IT会社に勤めている人間でも、UXについて理解している人は多くない気がします。しかしUXとは、決してデザイナーだけが理解するべき概念ではありません。企画、開発など職種に問わず、ウェブサービスに関わる全ての人間は常に意識するべきです。
価値を届ける先はユーザー
UXとは一言で「ユーザー体験」であり、機能性のみならず感情や行動の変化も含まれます。「使っていてワクワクする!」「一連のフローが簡単で分かりやすい!」とユーザーに言ってもらえるような状態を設計することが大切です。
情報が多いと目標を見失いがちになってしまいますが、サービスを届ける先はユーザーなんですね。いくらコンテンツパートナーが多かろうが、ビジネスモデルが複雑であろうが、様々なチャネルを経由して価値を提供する先には必ずユーザーがいます。サービス側も協業先もユーザーも全てウィン・ウィンの関係を構築する。サービス運営で手一杯になってしまうと、ユーザーの存在を忘れがちになってしまうので、注意しなくてはなりません。
価値体験で差別化する
ブルーオーシャンを見つけたビジネスならともかく、ほとんどの場合競合が市場のシェアを得ようとしのぎを削っています。Apple Music、AWA、Google Play Music, Line Musicのそれぞれの特徴を理解している人はどれぐらいいるのでしょうか。機能で使用するサービスを選択する人よりも、何となく登録する人の割合の方が多く、この”浮動票”を獲得することが今後のグロースに繋がります。
今どのサービスも◯ヶ月無料キャンペーンを実施していますよね。各サービスともローンチ後に無料体験期間を設け、実際に使ってもらうことにより、自身のサービスが提供する世界観や価値観、そこでしか味わうことのできないユーザー体験を提案しています。
利用してもらうことによってユーザーに何を感じてほしいのか、どのような感情を抱いてほしいのか、次にどのような行動に移ってほしいのか。ユーザーの気持ちに寄り添いながら、最も楽しく心地が良い環境を提供することによって差別化を図ることができるのです。
デザイン思考も同じ
この考え方は、デザイン思考の中でも活用されています。この思考方法を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。最近では大手の会社においても、デザイン思考のフレームワークを用いて実案件に取り組むことが多いそうです。
デザイン思考とは思考の「設計」であり、新しい機会を見つけるための問題解決プロセスです。スタンフォード大学のd.schoolとIDEOが「IDEOデザイン・シンキング」にてその思考方法を発表したことにより、 世界で注目されました。デザイン思考は、本質的なモノを見つけようとする場合に役に立ちます。つまり、何を作ればいいのか、作ったものをどのようにユーザーに届けるのかなどの物事の根本を引き出すことができます。
デザイン思考の5つのステップのうちの一つ目に「Empathize:共感」があります。「共感」は、極上のユーザー体験を提案する上で欠かすことができません。これはユーザーの立場を想像し、感情の中に深く入り込んでいくプロセスです。ユーザーに共感することにより、ユーザーが潜在的に求めているであろう事柄(インサイト)に気付くことができます。客観的にユーザーの気持ちを想定するのではなく、ユーザーに共感することにより、ユーザーすら気づいていない欲求や感情を認識することができるのです。その結果、どの顧客セグメントにどのような価値を提供すればいいのかが見えてきます。
ユーザーがすべて
職種に関係なく常にユーザーファーストを心がけ、ユーザーを笑顔にすることに注力する。UXと聞くと身構えてしまう人もいますが、結局はユーザーのことをより深く知って、そこにいかにコミットするかなんですね。サービスを使用しているユーザーは楽しんでいるか。ユーザーのコストに見合う価値を提供しているか。ユーザーの笑顔を想像できるか。小難しいことを考える前に、一度振り返ってみてもいいかもしれません。