プロトタイプがビジネスに利益をもたらす理由

Paul Boag

PaulUXのデザイナーでありデジタルトランスフォーメーションの専門家です。彼はユーザーを促進するためのウェブやソーシャルメディア、モバイルの活用を、非営利やビジネスの分野で手助けしています。

この記事はboagworldからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

What are the business benefits of building prototypes? (2017-05-16)

私たちUXデザイナーは、プロトタイプをよく使います。しかし、UXデザイナーにとって、クライアントや経営陣にプロトタイプが時間や経費に見合うものだと説得することはストレスです。この記事では、プロトタイプのビジネスにおける利益について説明していきます。

プロトタイプは私たちが自由に使うことのできるもっとも強力なツールの内の1つです。しかし、多くの人がプロトタイプはお金がかかるデザインツールだと思っています。そのため、プロトタイプは適切なツールだと思われません。

締め切りまでの期間が短く、予算が限られている場合プロトタイプは最初にカットされるものの1つであることが多いです。代わりに、企業は生産工程を短縮しようと、完成を急いだり長ったらしい仕様書を当てにしたりします。その結果、生産工程の短縮に失敗してしまうのです。

プロトタイプは、高価で導入する余裕がないと思うかもしれません。しかし実際のところ、プロトタイプを導入する余裕はあるのです。

この記事では、プロトタイプがなぜ膨大な量のビジネス課題に対処するために不可欠なツールであるかを明らかにしていきます。

ではまず初めに、達成したいことについて説得力のあるビジョンを作ることができるという、プロトタイプの能力から説明していきましょう。

プロトタイプで説得力のあるビジョンを作る

アイデアの多くが失敗に終わってしまうのは、欠点があるからではなく、そのアイデアがよくわからなかったからです。新しい製品やサービス、機能がどのようなものかをイメージするのは難しいでしょう。従来の仕様書やビジネスプランは、このような理由で失敗します。潜在的に人々をワクワクさせることができない上に、新製品がどのようなものかを見せていないのです。

より良いユーザー体験の提供のために、Disneyのスタッフはテーマパークの改修に10億ドルを投資するよう経営陣を説得しました。そして、プロトタイピングを行ったのです。いかに合理的であるかを示すことのみで説得力がある書類作成を行う代わりに、プロトタイプを作ることで、経営陣はより良い体験がどのようなものであるかを実感することができました。

Disneyがパークの改修に10億ドルを投資する前、最初に行ったのがプロトタイプの製作でした。

多くの企業で品質とサービスの差別化が行われているため、新しい製品やサービスに対してどのように感じるかが、きわめて重要です。そして、プロトタイプを使用すると自分自身で体験することが可能です。そのため、どのような可能性があるかをステークホルダーに伝えることもできます。

プロトタイプは、ビジョンを共有することで一体感を生み出す素晴らしい方法です。しかし、プロトタイプにはまだ利益があります。

Digital Transformation: The six questions you need to answerもご覧ください。

プロトタイプは誤解を減らす

企画書や仕様書のような書類に対してプロトタイピングが持つもう1つの利点は、誤解の可能性を低くすることです。製作するものに関する書類の場合、最終的な解決策を人々に想像させなくてはなりません。そのため、読み手はある程度解釈が必要になります。

プロトタイプはどんなものが構築されるかを明確にして、誤解を防ぎます。

しかし、プロトタイプは何を製作するかをステークホルダーに見せるものです。つまり、誰もが最終目標に対して共通のイメージを抱けます。これにより、人々の解釈の差を埋める作業を大きく軽減することができるのです。

多くのステークホルダーにとって、最終的な製品やサービスを想像することは難しいです。また、プロトタイプを作成しないと、誤解を生むだけでなくスコープクリープ(プロジェクトが進行するにつれてスコープが肥大化すること)にもつながります。

プロトタイプはスコープクリープを抑制する

スコープクリープの大半は、解釈の違いによって生まれます。そのため、プロトタイプによりイメージが明確になると、スコープクリープを減らすことができます。しかし、プロトタイプは別の理由によって生じるスコープクリープも減らすことができます。

プロトタイプがなぜスコープクリープを減らすことができるかを理解するためには、まずなぜスコープクリープが発生するかを知る必要があります。主な原因の1つに、ステークホルダーは具体的なサービスを通して考察を行わなければならないということがあります。そして、それを見始めるまで、不足しているものや変更すべき点を発見することができません。

プロトタイプは動く仕様書のようなものです。全員が共通の目標に向かって作業をすることができます。

初期段階で製品を視覚的に表現することで、ステークホルダーも間違いや不足しているものを早い段階で見つけることができます。また、修正も簡単に行えます。

しかし、解決策を用いて欠点を見つけることができるのはステークホルダーだけではありません。ユーザーも見つけることができます。

プロトタイプはテストの実施に最適である

プロトタイプを作成する重要な理由の1つとして、テストが行えるものを作らなければならないという点があります。ユーザーの目の前に、実際に製品を用意することでユーザーの操作が可能になります。ユーザーによるテストは、早期に課題を特定することができるため、修正のコストも抑えることができます。しかし、プロトタイプを使ったテストはただ課題を特定するだけではありません。

プロジェクトの早い段階では、ユーザーが求めるものについて多くの仮説が存在します。マーケット調査を行う企業もあります。しかし、多くの場合ユーザーもステークホルダーと同様に、あなたが作成しているもののイメージを抱くのに苦労します。

Invisionのようなツールを使うと、プロトタイプの作成と実際のユーザーを用いたテストが簡単に行えます。

プロトタイプを作成することで、製作しようと思っているサービスをユーザーが試すことができるでしょう。ユーザーは価値のあるフィードバックを行ってくれるため、費用の削減につながるでしょう。

たとえば、作成しようと考えているある特定の機能が、実はユーザーにとって必要ないものだったとわかるかもしれません。ほかにも、ユーザーが不可欠であると考えているものが不足していたり、あとから追加しようとすると高額な費用がかかることがわかるかもしれません。

プロトタイプを使用したテストによって、仮説を実証して作成しようとしているものが正しいという確信を得ることが可能になります。

プロトタイプは実験と反復をうながす

従来のアナログな製品のプロジェクトでは、前もって計画することがきわめて重要でした。一度進行し始めたプロジェクトの方向性を途中で変更することは、費用の発生につながってしまうからです。

しかしデジタルの分野では、ピクセル変更にかかる費用は少ないです。実験を行い、完璧な方法が見つかるまでさまざまなアプローチを試すことができます。プロトタイプを用いる場合、コストはさらに安くなります。

プロトタイプは解決策が正しいとわかるまで、コストをかけずに何度も繰り返して試すことができます。

反復作業を通して修正する前に、時間をかけずにアイデアを作成してテストを行うことができます。プロトタイプにより収集された、これまでに見たことがないレベルのデータを組み合わせることで、実用最小限の製品(MVP)、またはそれ以上のものに向けて、時間をかけずに反復作業を行うことができます。

プロトタイプはコストを抑える

ここまで挙げてきたプロトタイプに関するすべての利点は、1つの説得力のある論拠に至ります。それは、プロトタイプはビジネスにおける費用を節約するということです。プロトタイプを作成しない最大の言い訳の1つがコスト面であることを考慮すると、皮肉に聞こえるでしょう。しかし事実として、プロトタイプを行う余裕がない、ということはありえないのです。以下のような方法で費用が節約されます。

  • 方向性をまとめるためのミーティングをする時間が節約される
  • ステークホルダー間での解釈の違いによる変更を防げる
  • スコープクリープを制限し新しい機能を組み込むための費用を生み出す
  • 必要ない機能が作成されるのを防ぐ

プロトタイプを作成しないことでかかるコストは、金銭だけではありません。時間の面でも余計なコストがかかるのです。プロジェクトが停止すると、締め切りに間に合わず機会損失につながります。つまり、何を作成するかをしっかり明確にしておかないと、企業は時間を無駄にするのです。

この無駄な時間は、最終的には企業の資金や市場のシェアの損失にもつながります。プロトタイプに反対する意見として時間がないことが挙げられていることも、やはり皮肉なことです。もう一度言いますが、プロトタイプを行う時間がないことはありえないのです。

一刻も早くプロジェクトを開始しようとしたり、長ったらしい仕様書を当てにしたりするのはもうやめましょう。その代わりに、プロトタイプを使い始めてください。長期的に費用や時間が節約できることを保証します。


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