ユーザー調査における5つのファシリテーションスタイル

Jeff Sauro

Measuring Uの創設者。シックスシグマに熟練した統計学分析者であり、ユーザーエクスペリエンスを定量化したパイオニアでもあります。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

THE FACILITATION SPECTRUM: FROM BABYSITTER TO THERAPIST

ファシリテーションは、参加者からデータを収集するのに役立つスキルです。

またユーザビリティテストや深層インタビュー、フォーカスグループといった手法において、広く利用されているスキルでもあります。

優秀なファシリテーターはセッションを円滑に進め、参加者に安心感を与えます。そして、協調的でない参加者がいるなどの難しい状況でも適切なデータを抽出することができます。

すべての調査が同じような状況であるとは限りません。そのため、優れたファシリテーターは、調査のタイプと目的に基づいて、自分のファシリテーションスタイルを調整する必要があります。

MeasuringUでは、毎年さまざまなお客様と数百回ものセッションを行っています。これによって、どのような調査目的があり、どのようなファシリテーションが必要とされているかを知ることができています。セッションは、指標を重視して体系化されたものから、体系化されていない探索的なものまでさまざまです。

それぞれのタイプの調査に必要なファシリテーションスタイルを、さまざまな角度から考えることができます。あるスタイルは、ベビーシッタータイプやセラピストタイプと言えるでしょう。つまり、あなたの調査がどのような種類かによって、話す量や厳密さ、補助の度合いは変わってきます。また、参加者の行動と発言の背後にある理由の探り方も変わるでしょう。

ファシリテーターの役割と期待を明確にすることで、調査目的に沿ったデータを得ることができ、さらに調査の進行をスムーズにします。もちろん、ファシリテーターは十分な教育を受けた専門家です。そのような優秀なファシリテーターは、調査目的に基づいて参加者への補助を減らすタイミングや、状況に合わせた最適なファシリテーションスタイルを知っています。

この記事では、代表的なファシリテーションスタイルをいくつか紹介します。

ベビーシッター

台本がありパフォーマンスが重視される調査の場合、一般的にファシリテーターは調査がスムーズに実行されることを確かめるために存在します。調査目的は、原因を明らかにすることより、行動を観察して記録することにあります。しかし実際のベビーシッターのように、体系化された調査において何らかの間違いや予期せぬことが起こった場合、ファシリテーターは状況を解決する必要があります。

私たちが以前行った大規模なベンチマーク調査では、ファシリテーターは参加者が台本に従ってタスクを完了するのを見守っていました。ファシリテーターは問題が発生したときにのみ介入し、指標も自動的に記録されました。参加者は、考えを声に出してもよかったのですが、声を出そうとはしませんでした。ファシリテーターからの厳密な調査や中断はなく、ただ短めの説明や報告のセッションがあり、タスクが長引く場合にはセッションを終了するだけでした。

ニュースアナウンサー

このタイプは、ベビーシッターよりも調査への介入が必要とされることもあります。しかし依然として、ファシリテーターからの計画的介入は必要ありません。たとえば、台本の多い調査では、ファシリテーターが指示を出し、詳しく質問をし、返答を記録します。そのようなセッションでは、参加者の返答のバラツキは少なく、台本から逸脱することもありません。それは、テレビのカンペを見てニュースを読むようなものです。しかし状況が悪くなった場合には、ファシリテーターはベビーシッターと同様にセッション中の質問や行動に対応できるようにする必要があります。

私たちは、モデレートされた調査でデータ収集をしているときや、何周目かのユーザビリティテストにおいて、すでに問題が繰り返し確認されていて、問題の特定ではなく改善されたパフォーマンスを検証しようとしているときなどにこのアナウンサーのファシリテーション形式をとります。

事件記者

質問や仮説とそれに対する注意書きが台本にある場合、ファシリテーターは事件記者のように働きます。このタイプは、質問に答えたり参加者の振る舞いについて深掘りをするために台本から逸脱することもあります。事件記者という役割は、アナウンサーやベビーシッターよりも、より多くの判断と状況認識が求められます。この役割では、ファシリテーターは製品とユーザーのタイプについて事前に勉強し、調査の質問に答えるためにはどのような質問をするか知っている必要があります。

これは、問題を明らかにするための形式的なユーザビリティテストにおけるファシリテータの一般的な役割であり、コンテキストの問い合わせを実施するときと同様です。

教師

台本ではなくガイドや説明があるような場合、レッスンプランに従う教師のようになります。ファシリテーターは、分野の知識やユーザーの目立った特徴、および質問事項を理解する必要があります。ファシリテーターは、質問をするためや参加者の行動に対応するために、台本から逸脱することができます。

これは、深層インタビューや初期段階のユーザビリティテストなど、どんな問題に直面するかわからない場合に取られる役割です。授業計画のように同じテーマが取り上げられますが、質問や行動のタイプは参加者ごとに変わる可能性があります。

セラピスト

台本やガイドがなく、幅広い質問のみがある場合、ファシリテーターはセラピストのように行動する必要があります。この役割では、ファシリテーターはコメントを調査し根本原因を明らかにします。これにより、参加者はテーマにより深く没頭することができます。接線のように見えるものは、重要な知見に変わる可能性があります。各参加者のセッションは、会話、行動、知見のタイプによって異なる可能性があります。

ファシリテーターは調査課題に対処し、仮説の絞り込みを手伝い、そして新しい調査課題を発見する必要があります。これらはセッションのもっとも難しいタイプであり、ファシリテーターの細心の注意が必要とされます。

新しい製品や機能、調査の深層インタビュー、インターフェイス設計の初期段階におけるユーザビリティテストなどといった生成的な調査を行う際、この役割を見ることができます。


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