毎日アプリから送信される通知の数に注目したことはありますか? これらの通知の内、いくつを実際に注意して見ていますか?
私たちは毎日、日々の生活を邪魔になるといっても過言ではない、役に立たない通知を数えきれないほど受け取っています。これらの通知はパーソナライズされているわけでもなく、私たちと関連性も薄く、送信のタイミングも考慮されていません。その結果、ユーザーは通知をオフにしたり、アプリを消去してしまったりします。
しかし、このUXのアンチパターンとも言うべきプッシュ通知は、企業とユーザーの双方にとって有意義で効果的なものにもなり得ます。プッシュ通知によって優れた結果を生むために、デザイナーはまずプッシュ通知の配信戦略を考えるべきです。この記事では、プッシュ通知の戦略を作成するときに従うべき重要なルールについて説明します。
1. 短時間の内に多くの通知を送りすぎない
プッシュ通知においてもっとも多い間違いで、もっともユーサビリティを損なうものは、ユーザーが扱うことのできない量の通知を送信することです。モバイルでは、メッセージが一律に重要なものと見なされるので、通知頻度を増やすことがアプリの価値に直結するとは限らないことを覚えておきましょう。プッシュ通知の頻度を増やして、ユーザーを圧倒させてはいけません。さもないと、ユーザーは最終的にアプリを消去してしまうでしょう。
通知の頻度について理解するために、閲覧者のライフスタイルやニーズをしっかり把握することが重要です。
2. 価値を強調する
アプリから得る価値が大きい限り、アプリを使い始めたユーザーはプッシュ通知を煩わしく思いません。問題は、ほとんどの通知が価値を届けていないことです。
通知を送信する前に、「ユーザーはこの情報を必要としているのか?」と自問することが大事です。馬鹿らしく聞こえるかもしれませんが、通知によっては、ユーザーの画面上で意味をなさないものがあります。
- 「ユーザーに利用をうながす」目的のためだけにプッシュ通知を送信してはいけません。たとえばFacebookでは、ランダムでおすすめされる人々と繋がるようユーザーをうながしたり、「Facebookでもっと多くの友達を見つけてましょう」と提案したりする通知を定期的に送っています。しかし、ユーザーをアプリに戻そうとするこの試みは、失敗と言えるでしょう。
- ユーザーが使用できない情報をプッシュしてはいけません。成功するプッシュ通知は、常にユーザーにとって使い勝手が良いものです。下のSpotifyの例のように、もしユーザーの助けにならないメッセージなのであれば、悪いプッシュ通知を送信していることになります。
3. メッセージをパーソナライズする
ユーザーにお知らせをしたり、利用をうながしたり、楽しませたりする上で、パーソナライズされたコンテンツはとても重要です。受信者の名前を入れるような小さな工夫でも、プッシュ通知のパフォーマンスを上げるのに役立ちます。あるケースでは、4倍もクリックされるようになったそうです。もちろん、パーソナライズとは、単にメッセージの頭に名前を加えることだけではありません。メッセージのコンテンツをパーソナライズすることで、個々人にとって価値のある情報を、ユーザーが確実に受け取れるようになります。Andrew Chen氏は以下のように主張しています。
「ユーザーが自分のサービスに対して感じている価値を理解することに集中しましょう。そしてユーザー特有の関心やニーズに合わせてメッセージを設計してください。そうすることで、エンゲージメントが劇的に増加して、ユーザーは熱狂的なファンになってくれるでしょう。」
ユーザーは、個人的な興味に直接関連するコンテンツを好みます。パーソナライズされた通知を作る最善策は、伝統的なユーザーデータ分析です。
パーソナライズの素晴らしい事例が、iOSとAndroid向けのNetflixアプリです。オーダーメイドされたように感じるおすすめを表示するために、Netflixは閲覧履歴を丁寧に使っています。新しい番組やシーズンが始まる度に、すべてのユーザーに通知を送信するのではなく、Netflixはまずそれぞれのユーザーがこれまでに見た番組を分析します。そして、新しいシーズンの中にユーザーが好きな番組がある場合にだけ、ユーザーに通知を送信します。その結果、アプリはユーザー個人に関連する情報を通知することができるのです。
このように、通知をデザインするときには、ユーザーについて集めたデータだけでなく、製品の使用データにも注意を払いましょう。
4. 簡潔でわかりやすいメッセージを心がける
通知がどのような内容であれ、文字通りにも比喩的にも、ユーザーと同じ言葉遣いで話すようにしましょう。
また不完全なメッセージでユーザーをイライラさせてはいけません。通知テキストは、通知のブロックの中で読み終わるようにするべきです。
簡潔で正確なテキストを心がければ、通知メッセージをより便利で信頼できるものにすることができます。
5. ユーザーにとって価値のある行動にリンクする
ほとんどの通知が製品の体験と直結しておらず、大雑把にアプリへ誘導しています。ユーザーがタップをしてもナビゲーションメニューに到達するだけで、ユーザーにとって価値のある行動に結び付きません。
プッシュ通知をターゲットページやCTAに繋げることが重要です。このルールに則った良いアプリの例として、Busuuという言語学習アプリがあります。通知を受け取ってタップをすると、ユーザーは通知と関連する、特別なページに誘導されます。つまりユーザージャーニーの中で、論理的に次のステップに進むことができるのです。
6. タイミングよく通知する
ユーザーに合わせるのは、言葉やメッセージ性の面だけではありません。タイミングも重要です。不自然な時間にプッシュ通知を送ってはいけません。午前0時~6時の間に通知を送ると、ユーザーを起こしたり邪魔したりする恐れがあります。
もちろんユーザーは、いつでも睡眠中の通知設定をオフにできます。しかしこれは良いソリューションとは言えません。より良いソリューションは、直ちに何か知らせることが必要なとき以外は、ユーザーにとってもっとも都合が良く、使いやすいタイミングで通知をすることではないでしょうか。
Andrew Chen氏のリサーチによると、エンゲージメントがもっとも高い午後6時~8時の間に、プッシュ通知を送るのが良いそうです。ただ、ユーザーのタイムゾーンに合わせて、午後6時~8時に送りましょう。
注:午後6時~8時という時間は、あくまで経験則です。プッシュ通知のタイミングにおいては、メッセージの緊急性も考慮されるべきです。最適なタイミングは、ユーザーの生活と緊急性の双方から判断しましょう。
7. 厳しくテストする
優れたプッシュ通知をもっと改善したいのであれば、テストしましょう。もっともユーザーに効果のあるメッセージを発見するには、ABテストがきわめて便利です。
1–800-Flowersでは、バレンタインデーに向けてまったく異なる2つのメッセージを用意して、ABテストを準備しました。彼らはあるメッセージを2種類作成して、少数のサンプルにテストを行いました。サンプルユーザーは、ショッピングカートにアイテムを追加したものの、購入を完了しなかった人たちでした。
最初のメッセージは、簡単なリマインダーでした。
2つ目には、15%割引されるプロモーションコードを加えました。
その結果、予想とは異なり、最初のメッセージ、つまりプロモーションコードがないメッセージのほうがパフォーマンスが優れていました。プロモーションコードがないメッセージは、プロモーションコードがあるものと比べて、50%以上高い売上に繋がり、アプリのアンインストールも少なくなりました。テストを行うことがとても重要であることが示された事例です。
8. 通知の実際の効果を測定する
従来プッシュ通知は、開封率やクリック率のような、肯定的な指標で測定されてきました。これらの指標は優れていますが、半分の事実しか伝えていません。ユーザーが本当に必要な情報を入手できたかどうかは、この指標からはわからないのです。また以下のような重要な疑問に対しても、答えのきっかけになることはないでしょう。
- 一連のプッシュ通知のあと、ユーザーは通知をオフにしたでしょうか?
- 通知を送ったことでアプリがアンインストールされたことはありましたか?
全体像を把握して、それに付随するあらゆる指標を追跡するべきです。
- アプリのアンインストール:通知を送信した結果生じたアンインストールの数です。この数をリアルタイムで測定すると、手遅れになる前に、有害な通知送信を簡単に修正、中止することができます。
- ユーザーのエンゲージメント:基本的に、この指標はプッシュ通知のあとでアプリにもう一度エンゲージメントしたユーザーの数を表します。
9. プッシュ通知だけに頼らない
SMSやメールなど、通知を行う手段は数多く存在します。それぞれの通知手段の適切な優先順位を示した、簡単な表を作ると良いでしょう。
使いやすい通知を作る
優れた通知とは、関連のあるコンテンツで、タイミング良く送信され、コンテキストに沿ったものです。通知をデザインする上でもっとも良い心掛けは、ユーザーの時間と関心に敬意を払い、そして少ない労力で多くのことを達成することです。
さらに知りたい人は以下の記事をご覧ください。
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