問題と向き合い、挑戦すべき領域を決めたら、そのプロジェクトの担当者や発案者は仲間を集める必要があります。このとき、複雑な環境や大規模な組織では、ステークホルダーマップ(Stakeholder Map)を作成し、内外の関係者や影響を与える人、影響を受ける人をまとめることが不可欠です。
あなたがプロジェクトの担当者または発案者であるとしましょう。あなたのタスクの1つは、自分の行動によって影響を受ける、内外のさまざまな関係者を理解し、まとめあげることです。最初のステップの1つは、チームを結成することです。しかし、多くの場合、影響を受ける人と影響を与える人のリストを作ったあとでなければ、チームは結成できません。
リストを集めるには、何らかの計画が必要です。多くの組織がその計画に利用するものの1つに、ステークホルダーマップがあります。ステークホルダーマップを小規模なものから始め、調査範囲の拡大に応じてマップに追加することで、挑戦すべき領域についてより明確なアイデアが得られます。また、途中で新しいチームが参加してくることもあるかもしれません。ステークホルダーマップは、ポストイットとホワイトボードさえあれば、より詳細なものをすぐに作ることができます。
ステークホルダーマッピング
ステークホルダーとは、あなたが関わっているチャレンジに対して影響力を持つ人、または影響を受ける人やグループのことです。影響がある人は、あなたの組織のトップから道行く人まで幅広く存在します。ステークホルダーは、さまざまな度合いであなたのチャレンジに影響を与えたり、影響を受けたりするでしょう。ステークホルダーを巡る状況を分析してマッピングする際には、その度合いを考慮する必要があります。
Mindtools.comでは、ステークホルダーが誰で、どのような影響力を持つのかという分析をする方法について、便利なガイドを提供しています。Mindtools.comが提案するアプローチは、グラフに「影響力」と「関心レベル」を示すことで、ステークホルダーのニーズを管理する方法のアイデアを得ようというものです。
内部の関係者とステークホルダーの関与度合いをマッピングし、プロセスや知識を学び、デザイン思考の経験を積むことで、担当者は誰をいつ巻き込むかという重要な決断を下せるようになるでしょう。また、デザイン思考のアプローチを使う際に、相談や説得、許可を求めることが必要になるかもしれない人についてインサイトも得られる可能性があります。
影響を受ける外部の関係者をマッピングして計画を立てることで、これから行うニーズや共感に焦点を当てた調査において、誰にアプローチすべきかを決めやすくなるでしょう。たとえば、サービスデザインに関するプロジェクトの場合、顧客基盤やセグメント、ニーズの差異を理解することで、顧客のインサイトを得るためのフォーカスグループや観察計画などのエスノグラフィック調査を行うための土台を作ることができます。
内部の関係者リストを作成しましょう。この関係者とは、社内や組織内、グループ内でチャレンジに取り組もうとしている人たちのことです。このリストには、何らかの形で直接的あるいは間接的に影響を受けるかもしれない人や、何らかの形で意思決定をする必要があったり、プロジェクトに影響を与えるかもしれない人を含む必要があります。
そして、重要度と関心度に応じて、それぞれ人に順位をつけましょう。評価対象の人数に応じて、自分なりの重要性の尺度を使用することもできるかもしれません。
リストアップしたステークホルダーをグループにまとめて、影響力と関心度に応じてマップ上に表してください。内部と外部両方のステークホルダーマップによって形成された図は、将来的にデザイン思考の課題に対処する際に集めなければならないチームの種類の良い指標になるでしょう。
ステークホルダーの影響力と関心度を評価する
Mindtoolsは、前述のステークホルダーについての考慮事項や疑問のリストも提供しています。リストを要約は、以下の通りです。
- 仕事の成果に対して、ステークホルダーはどのような金銭的または感情的な関心があるのか。
- もっともステークホルダーに刺激を与えるものは何か。
- ステークホルダーはどんな情報を求めているのか。
- メッセージをステークホルダーに伝える最良の方法は何か。
- 仕事に対してステークホルダーは現在どのような見解か。
- 誰がステークホルダーの意見全般に影響を与えるのか、誰があなたの意見に影響を与えるのか。
- ステークホルダーが積極的になる可能性が低い場合、彼らの支持を得られるものは何か。
- ステークホルダーに勝つことができないと思う場合、どのように反対派を扱うのか。
- ほかに誰がステークホルダーの意見の影響を受けるのか。
これらの質問は、マップをさらに理解し、チームに誰を入れるべきか、そしてチームが今後、内部と外部両方で誰と関係していくのかを理解するのに役立ちます。また、ニーズと体験を調べる段階において、どの人に共感するのがもっとも重要になるかについて、良い知見を得られるでしょう。
Mindtoolsのステークホルダーガイドは、マッピングのテンプレートも用意しています。誰があなたのチャレンジから影響を受けているか、あるいはチャレンジに対して影響を与えているかを理解する際に使用することができるでしょう。
「Namahn and Yellow Window Service Design:Design Flanders (2012)」からインスピレーションを得た「DIYtoolkit People and Connections Map」によれば、ステークホルダーマッピングは、ステークホルダーの範囲に影響したり、影響を受けたりする領域をマッピングする視覚的手法です。
さらに深い探索方法としては、カルチュラルマッピング(Cultural Mapping)があります。カルチュラルマッピングは、イノベーションと組織に関するコンサルタントでGamestormingの著者でもある、David Grey氏によって開発された調査方法です。たとえば、組織の目的と価値の核心を評価したり、再定義したりする場合には、カルチュラルマッピングが適しています。
まとめ
ステークホルダーとは、あなたが関与している挑戦に対して影響力を持つ、または挑戦から影響を受ける人々やグループ、個人のことです。挑戦の効果を体験するかもしれない人は、組織のトップから道行く人までさまざまです。ステークホルダーはさまざまな度合いで挑戦に影響を与えたり、挑戦から影響を受けたりします。また、ステークホルダーを巡る状況を分析してマッピングするときには、その度合いを考慮する必要があります。