ピザ屋でカプリチョーザにパイナップルを乗せてもらうとしましょう。これをカスタマイズと呼びます。しかし、ピザ屋に行った段階で、自分の欲しいピザをお店が既に知っていて、何も言わなくてもそれを用意してくれるとしたら、それはパーソナライズです。
その意味では、パーソナライズはカスタマイズの発展的な進歩だと言えます。モバイルアプリの専門家たちもまた、パーソナライズへと大きく舵を切っているのです。
モバイルサイトから始まったこのトレンドは、単に別のものにも応用し得るだけではありません。実際に、あらゆる産業で既に採用されています。
パーソナライズは正しく実行する必要があります。これはいくら強調しても足りないくらい重要なことです。パーソナライズにはとても多くの失敗例があるので、軽視してはいけません。この記事では、モバイルアプリのパーソナライズが重要な理由と、その正しい使い方を紹介します。
なぜパーソナライズが必要なのか?
端的に言えば、ユーザーがパーソナライズを求めているからです。あなたにとって、これがパーソナライズを行う理由として十分でないならパーソナライズを採用しなくても良いでしょう。昨年の調査で、近い将来の(つまり今現在の)インターネットユーザーやモバイルユーザーが期待することの第1位は、モバイルアプリのパーソナライズでした。それだけで、どんなに懐疑的なデザイナーにとっても十分な動機でしょう。
さらに、モバイルアプリをパーソナライズすれば、エンゲージメントやコンバーションをうながすこともできます。CMO Councilの報告では、「高いレスポンスやエンゲージメント率が、パーソナライズされたコンテンツを使う理由の第1位」だと述べられています。
肝心なのは、モバイルアプリのパーソナライズは全体的な収益を向上させるのに素晴らしい効果があるということです。Annex CloudのPrasad Dhamdhere氏は、特別な割引クーポンやお気に入りアイテムの再入荷通知などを通じて、パーソナライズが瞬間的な満足に結びついたことを記述しています。この話のオチは、「もっとも重要なカスタマーセグメントであるミレニアル世代は、瞬間的な満足を得られるものに弱い」ということです。まったくその通りだと思います。
最適なパーソナライズを実現する
Optimizelyはパーソナライズを、「特定のユーザーのニーズを満たすためにモバイルアプリを構築するプロセス」と定義しています。よってユーザー体験は、広範囲のすべてに適合するような1つのアプローチになることはなく、ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズされます。そのため、ユーザー体験がモバイルアプリのパーソナライズにおける核心となります。最適な環境を実現することで、ユーザーに最先端のUXが提供できるでしょう。
私たちはパーソナライズを、2つの領域に分割しました。
- アプリ内のパーソナライズ:ポップアップやダイアログボックス、位置情報や好みに基づいたおすすめ、割引、スペシャルオファーなどの機能を通じて、アプリ内でパーソナライズする。
- アプリ外のパーソナライズ:プッシュ通知を通じて、アプリの外側からパーソナライズする。
実例を見てみましょう。StarbucksやDrippler、Airbnbなどのアプリは、もっとも優れたパーソナライズの成功者です。たとえばAirbnbでは、ユーザーの旅行や旅行に関する好み、プランを監視しています。そしてその情報を使って、地元地域マッチングなどの機能を通じて、きわめてパーソナライズされた体験を提供しています。Dripplerは、ユーザーのスマートフォンに関するおすすめを送信するアプリです。Dripplerはインストールされたデバイスをスキャンし、学習して、関連性の高い記事のニュースフィードを作成します。またStarbucksは、パーソナライズされたヘッドラインを構築して、ユーザーの行動データを用いたスペシャルオファーや割引、クーポンを作成します。
すべてがユーザーのニーズや期待に合わせるためなのであれば、確かにアプリの専門家は、ユーザーが何を必要としているのか、アプリから何を得ることを期待しているのかを知るべきでしょう。
それでは私たちはどのようにして、テスト段階にユーザーの身を置かせ続けることなく、パーソナライズが成功しているかどうかを知ることができるのでしょうか。
テストと最適化
検索クエリのデフォルトや、位置情報に基づくフォームのオートフィル、割引やスペシャルオファー、以前のアプリ使用状況に応じた提案などのすべては、アプリをよりパーソナライズして使いやすくするという、明確な目的のために行われます。正しく使わないと、まったく逆の影響を与えるでしょう。クエリのデフォルトに関連性がないと、検索する前にデフォルトを消さなければならなくなり、ユーザーにとって余計な作業が増えてしまいます。位置情報に基づくフォームのオートフィルも、直感的でないなら無駄な作業でしょう。
以前のアプリの使用状況に応じた提案も、単にユーザーが間違ってタップしたせいで、動画アプリからロシアのストリートファイトをおすすめされるようでは逆効果です。これは私の身に起こったことで、とても不快でした。パーソナライズの効果に確実に焦点を当てたいならば、アプリを厳しく管理して、量的な分析を通じてテストし、最適化してください。
このとき、Appseeのタッチヒートマップのようなツールや、ユーザーセッションの撮影がとても役立つでしょう。タッチヒートマップは、モバイルアプリのツールとして不可欠なものになっていて、ユーザーの嗜好や意図を集計して視覚的にわかりやすく表示できる利便性があります。タッチヒートマップは、もっともインタラクションが多いアプリの部分を赤で明るく示し、少ない部分を暗いブルー系の色で示します。これによりアプリの専門家は、パーソナライズの効果がユーザーと適切に調和しているのかを素早く確認できるのです。
ユーザーセッションを撮影すればさらに正確です。まずアプリの専門家は、ユーザーが検索のデフォルトを消去したかどうかや、位置情報に基づくオートフィルや提案をオフにしたかどうかを知ることができます。ユーザーセッションの記録することで、さまざまなパーソナライズの取り組みでのユーザーの感情を文字通り感じることができ、プロセスの中でUXを傷つけることなく、調整し改善することができるのです。
結論
パーソナライズは、ただカスタマイズが進化したものではありません。モバイルアプリにとって必要不可欠になっています。アプリをより使いやすくして、瞬間的な満足を提供することで、ユーザーのニーズはアプリのパーソナライズに引き付けられ、アプリの専門家もそれに対応します。最終的には、アプリのユーザー体験やリテンションを改善し、収益を増加させたいとき、パーソナライズを実施しないわけにはいかなくなるでしょう。
しかし、モバイルアプリを効果的にパーソナライズすることは、言うほど簡単ではありません。また結果を出すには失敗がつきものです。綿密にプランを組んで、いくつかの優れた事例から想像力を膨らませ、その成果を観察して最適化するために効果的な量的分析ツールを使いましょう。そうすることで、映画『The Matrix』のNeoが銃弾をかわすよりも簡単に、パーソナライズの失敗を回避できるでしょう。