デザイナーがデザインスプリントに取り組むべき理由

Angelica Valentine

Angelicaは、Proto.ioのコンテンツ編集者です。オークランド出身で、沿岸部を中心とした音楽、グルメ、文化イベントに参加するのが好きです。

この記事はProto.ioからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Why Designers Need to Incorporate Design Sprints

デザインには、落とし穴が山ほどあります。上手くいかないこともたくさんあり、小さな間違いが、デザイナーの時間を無駄にしてしまうこともあるでしょう。

予測可能な間違いを防ぐために、デザイナーはデザインプロセスを実施してきました。さまざまな方法がありますが、デザイン業界でもっとも一般的に使われつつあるのは、デザインスプリントです。

デザインスプリントは、プロジェクトの最初から最後まで広範囲に適用できて、調査し忘れることがありません。デザインスプリントの仕組みを理解すれば、どのようなデザインや開発プロジェクトでも驚くほど効果的に利用できることが実感できるでしょう。

デザインスプリントとは

デザインスプリントは、デザインチームがより効率良くテストして問題解決できるよう、Google Venturesによって作り出されました。一般的に、デザインスプリントの期間は5日間ですが、2日間という短期間で実行することもあります。実際、スケジュールに融通が利く点が人気の秘訣でもあります。デザインスプリントで唯一遵守しなければならないのは、次の基礎的なプロセスの要素に従うことです。その要素とは、理解と定義、発散、意思決定、プロトタイピング、テストです。

チームは、それぞれの段階が何を意味するのか自由に決定することができます。たとえば、ユーザー体験と市場分析をプロセスの一部に取り入れるチームもあります。また、同じ段階に、ユーザー体験の分析など別の役割を持たせる場合もあります。デザインスプリントのモデルには柔軟性があるので、あらゆるデザインチームで利用することができるでしょう。

また、それぞれの段階では、デザインチームが市場や目的、想像力をより深く掘り下げられるよう、重要な疑問が問われます。たとえば、理解と定義の段階では、ビジネスの需要、技術の性能、事業戦略、プロジェクトの焦点などを吟味します。これらの点を理解し、定義できれば、次のアイデアを広げる段階で、たくさんの選択肢を探ることができるでしょう。

続く意思決定の段階では、チームはどのアイデアがプロトタイピングの段階に移行できるかを決定します。同様に、アイデアをプロトタイプできる数の上限も設定しましょう。プロトタイプは、デザインチームに提示されて、ユーザーテストで検証されます。ユーザーテストでもっとも優れた結果を出したプロトタイプが、最終的に開発されることになるでしょう。

デザインスプリントはどのように機能するのか

ほとんどのグループプロジェクトと同様に、デザインスプリントにもリーダーが必要です。リーダーとなるスプリントマスターの役割は、問題点を認識し解決できるようにチームを団結させることです。通常、ユーザー体験について詳しい人がスプリントマスターになります。優れたスプリントマスターとは、タスクを定義し、現実的な目標を立て、ターゲットの市場を理解できる人です。

スプリントマスターの誘導のもと、チームは既存もしくは新規のプロジェクトにおいて協力して考えうる限り最善のアイデアを考え出し、プロトタイプを作ります。既存のプロジェクトでは、どの段階にいてもユーザーアンケートや競合のレビューを基に調整することができます。ここでも、製品の改善や開発に向けてどれだけのテストが必要になるのかはチーム内で決定しましょう。スプリントのプロセスが滞ることがないよう、テストの限度量を迅速に決定したり、それぞれの段階の時間制限を決定しておくことが大切です。

テクノロジーデザインや開発フォーラム、ブログなどを見渡せば、デザインスプリントにもさまざまな実施方法があることに気づくでしょう。デザインスプリントには全部で40もの方法があります。Google Venturesのチームが発表したオリジナルに基づき、会社ごとのニーズに合わせて過程をアレンジすることができるでしょう。

このような多様な戦略は、短い計画・実行のサイクルにさらに分解できます。たとえば、チームが最初の「理解」の段階において全体でのライトニングトークが必要だと判断したとすれば、ビジネスの目標や成功の指標、技術の性能とその課題、適切なユーザー調査に焦点を当てた分間のセッションを3回実施できるでしょう。

プロセスはこのように進んでいきます。このデザインプロセスを実行するにあたって、考慮すべき要素はたくさんあるように思えるかもしれません。しかし、デザインスプリントは、これまで使用されてきた中でもっとも包括的なツールです。デザインの結果を加味すれば、このプロセスに時間を割くだけの価値は十分にあります。

デザインスプリントからチームが得られるもの

デザインスプリントを使うメリットの1つとして、効率的であることが挙げられます。1つの製品を5日間で作り上げるのは、驚くほどの早業でしょう。加えて、テストが組み込まれているため、会社は損失を減らし、売り上げを増やすことができます。テストによって製品の効果が実証されていれば、市場のユーザーが購入する可能性は高くなります。一方で、製品の効果が確認できなかったときには、会社は貴重な時間や経費を無駄にすることなく、別のデザインに移行することできるでしょう。

既存の製品もまた、デザインスプリントから恩恵を得られます。デザインによっては、欠陥を発見しにくいものがあります。たとえば、ユーザーのニーズを集めたデータと製品デザインが適合していても、実際の消費者の気持ちは動かないかもしれません。このときデザインスプリントを使えば、製品があまり評価されない原因となっているユーザー体験の詳細を探し当てることができます。

デザインスプリントは、開発過程においても非常に有益です。製品がすでにプロトタイプになっているため、開発チームは、製品を市場に出すための万全の準備ができています。事前のプロトタイピングによって、開発チームはバグのない製品を構築するために細かい部分を調整する作業から解放されているのです。

ほかの有益な点として、意見の不一致の解消と、創造性の向上が挙げられます。デザインスプリントでは、チームが団結し協調することで、製品に対する意見の不一致を解決することができます。加えて、デザインスプリントは短期間で製品を作り上げるためにプロセスが凝縮されているので、創造性と生産性が向上します。

つまり、デザインスプリントによって、チームはより効率的で、クリエイティブで、生産的で、構造的になるのです。このような恩恵を理解すれば、新しい製品を作ったり既存のデザインを改善させたりするために、Googleのような大企業がデザインスプリントを導入している理由は明らかでしょう。

Source: zapier.com

デザインスプリントのヒントと成功例

では、デザインスプリントを始めるのに最適なタイミングはいつでしょうか? Google Ventureによれば、新しいスプリントを開始する絶好の機会は、チームが新しい製品を作りたいときや、既存の製品についての議論で、チームが行き詰まったときなどです。途方に暮れてしまうほど難しいプロジェクトがあるときにデザインスプリントを始めれば、根本的な部分から問題を理解することができます。

例として、Blue Bottle Coffeeは自身の市場を広げようと決意したとき、デザインスプリントを使うことで、オンラインストアでも店頭と同じようなやり取りができるようなりました。実店舗の雰囲気がBlue Bottle Coffeeの大きな魅力であったため、この要素はオンラインでのブランディングにも不可欠でしたが、デザインスプリントのおかげで、店頭を真似たオンラインのユーザー体験を作り出すことができたのです。

スプリントチームのスキルを多様化させるのも、デザインスプリントを効果的にするコツです。チームのメンバーが、優れた結果を出すために必要になる色々な分野に精通しているようにしましょう。FacebookGoogleAirbnbSlackといった企業は、製品やブランドを改善し、効率的にし、構築するために、多様性のあるスプリントチームを組んでいます。

デザインスプリントを使えば、あらゆるデザインの問題点を解決することができます。デザインスプリントは、デザインチームを指導し管理するもっとも万能な方法の1つです。会社のさまざまな部署の計画とテストに、どのようにデザインスプリントを組み込めるか自由に考えてみましょう。

デザインスプリントに切り替える

デザインスプリントに切り替える前に、Googleが書いた開発者のための心得を読むといいでしょう。たくさん選択肢があるため、初めてデザインスプリントを作るのは大変だという印象がある方もいるかもしれません。しかし選択肢を1つひとつを調べて、どのように繋がるのかを分析すれば、その効果も自ずと見えてくるでしょう。

デザインスプリントでは、すべてのドキュメントをチームメンバーと共有しましょう。チーム全体がプロセスの仕組みを理解し、利益を実感することが大切です。チームメンバーがデザインスプリントに全力で参加できないと、最善の結果を引きだすことができなくなってしまいます。初めてのデザインスプリントにおいて、どのように実施するべきなのかきちんと調査せずに始めることは避けるべきでしょう。

デザインスプリントを上手く組み合わせれば、企業が使用しているすべてのプロジェクト管理方法を廃止して、デザインスプリントに一本化することもできるでしょう。実際、さまざまな部署でデザインスプリントを使えば、創造性や生産性、効率性が向上します。同じデザイン戦略や方法をすべての部署で効率良く使えれば、損になることは決してありません。

もし、さまざまな部署でデザインスプリントを使用するのであれば、必ずチームのニーズに合うようにそれぞれのスプリントをカスタマイズしてください。デザインスプリントの選択肢を組み合わせる方法は無数にあります。

Source: Google Ventures via inc.com

将来に向けたデザイン

将来に向けてデザインするためには、チームが迅速かつクリエイティブに行動することが必要です。デザインスプリントを使えば、チームはこの目標を達成することができます。これほど時間と経費を節約しながら、完成品の基礎を作り出せるデザインプロセスはほかにありません。準備ができたら、デザインスプリントによって、どのような素晴らしい結果が出せるか試してみましょう。


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