私たちは仕事をするために、クライアントとステークホルダーを納得させる必要があります。彼らがいないと、私たちは必要なことをするための承認を得ることができません。しかし、私たちのほとんどは説得するのが驚くほど下手です。よって問題は、私たちがどのように説得に失敗するのか、それについてどのように対処するべきかです。
私は、6月末のオンラインワークショップの準備にあたり、クライアントやステークホルダーとどのように協力して仕事するのかについて、多くのことを考えました。これは、同僚やクライアントから同意を得る方法について4つのパートから説明するものです。
私がこのようなワークショップを開くのは、ほとんどすべての作業において、やる価値があると他人を納得させる必要があるからです。デザインの承認のような比較的単純なことから、大規模なデジタル変更プロジェクトを実行することの承認のような複雑なことまで、さまざまなものがあるでしょう。
しかし、説得力がある仕事やアイデアの伝え方を教えてくれる人は誰もいません。その結果、大事故につながってしまいます。
以下では、私が見つけたもっとも大きな8つの間違いと、それらに対して何ができるのかを説明します。
相手を驚かせる
パーティーや予期せぬプレゼントを除いて、人は驚かされることを好みません。それが仕事となれば尚更でしょう。しかし私たちは、何が起こるのかを事前に示すことなしに、前触れなく自分の仕事の結果を提示してしまいがちです。
デザイナーは特にこれが苦手です。私たちデザイナーは、依頼を受けるとすぐにデザインに取り掛かり、作業が完了してからクライアントに提示します。期待していなかったデザインを提示され、ステークホルダーが否定的に反応するのも驚くことではありません。
しかし、同僚やクライアントと距離を置いて作業するのではなく、協力することで、私たちはこの問題を回避することができます。作業のプロセスに彼らも含めることで、彼らはあがってくる成果物に対してしっかり心の準備を整えることができます。 そして協力することは、第二の間違いを避けるのにも役立ちます。
相手を排除する
同僚やクライアントと仕事をするのは骨が折れるかもしれません。彼らは頻繁に私たちが好まないような提案をしてきます。そのため、彼らの意見を聞くことで、プロジェクトが進まないように感じられるかもしれません。結果的に、私たちは影響を最小限に抑えるために、彼らを排除しようとします。しかし、これはもっとも悪い手段の1つです。
排除されていると感じた人々は、必ず怒って不満を募らせます。そして、私たちが主導権を取るのを阻止しようとするでしょう。最終的に、彼らが最初からプロジェクトに関わった場合よりも、はるかに大きな影響をプロジェクトに与えます。
繰り返しますが、解決策は、最初から彼らをプロジェクトに含めることです。デザインやプロジェクト計画のような何かを生み出す仕事に彼らを加えることで、当事者意識を持たせることができます。人は当事者意識を持つことで、それを邪魔しようとはしなくなり、ほかの人から守ろうとします。
しかし、実際には彼らをプロジェクトの最初から参加させることは難しく、かと言って彼らのアイデアを無視することも難しいものです。
相手のアイデアを拒否する
私は「バリケード」という評判を持つ、多くのデジタルの専門家に出会ったことがあります。同僚は、そのデザイナーやエンジニアがいつも自分のアイデアを却下すると感じているということです。
他人のアイデアが自分たちの視点からは意味がない場合、却下するのは当たり前だと思うかもしれません。しかし、悪い評判がつくことは危険です。このような評判は人々に不快感を与えるので、あなたが何かを達成したいときに、彼らが邪魔をしてくる可能性が高くなります。
積極的な態度を維持しましょう。拒否するのではなく、クライアントや同僚が自分でアイデアの欠点を見つけるのに役立つ質問をしてください。私たちは、ステークホルダーに彼らの提案の影響を穏やかに伝える必要があります。
つまり、私たちは彼らの視点をもっと理解する必要があるということです。
相手の意図を無視する
皮肉なことに私たちは、ユーザーの気持ちを理解することには大きな労力を割く一方で、同僚やクライアントを理解することにはほとんど力を入れません。彼らが気にしていることを無視してしまうと、私たちは彼らに自分たちの考えを支持してもらうための、貴重なツールを失います。
同僚やクライアントが何を気にしているのかを理解すれば、その文脈を踏まえてプロジェクトを進めることができます。たとえば、デザインの承認を得るためにクライアントが必要であるとしましょう。もしクライアントが見込み客を増やすことに執着していると知っていたら、デザインがその達成にどう役立つか話すことができます。しかし、私たちがクライアントの意図を理解するために時間を割かなかったら、それをすることは決してできません。
デジタルの優れた点は、ほとんどのビジネスの問題に通じるということです。つまり、同僚の意図が何であれ、私たちのデジタルプロジェクトにおいて、それをサポートできることがよくあります。結局のところ、私たちのプロジェクトが彼らの掲げている現在目標をどのようにサポートできるのか示すほうが、相手を説得してプロジェクトに注目してもらうよりもはるかに簡単なのです。そのほうが、彼らをわくわくさせられるからです。
相手に実物を見せずに伝える
誰かに何かを納得させる最善の方法の1つは、夢中にさせることです。人は合理的な決断をしているように装っていますが、感情で動いていることがよくあります。
残念ながら、私たちは人々の感情に訴えることが得意ではありません。そのため、彼らがわくわくするような具体的なものを見せる代わりに、長い仕様書を書いたり、詳しい説明をしたりしています。
問題は、どのように見えるかを想像するのは難しいということです。彼らがわくわくするためには、まず実物を見る必要があります。そのため、プロトタイプとモックアップがとても価値を持つのです。これらによって、何ができるのかを描写し、人々を魅了することができます。
そして、プロトタイプとモックアップに対して、私たちはフィードバックを提供できます。
相手の自由なフィードバックを求める
正直なところ、人々がフィードバックをしだすと、上手くいかなくなることが多いです。大抵、個人的な意見で論点を見失い、関係のない話題で腹を立てることになります。
この原因は、私たちがどんなフィードバックを必要としているのかがはっきりしていないからです。「あなたはどう思いますか?」というような漠然とした質問をしても、当然それに対して同僚やクライアントは個人的な意見で答えるでしょう。
代わりに、彼らがフィードバックをしやすいフレームワークを提供する必要があります。たとえば「これはビジネス目標に沿ったものか」、「これはユーザーのニーズを満たすと思うか」といった具体的な質問が必要です。
しかし、フィードバックに同意できない場合は、どのように対応するかを慎重に検討する必要があります。
相手に反論する
私が見た中で、他人を説得しようとしている人にもっとも共通する間違いの1つは、いつの間にか議論になっていることです。これは会議にほかの出席者がいる場合は特に問題となります。
この種の対立は、議論のトピックから離れ、エゴとエゴのぶつかり合いになります。これは、話している相手が話者よりも権限があると考えている場合、特に顕著です。説得力のある主張をしても、自分たちの権限に盾突いているととらえられてしまうので、相手はそれを拒否します。
そのような状況では、相手の意見を受け止めて、考える時間が必要だと言うほうが賢明です。一度その場を離れて主張を整理して、皆に落ち着かせる時間を与えてから、ほかの人の前で撤回される心配をする必要がないときに、相手に個別に話しましょう。
自分の発言がほかの人にはどのように感じられるのか考えることは常に重要です。たとえば、相手を困惑させてしまうことはよく起きることです。
相手を困らせる
残念ながら、私たちは同僚やクライアントに、仕事のやり方を変えたり、より多くの仕事を依頼したりするような、不快なことを要求しなければいけません。プロジェクトが大きくなればなるほど、これらの要求は途方もなく重く感じられます。そうなると、多くの人々は見て見ぬふりをして、問題が存在しないかのように振る舞います。
たとえば、多くの経営陣は、インターネットの混乱によって引き起こされる脅威を無視します。なぜなら対処しきれないからです。彼らは何をすべきかわからないため、決して起こらないことだと思いたくなるのです。
そこで、同僚やクライアントに大きな決断を下したり、重要な変更を一度に行うように求めることを避けることで、私たちはこの問題を軽減することができます。代わりに、変更や決定をいくつかに分けて、より小さく、より管理しやすい形にして時間をかけて提示しましょう。
たとえば、経営陣にWebサイト全体をデザインし直すための予算の承認を依頼する代わりに、ユーザーリサーチやプロトタイプを作成するための予算を提案します。先にすべてに同意してもらうのではなく、まずは次のステップに集中しましょう。
説得には大きな効果がある
私たちが同僚やクライアントをどのように説得するか考えることには、私たちの仕事を変えるほどの影響があります。私は説得がいつもスムーズに進むようになると言っているのではありません。しかし、他人の気持ちを理解しようとする時間をとることで、承認を得るのがはるかに簡単になります。
この記事により、説得することについて考える上で少しでも違いが生まれることを祈っています。しかしこれはほんの始まりにすぎません。説得する際には、もっとできることがあります。