効率のよい意思決定のためのデータドリブンデザイン

Jennifer Leigh Brown

Jenniferは20年近く、UXやデジタル戦略、リサーチ、コンテンツやデザインに関する努力をリードしています。複雑なものをシンプルにすることを専門としてます。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Data-Informed Design: Minimize the Website Redesign Debate

Webサイトをデザインし直すことになりそうなとき、あなたはワクワクしますか? それとも恐怖で押し潰されますか?

Webサイトとは単なるオンラインの資産ではなく、企業のブランドと顧客体験を反映するものです。デザインし直す際には、誰もが意見を持っているものですが、何をどのようにするべきか考える議論において、最も客観的で正しい答えを持っているのは、データを持っている人間です。

注目を浴びるWebサイトのプロジェクトは、素晴らしい機会にも悲惨な失敗にもなり得ます。プロジェクトの計画や管理からリソースや文化の問題まで、多くの要因がプロジェクトの進行に関係するでしょう。このときUXチームの成功を後押しする方法の1つが、データドリブンなアプローチを駆使して、リデザインの際に生じる疑問に答えることです。データドリブンとは何を意味するのか、どのように始めるべきかを見ていきましょう。

データドリブンデザインとは何か、なぜ行うのか

データに限りはありません。では「データドリブン」なWebサイトデザインのアプローチとは具体的に何でしょうか? データとは単なる数値でしょうか? データは分析であって、インタビューではないのでしょうか? 将来を予測する、巨大で構造的なものでしょうか? それともデータはコンテキストに依存せざるを得ないのでしょうか?

この記事では、データとは、有意義な形でデザインのアプローチを解釈するのに役立つあらゆる情報であると定義します。データには、「何を」「いつ」「どこで」という疑問に答える量的データと、「なぜに」答える質的データの両方が含まれます(忘れていませんか? Beginner’s Guide to UX Researchを読み返してください)。

リデザインのプロセスにおいて、推測や仮定に基づいて問題とその解決策を決めてはいけません。複数のソースからデータを収集し評価しているチームは、現在のデザインの課題とチャンスをより深く理解することができます。データドリブンなアプローチは、より良いユーザー体験をつくる中で、Webサイトの構造やビジュアル、レイアウト、機能性、コピーなどにも効果をもたらすでしょう。データは以下のような目的で活用されます。

  • 発見:どのパターンやトレンドがうまく機能していて、何が機能していないのかを見つけ、問題とそのソリューションを掘り下げるため。
  • 改善:既存のアプローチやアイデアを改善したり、時間とともに増加する変更点を実験するため。
  • 検証:変更や意思決定などを実証するため。課題を確かめて、成功するアプローチと成功しないアプローチを証明するため。

データを活用して、デザインし直す際の疑問に答える

どのようなデータが必要で、どこで見つければいいのでしょうか? データを収集する最善の方法は何でしょうか? この質問に対する唯一の普遍的な回答は、「場合による」です。データの種類やソース、収集方法は、プロジェクトの性質やリソースに依ります。よって、リサーチのアプローチも異なるでしょう。

Webサイトの機能を解釈するためのデータは、対処すべき課題によって異なります。一方で、Webサイトをデザインし直す際に生じる疑問には共通するものがあります。初めてデータドリブンデザインを実行する人もいるでしょうから、ここでは5つのよくある疑問と、その解決にデータがどのように役立つかを描いた事例を紹介します。

これらは「正しい」唯一の答えではなく、デザインを知らせるデータ活用を始めるための事例だということを覚えておきましょう。

疑問1:「より良い」サイトとは

新しいサイトは現在のサイトよりも「より良く」なければならないと誰もが口を揃えます。しかし、「より良い」の意味を教えてくれる人は誰もいません。どこから始めればいいのでしょうか?

答え:分析結果を見直して、現在のパフォーマンスをベンチマーク解析しましょう。

「将来的により良い」ものがどのようなものかを測るためには、現在起きていることに注目しましょう。Google AnalyticsやWebtrendsなどのアナリティクスプログラムなどを適切にサイトに導入することで、ベンチマークやパフォーマンスの指針を立てるための素晴らしいソースが得られるでしょう。アナリティクスを専門とする人材がいない人は、以下のデータの種類を理解して、探すデータの的を絞るのに役立てください。

  • ページ閲覧数と訪問数
  • もっともトラフィックの多いページ
  • ソースや種類ごとのトラフィック(オーガニック、リファラル、ダイレクト、ソーシャルメディア、キーワード)
  • 検索結果ページで最上位のページ
  • 直帰率や退席率
  • サイト滞在時間
  • コンテンツのパフォーマンス
  • 行動フロー
  • コンバージョン率(登録者、問い合わせ、売上など)
  • デバイスとブラウザ
  • デモグラフィクス情報、位置情報

たとえば、トラフィックが少なかったり直帰率が高かったりするのは、そのページのコンテンツに問題があるからかもしれません。ページを改善するために変更すべき部分を特定して、閲覧数やエンゲージメントの増加目標を設定しましょう。反対に、トラフィックは高いのにエンゲージメント率が低いページもあります。このようなページを改善する目標を設定することで、より多くの人がページに訪れ、訪問者に良い影響を与えられるでしょう。

リマインダー:高い直帰率は必ずしも悪いことではありません。ユーザーが必要な情報を見つけられていることを意味している可能性もあります。

疑問2:理由を分析する

人々がどのようにサイトを訪れ、そこで何をしているのかに関するデータは持っています。しかし、彼らがサイトを訪れ、必要なものを見つける理由は何でしょうか?

答え:訪問者の目的と満足度の調査を追加しましょう。

数字は訪問者が何をしたのかについては教えてくれますが、その理由や、満足したかどうかについては教えてくれません。それらを理解するには、質的データが必要です。質的データを収集する低コストで簡単な方法が、訪問者の真意調査です。この短い調査では、なぜユーザーがサイトを訪問したのか、タスクを完了できたのかどうか、体験の満足度などを尋ねます。1つの質問だけの簡単なアンケートでも、ユーザーに負担を課すことなく、探しているものを見つけられたかどうかに関するデータを集められるでしょう。

リマインダー:この種の調査は、ユーザーの行動に起因して、適切に実行されるべきです。たとえば、特定のコンテンツを閲覧したあと、多くのページを訪問したあと、一定時間サイトに滞在したあと、サイトから退出する前などにユーザーに聞きましょう。ユーザーが何らかのコンテンツを見る前に、強引にWebサイトでの体験を邪魔すると、回答率やサイトの満足度に悪い影響を与えかねません。(調査をする際は、Essential Guide to Writing Effective Survey Questionsの記事をチェックしてください。)

疑問3:デザインアプローチに対する提案

一緒に作業しているデザイナーは、ページの最下部にCTAを配置したロングスクロールページを提案しています。このようなページを彼女はランディングページに使用していて、マーケティングチームもそれを好んでいました。しかし、私はこのアプローチに反対する記事を読みました。特に小さなモバイルデバイスにおいて、ユーザーはスクロールしてくれるでしょうか?

答え:クリックトラッキングのヒートマップ、セッションのレコーディング、A/Bテストを見直しましょう。

自分の調査結果から最善の方向性を簡単に決定できるなら、他人の意見が書かれた記事のリンクを送信する必要はどこにもありません。デザインアプローチを守る、あるいは打破するためには、実際のユーザーインタラクションからのデータを使いましょう。

ユーザーリサーチよりも負担を少なく、アナリティクスのレポートよりもインサイトを獲得したいなら、MouseflowClicktaleHotjarVWOInspectletなどのツールが便利です。これらのツールは、ユーザーとページのインタラクションを記録し、クリックやホバー、スクロールについてのレポートを提供します。これらのデータのビジュアルや動画からは、マウスの動きやスクロール動作、Webページでページの要素がインタラクションされる頻度がわかります。

A/Bテストは、異なるデザインのバージョンを比較して、どちらがより優れているのかを判断するのに活用できます。これらのツールは、長いページの一番下にある大きな緑のボタンがクリックされない理由については教えてくれないでしょう。しかし、ボタンがモバイルやタブレット、デスクトップデバイスで視認されているかどうかは教えてくれます。

リマインダー:マウスの動きは目の動きと同じではありません。しかし、カーソルと目の焦点との平均的な距離は、約90ピクセルだとする調査もあります。(ソース:Gaze and Mouse Coordination in Everyday Work PDF)

疑問4:内部のステークホルダーと外部のユーザー

クライアントやステークホルダーは、企業のWebサイトのナビゲーションがわかりにくいことに同意しています。しかし、階層構造をとるべきだという以外には、より良い構造についての合意はありません。外部のユーザーにとって内部に焦点を置いたナビゲーションは直感的でないことを納得させるには、どうしたらいいでしょうか?

答え:カードソートとツリーテストを実施しましょう。

Webサイトのナビゲーションは、ステークホルダーの意見に従って構成されることが多すぎます。ユーザーは、用語や言葉、組織に関する期待を抱いてサイトにやって来ます。そういった外部の人間の視点は、企業やその製品、Webサイトの構造に親しい人の視点とは大きく異なっています。カードソートから得られるデータは、サイトのユーザーの心理モデルに適合したナビゲーションに改善するのに役立つでしょう。カードソートに用いるカテゴリーやラベルについて議論になった場合は、オープンカードソートを活用して新しい方向性を探してみましょう。クローズカードソートは、提示された方向性を実証したり、どのバージョンがもっともパフォーマンスが優れているのかを比較したりするのに役立ちます。

もっとデータが必要であれば、ツリーテスト(カードソートの反対)を追加して、サイト構造内のアイテムが見つけやすいかどうか測定しましょう。なぜツリーテストとカードソートの両方を実施すべきなのでしょうか? その理由は、情報を分類するときと探索するときでは、ユーザーの情報処理の方法が異なるからです。これらの結果は、どのラベルがわかりにくいのか、どのアイテムが「間違った」カテゴリーに分類されているのかなどを判断するのに役立つでしょう。(詳しくは、The Hidden Dangers of Tree Testingの記事で学んでください。)

リマインダー:外部と内部のユーザーでテストを分けましょう。このデータによって、ステークホルダーの内的な結果とターゲットユーザーの現実の結果とを比較することができます。

疑問5:コンバージョン率が低い原因

新しいサイトの目標の1つは、メールの登録数を増やすことです。今はポップアップで登録の宣伝をしているのですが、オプトイン数は見るに堪えません。ユーザーはどのように感じているのでしょうか? なぜ登録してくれないのでしょうか?

答え:ユーザーに聞いてみましょう。

ユーザー体験に関連する多くの質問に答えるのは、数字のデータだけではありません。人々がなぜある行為をするのか、なぜしないのか、どのように感じているのかを知りたければ、彼らに聞いてみましょう。データを集める方法は、「なぜ今日登録しなかったのですか?」や「どのコンテンツに興味を惹かれましたか?」といった、ユーザーの行為に対して1つ質問する簡単なアンケートになるでしょう。

しかし、この例のように、ユーザーを妨害する強引なポップアップがサイトにあると、アンケートはユーザーにさらなるストレスを与えかねません。また、サーベイではトピックを深く追及することはできないでしょう。問題はプロモーションなのでしょうか、それともニュースレターの内容でしょうか?

より賢明な代替案は、メールの登録に関する質問をユーザーリサーチの一部に含めることです。興味のある情報や、登録に駆り立てられるものについて聞きましょう。そうすることで、ページのコンテンツやメールのプロモーション方法に関する新しいアイデアを獲得できます。質的調査と量的調査を組み合わせることで、機能するものと改善の機会について、より優れた視点から分析できるでしょう。

効果的なWebサイトはユーザーを一番に考える

データはユーザーついての理解を促進します。デザインチームやプロジェクトリーダー、クライアントやステークホルダーはユーザーではありません。ユーザーからのデータをプロセスに含めることができなければ、戦略が成功することは決してありません。

ターゲットユーザーの目的や行動、ニーズ、好みに対応するサイトを作成すれば、ユーザーの効率や満足が増え、より効果的なWebサイトにつながるでしょう。サイトのコンバージョンの目標にも依りますが、それはつまり、エンゲージメントや登録、需要、売上が増加するということです。デザインの方向性を決めるためにデータを活用すれば、確実に恩恵を得られるでしょう。


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