなることもあります。普遍的なラベルやカラースキームはほとんど上手く機能しないでしょう。一方で、アプリケーションのコンテキストやユーザーのバックグラウンドから、共通するパターンが明らかになることがあります。
デザインの疑問:スポーツや映画などのカテゴリーに対してユーザーが認識するのはどんな色でしょうか? それらのカテゴリーに対してどのようなラベルを付けましょうか?
テスト方法:ある色に対して、どのカテゴリーともっとも関連があると思うか参加者に選択させます。名称については、ある機能やアイテムのグループに対してどの用語を使用すると思うかを選択してもらいます。続いてカテゴリーの名称を決めるときは、選定した参加者に一連の候補の中から選んでもらいます。このテストはアンケートの一部としてや、オープンカードソートの形式で行うことができます。