人によって食べ物の好みが異なるように意見も異なります。そのため、重要な意思決定を行う際には、ユーザーの考えを考慮する必要があるのです。
たとえば、連絡先情報を「About us」セクションに置くべきか、フッターに置くべきか、そのほかの場所に置くべきかといった議論をするとします。チームメンバーの意見はそれぞれ何らかの部分で正しいかもしれませんが、本当に重要な意見はユーザーの意見だけです。
それでは、どのようにユーザーのアイデアを実際の情報設計(IA)に組み込めば良いのでしょうか?
私はカードソートをおすすめします。シンプルで実践と分析がしやすく、有効なUXデザインプロセスです。
カードソートとは
カードソートは、トピックが似ているかどうかによってコンテンツをグループに仕分けるユーザースタディです。既に情報設計とナビゲーションがある場合は、グループラベルを事前に定義しておくクローズドカードソートでも良いでしょう。
しかし、カテゴリの名前について確信が持てない場合などは、参加者にグループのラベル付けを委ねるオープンカードソートのほうが有効です。オープンにすることで、ユーザーが同じトピックについてどのように「話す」のかを理解することができます。
ここでは、カードソート調査を実行するためのプロセスを段階的に説明します。
オープンかクローズドか選択する
プロジェクトの目標に応じて、オープンカードソート調査なのか、クローズドカードソート調査なのかを選択しましょう。クローズドカードソートの結果は楽に分析できる一方で、オープンカードソートではより深くユーザーのインサイトを理解できます。
考慮すべきもう1つの点は、カードソート調査の媒体です。Webやリモートなのか、従来の紙を主体とした調査なのか選択しましょう。リモートのカードソート調査に必要なツールを提供するオンラインサービスはたくさんあります。リモートのユーザビリティテストと同じく、この種のリサーチ方法には長所と短所があります。
リモートの調査は、カードを作成し、多数のユーザーにテストを送信し、収集されたデータを機械が分析して最終的にカテゴリーをツリー化して提供してくれるため、従来の方法よりとても簡単です。一方、対面による、現実世界でのカードソートセッションでは、調査者は、議論や態度、アイデア、質問などについてメモを取ることができ、生データに感情的なニュアンスを付与することができます。
カードを準備する
カードソート調査の次のステップは、IA全体をテストするのか、一部をテストするかを決定することです。たとえば、ECサイトをデザインしている場合は、会社関連のページの構造はそのままにして、製品カテゴリのアーキテクチャのみをテストするべきでしょう。ユーザーにサイトのすべてのページを仕分けてもらいたい気持ちもわかりますが、多くのタスクを与えすぎて参加者を困らせないよう気を付けてください。
よって、ソートしたいページが複数ある場合は、ページごとにカードを作成し、参加者ごとにカードセットを作成しましょう。スタッフ全員にオフラインで付箋を使って作業させるのも良いですが、カードにバーコードをつけて印刷して、バーコードスキャナでデータをデジタル化することで、データ入力を楽に行うこともできます。
参加者の募集と選別
オンラインのカードソートツールを使用する場合は、参加者募集サービスを利用しましょう。テストするのに理想的なターゲットユーザーを見つける、専門的な調査への参加者募集サービスがたくさんあります。しかし、これにはお金がかかるので、予算が足りない場合は、メーリングリスト、ソーシャルメディア、LinkedIn、個人的な連絡先など、自由な手段を使ってメッセージを広めることもできます。
ユーザーを無料で集めることは難しいかもしれません。その場合は、製品やサービスの割引クーポンや無料トライアルなどでインセンティブを与えると良いでしょう。調査に参加できる人々のリストを取得したら、彼らをスクリーニングしてターゲットとして最適な参加者を見つけ出し、スケジュールを設定して管理する必要があります。これで、カードソートセッションの準備が整いました。
カードソートセッションを実行する
まず、セッションの会場を設定します。テーブルやボードなどの、参加者がカードで作業するのに十分なスペースがあることを確認してください。PCを使ったカードソートを実行する場合は、参加者1人ひとりにノートPCまたはデスクトップPCを提供する必要があります。参加者が全員集まったら、平易な言葉でテストの方法を説明しましょう。
参加者には、快適で気分良く過ごしてもらうことが重要です。試されているのは参加者自身ではなく、情報アーキテクチャであるときちんと伝えなければなりません。参加者の考えやアイデアを知るために、声に出して話してもらうことが望ましいですが、決して彼らの作業を中断させないようにしましょう。
結果を分析する
すべての参加者がタスクを完了すると、実際のカードソートの結果とセッションを観察した結果という、豊富なデータを入手することができます。私はプロセス全体、特に最終的なカードのグループの結果と、それらの参加者の仕分け方を写真に撮ることをおすすめします。これらは今後の参考になるでしょう。
デジタルによるカードソートの場合、データ入力段階をスキップして、カードソートのデータ分析の樹形図を即座に得ることができます。従来の紙を使った方法を好むのであれば、データ入力は不可避です。
先ほど述べたように、バーコード付きのプリントカードを使用するとバーコードスキャナーで楽にデータを入力でき、速く作業が進みます。データ入力が完了したら、無料でも有料でもカードソートサービスを使用してデータを分析するか、UXMattersの記事を参考に自分で分析しましょう。分析結果は、すべてのカードとグループのマトリックスを載せたExcelベースのテーブルに落とし込みます。それぞれのカードは、セッションでもっとも出現したグループに分類されます。
カードソート結果の理解と提示
カードソート調査のもう1つの課題は、最終的な結果を理解し、デザインチームやプロダクトオーナーなどのステークホルダーにそれらを提示することです。結果は通常、樹形図の形で表示されますが、より理解しやすいように結果を視覚化するのも良いでしょう。単純な階層構造でも十分です。
カードソートの優れた点は、ユーザーがWebサイトやデジタル製品をどのように探索するのかについてのインサイトを獲得できる点です。ただ、より深い調査のためには、ペルソナに一致する参加者を募集する必要があります。これは必ずしも簡単ではありません。
しかし、価値のあるデータは簡単には揃わないものです。まずは、あなたのIAにカードソートを試して、自分で判断してください。