コンテンツの作成は、Webサイトプロジェクトの一部に過ぎず、作成のためには、計画やワークフローの決定、適切な人材の獲得、時間、お金が必要であり、さらに異なるチームステークホルダーや分野の専門家との協力が求められます。さらに、ビジネス目標とユーザーのニーズを満たすコンテンツの必要性を加味すると、要件はさらに複雑になります。コンテンツ制作がWebサイトのプロジェクトを邪魔することがよくあるのも頷けるものです。
プロジェクトのコンテンツ制作のために、必要な時間やお金、人材に対して十分な計画を立てなければ、次のような問題が発生します。
- コンテンツが予定どおりに提供されない、またはまったく提供されなくなり、プロジェクトが置き去りになる
- あらかじめ説明されていなかったリソースを割り当てる必要ができると、予算が吹き飛ぶ
- 計画が後ろ倒しされ、プロジェクトが遅延し、ほかの作業もドミノ倒しになるかもしれない
- チームメンバーが離脱したり、モチベーションが下がったりする
- 急いだり、その場しのぎで間違った人が制作したりすると、質の低いコンテンツが公開される
Webサイトプロジェクトの性質上、予想できない問題や乗り越えるべき障害は常に生まれます。しかし、コンテンツがいつもストレスや遅れの原因になる必要はありません。コンテンツの制作が前もって計画されていれば、より協力体制を取って、質の高いコンテンツができる可能性があります。
この記事では、コンテンツ制作における考慮すべきことと、予算やスケジュール、必要なリソースを計算するプロセスについて説明します。
コンテンツ制作における3つの重要な考慮事項
コンテンツ制作に必要なリソースを決定し、コンテンツを完成させる時期とスケジュールを検討するために、チームは次の3つを考慮する必要があります。
- 現在の状態と既在コンテンツ
- コンテンツの制作、承認、公開に必要なワークフロー
- ワークフローの各ステップで必要な役割と人材
成功する計画を立てるために、これらを詳細に見ていきましょう。
コンテンツインベントリ
プロジェクトの要件を満たすために必要な時間、お金、人について考える前に、どれだけのコンテンツを制作する必要があるのかを知る必要があります。
まず、コンテンツインベントリ(content inventory)を作成してください。コンテンツインベントリとは、チーム、クライアント、または組織が所有するすべてのコンテンツの事実を記したソースです。Webページ、印刷物、オーディオおよびビデオコンテンツなど、所有するあらゆるコンテンツを含める必要があります。
そのためインベントリは、コンテンツ監査の基礎として使用できます。コンテンツ監査では、コンテンツの全体像を評価して、どのコンテンツを残し、どれをアーカイブし、どれを修正するのか、そして新しいコンテンツを作成するべき余地はあるのかを判断します。このようにして、現在の実行状態をよく理解できるでしょう。これが時間、お金、人にどのように換算されるのかはまだわかりませんが、コンテンツ制作のコストを計算するためにはとても重要なステップです。
ワークフローの定義
次に、ワークフローを定義する必要があります。ワークフローとは、Webページ、ブログ記事、紙、メールなどのコンテンツの種類、または特定のクライアントに対して、チームが行う必要のある一連のタスクのことです。
このステップで、プロセスに誰が関与する必要があるのかを決定します。典型的なワークフローのステップは次のとおりです。
- ブリーフィング
- ライティング
- レビュー
- 編集
- 承認
- 公開
マーケティング、法務、財務などのステークホルダーにコンテンツを回す必要がある場合、レビュー、編集、承認というフィードバックループを複数回繰り返す必要があるかもしれません。
典型的なコンテンツ制作プロセス
一般的なコンテンツ制作プロセスのステップは次のとおりです。
- ブリーフィング
- リサーチ
- ライティング
- レビュー
- 修正
- 承認
- CMSにアップロード
- HTMLでのレビュー
- ユーザーテスト、イテレーション
- 公開
- ガバナンス、維持(多くの場合、これ自体が新しいプロセスやワークフロー)
このプロセスはあくまで「典型」で、チームのワークフローや組織構造によってはステップの数が増減するかもしれません。またステップは別の定義付けをされているかもしれません。しかし、典型的なプロセスについて議論することで、各ステップで必要なリソースを計算し、コンテンツ制作を拡大、縮小した際の影響について検討できるようになります。
コンテンツの制作を容易にするワークフローを定義することによって、各ステップで必要な人、役割、チームが明確になり始めます。コンテンツ提供チームは、コンテンツ戦略担当、ライター、コンテンツデザイナー、編集者、そのテーマに関する専門家、ユーザー調査担当などで構成されます。各ワークフローのステップに割り当てられる人との関係で、この段階から時間と経費を真剣に考慮するようになります。
セマンティクスや役職に気を取られることのないよう、ここではこのプロセス内のいくつかの一般的な役割と、それらが担当する可能性があるタスクの中身を分析します。
1人が複数の役をやることになるかもしれませんが、このプロセスの目標は、いつ、誰によって、何がなされるべきかを把握することです。これは必要なリソースの観点から考えるきっかけになります。たとえ見積もりであっても、プロジェクトの予算とスケールが承認されているコンテンツ制作の段階になってから、時間とコストがいくら必要なのかという概念がないことに気づくよりは増しでしょう。
コストの計算
ワークフローと生産プロセスが明確に定義されていても、この定義を時間、人、コストに換算するのはやはり難しいでしょう。GatherContentで私たちが実施した四半期のContent Strategy Masterclassには、上記の典型的なコンテンツ制作プロセスに基づいて、このプロセスを通じてコンテンツを作成するのに必要な労力を計算する演習があります。
この演習は科学的なアプローチではありませんが、出席者2,000人のサンプルに基づいています。クラスでは、出席者はプロセスの各ステップでコンテンツを作成するための時間を割り当てるように求められます。これはすべて、700字程度のテキストのみで、ほかのフォーマットはない、正確な技術的ヒントに関するWebページを作るものです。したがって、要件としてはかなりシンプルなページです。
ステップごとに、出席者はその時間を共有のスプレッドシートに追加します。たとえば、ある参加者は次のように決めるかもしれません。
- ブリーフィング - 1.5時間
- リサーチ - 2時間
- ライティング - 5時間
- レビュー - 2時間
- 修正 - 1.5時間
- 承認、サインオフ - 0.5時間
- CMSにアップロード - 1時間
- HTMLでのレビュー - 1時間
- 公開 - 0.5時間
このサンプルページのコンテンツをブリーフィングから公開するまでに、ある参加者は合計15時間かかります。これは、複数のステークホルダーからのレビューやフィードバックループを考慮していません。
制作コストの感覚をつかむために、このプロセスにはいくつかの重要な変数があります。ページ数、労力(時間単位)、生産のタイムスケール、ライターあたりのコストなどです。
コンテンツ制作のスケール
私たちが実施したマスタークラスの演習では、出席者が割り当てた平均合計時間は、クラスごとに12時間から18時間まであり、全体の平均は13時間でした。これを1ページとすれば、複数のページ、いくつかのセクション、Webサイト全体、さらには1つのプロジェクトとして複数のWebサイトにまでコンテンツ制作を拡大しても、コンテンツにどれだけの労力を割く必要があるのか、それが予算と時間にどう関わってくるのかすぐ明らかになります。ただ、これは情報アーキテクチャ(IA)、タクソノミー、デザイン、構築、テストなど、プロジェクトの一部になり得るほかのタスクは踏まえていません。
たとえコンテンツ制作のタスクが膨大でも、盲目にプロセスを行って圧倒されるのでなく、できる限り準備しておくべきでしょう。
成功するためにやるべきこと
今後のコンテンツ制作の範囲への理解を深めることで、タイムスケールや、必要なリソースやギャップのある場所、プロジェクトへのアプローチ方法(繰り返しか段階的か)に関して、少なくともより的を射た進言ができるようになります。また、サイトへの期待を上手く管理できるようになり、Webサイトプロジェクトに多くの要素や人々が関わっても、良い影響だけが見込めるでしょう。
制作プロセスと、プロセスを通してコンテンツを作成するために必要なものを知るほど、より簡単にプロジェクトの制約を明らかにできます。制約とは、次のものが足りないことかもしれません。
- 時間
- ライター
- 予算
また、これらのリソースの制約や制限に関連して、プロジェクトのスケールにも問題が出るかもしれません。
これらの変数同士の関係もまた大切です。ライターをプロジェクトに追加すれば、予算に影響が出ます。特定のリソースをワークフローのさまざまな領域に割り当てれば、タイムスケールに影響するかもしれません。これらの変数はどれも個別に考えるべきではなく、あらかじめ準備ができない問題を予期することは重要である一方で、コンテンツ制作のコストを計算しようとすることは、プロジェクトを順調に進めること以外には役に立ちません。
公開したあとを考える
一旦Webサイトが公開されてしまえばリソースの必要性が完全になくなるということは、まずありません。メインのWebサイトプロジェクトに追加のリソースが割り当てられた場合は、コンテンツの管理と維持のために、公開後に必要なリソースを検討しましょう。ワークフローを磨き、生産を縮小させる必要があるかもしれませんが、コンテンツの管理を計画することで、コンテンツが正確で、関連していて、有用であり続けるために必要になるコストを把握しやすくなります。
まとめ
コンテンツ制作がWebサイトプロジェクトを遅らせることがないように、コンテンツチームは以下のことを行う必要があります。
- コンテンツインベントリを作成し、コンテンツの監査の基礎として使用する
- コンテンツのブリーフィングから公開までのワークフローを定義する
- ワークフローの各ステップに人材を割り当てる
- コンテンツの要件に関連して利用可能なすべてのリソースを評価し、ギャップ、ボトルネック、機会、問題を特定する
- コンテンツを立ち上げたあと、管理のために必要なリソースについて考える
正確さを追求するのは良いことですが、プロジェクトの開始時にコンテンツ制作のすべての要件をチェックするのは難しいところがあります。しかし、コンテンツを制作するコストを計算するよう試みるだけでも、プロジェクトを順調に進めるのに役立つ、大まかな見積もりや知識に基づいた推測、インサイトを得ることはできるでしょう。