以前は、「インタラクションデザイナー」と言えば、Walt Disneyアニメーションスタジオで働く人を連想したことでしょう。しかし現在では、モバイルデバイスやタッチスクリーン、インタラクティブシステムの台頭とともに、インタラクションデザイナーはほとんどすべての制作スタジオやデジタル事務所、大手ITまたはソフトウェア会社に在籍しています。
インタラクションデザイナーは、ユーザーが製品のインターフェースに触れる時に起こることを取り扱っているのです。これは未だに比較的新しい分野となっており、UXデザインやグラフィックスデザイン、ソフトウェアエンジニアリング、そして心理学のような多くの他の分野に及んでいます。絶えず定義と再定義が繰り返されているすべての新しい規律と同様に、インタラクションデザイナーの範囲と必須となる知識は、いつも正確かつ明瞭に表現されるとは限りません。
本記事では、インタラクションデザイナーが何をしていて、誰であるかといった議論は飛ばします。代わりに、デジタル製品の世界で成功するためのカギとなる、インタラクションデザインの3つの目的に注目したいと思います。
1. ユーザーファーストであること
おそらく、コンピューターの分野で私が30年以上にわたり見てきた、最も致命的な愚案は、エンジニアやデザイナー、そしてマーケティングに携わる人たちが、自分たちのオーディエンスに対して何が役に立つかを「ただ知っている」という考え方である。-Brenda Laurel
インタラクションデザインは、目的ありきのデザインです。つまり、ユーザーが何かを購入したり、どこかへ行ったり、誰かと連絡を取ったりするといった1つの目的、または複数の目的を達成するためにインターフェースとやり取りを行うのです。インタラクションデザインの最終的な目的は、これらの目的に役立つようにデザインするということです。
インタラクションデザイナーは、ユーザーリサーチを行う際に常に必要とされるわけではありません。しかし、ユーザーリサーチから得られた洞察に基づいてデザインを行うことができる必要があります。優れたインタラクションデザインとは、ユーザーの目的が何かを特定し、これらの目的の裏にある感情的および心理的な動機を理解し、これらの目的の周りにある外部の状況を認識し、そしてこれらの目的の達成を妨げるおそれがある障害を予測することなのです。
実践方法
上記のBrenda Laurel氏の意見から、私たちは全てのインタラクションデザイナーが必然的にユーザーを知り、かつユーザーの立場に立って物事を考えることを、単純に想定することはできないということがわかります。そのようなものとして、最近の多くのインタラクションデザイナーはユーザーの気持ちを考え、焦点を洗練させ、かつ製品に人間味を与えるのに役立つような、ユーザーのペルソナ、シナリオ、そしてエクスペリエンスマップを利用しています。
–ペルソナは、製品を利用する可能性がある異なるユーザータイプの現実的な表象となっています。これらはユーザーリサーチに基づいて作成され、リサーチの洞察と同程度の効果があります。
–シナリオは、ユーザーが製品をどのように、そしてなぜ使用しているかを説明したものです。これらのシナリオは、ユーザーの目的や期待の概要を説明しつつ、製品が使用される様々な状況や工程、コンテキストの概略を述べています。
–エクスペリエンスマップは、上記の2つの方法をはるかに複雑なものにした拡大版となっています。これは、様々なデバイスやプラットフォーム、チャネルにまたがってデジタル製品を使用するという、相互につながった本質を考慮することによって、ユーザーの軌跡を視覚化したモデルです。
しかし、デザイン工程の最も初歩の段階と第1段階の間には、溝がある場合があります。多くのクライアントは、単純に自分のユーザーの全体像を有しておらず、さらに悪いことには、ユーザーが誰かということについて手掛かりさえつかめていないクライアントもいます。この溝を埋めるために、ThoughtBotのJeff Smith氏はエスノグラフィックリサーチを含むデザインの「フェーズ0」を導入しました。
エスノグラフィーと聞くと、大部分の人々は草のスカートを着た民族の中に長時間滞在するという場面を思い浮かべると思います (私はこのイメージをエスノグラフィーの修士号を取得した経験から知りました)。先住民の中で暮らすということは非常に重要なアイデアですが、この方法はデザインというコンテキストに応用される場合、適した形式で採用されるのです。
以下の点を考えてみてください。デジタル製品を構築している場合、皆さんの「民族」はこれらの製品を使用する人々で構成されています。皆さんは既に彼らの中で生活していると思います。それなのになぜ皆さんは、潜在的なユーザーに接触するために飛行機に乗って遠く離れた場所へ行かなくていいというメリットを活用しないのでしょうか?デザインリサーチに対してエスノグラフィーを行うことで、皆さんの方法や対象をわずか数時間で明確に定義することができます。
これはむしろ、皆さん自身をデザイナーモードから引き離し、日常生活の環境における「先住民」と観察者の両方になるという中立的なモードになることを意味しています。間違いなく、インタラクションデザイナーはユーザーリサーチャーではないのです。しかし、目的ありきのインタラクションデザインはデザイナーと製品間のやり取りではなく、ユーザーと製品間のやり取りを中心に展開されるのです。そのようなものとして、インタラクションデザイナーはエスノグラフィックな実践をデザイン工程の「フェーズ0」として採用し、ユーザーに一歩近づくことを検討することができます。