クライアントが間違った事を言っている場合、どのようにクライアントへ間違っていることを伝えればよいのでしょうか?
これは昔からありがちな問です。受託案件などで、このようにクライアントや顧客と仕事をしなければならないとき、この質問は間違いなく皆さんの頭をよぎるでしょう。
私も個人的に、クライアントが本当に無意味なものを必要としている状況を何度も経験しました。そして時々、それは私が直接話している人でないこともあります。
例えば、2、3週前、私はこのように言われました。
「… 私の上司がそれはそこがいいと言うので、ここにあるこの棒グラフはここになければなりません。」
これでは、私たちができることはほとんどありません。ちなみに私たちのオフィスに掛かっているポスターの一つにこんなポスターがあります。
編注:ポスターの内容はクライアントとデザイナーのあるある話をマンガにしたもの。クライアントとデザイナーは最初は意気投合して、デザイナーも力作を提出するが、クライアントの様々な要望でぐちゃぐちゃなデザインになってしまうというもの
もちろんこのポスターは極端な例ですが、このような状況はときどき起こります。クライアントを扱う方法を学ぶことは、クライアントとの関係を考える際の重要な構成要素です。
では、どうやってクライアントに彼らが間違っていることを伝えるのでしょうか? これを実践する前に、考慮すべきことが2つあります。
何について間違っているのか?
単純にクライアントが間違っているということ自体、間違っています。
クライアントは何かを要求するとき、その要件は少なくとも3つの要素で成り立っています。
クライアントはそのうちの1、2つについて間違っているかもしれませんが、3つすべてについて間違っていることはほとんどないでしょう。そしてそれが大事なことなのです。
ソフトウェアのデザインや開発における重要なステップは、ユーザーのストーリーを作成することです。(中略)
例えばこんなクライアントのストーリーの例があります:
プロジェクトマネージャーとして、何が私たちの作業を遅らせているかについて把握するために、どれだけの時間が各々の仕事に費やされているのかを調べたい
これは非常に明確な、きちんと構成されたユーザーストーリーです。エンジニアやデザイナーに対して要件を提示しています。
同様の要望を以下のように述べることもできます:
プロジェクトマネージャーとして、何が私たちの作業を遅らせているかについて把握するために、どれだけの時間が各々の仕事に費やされているかを書き留めることを、チームメンバーに依頼したい
これは最終ゴールは同じですが、そこへたどり着く方法は全く異なります。こちらはプロセスを自動化させるものではなく、チームメンバーは報告に多くの時間を無駄にするので、あまり意味をなさないように思われます。
後者の要望を聞いたとき、皆さんは
「これは間違っている、私たちはこのようにするべきではない。私たちはクライアントが間違っているということを、納得させなければいけない!」
と考えるかもしれません。
よって、最初のステップは、クライアントが何を間違っているかを正確に把握することです。この場合、ゴールの到達の仕方になります。ゴール自体に誤りはなく、またペルソナ自身も間違ってはいません(プロジェクトマネージャーはこれを本当に必要としています。)私の経験に基づくと、一般的にクライアントが間違っているのは方法の部分です。
信頼するということ
2つめにに考慮すべきことは、信頼です。
クライアントは皆さんに何かを依頼するとき、自分が間違っているとは考えていません。自分が依頼していることが間違っていることを知っていたなら、もっと別の正しいと思うことを依頼したでしょう。クライアントの考えを変えるようにクライアントを納得したい場合、クライアントが皆さんを信頼している必要があります。
この段階でクライアントにとって最も重要なことは、最終的なゴールです。クライアントは皆さんにそのゴールに到達する方法を提示しており、そしてそれが最良の方法であると信じています。なので、皆さんがその道筋を変えたい場合は、最終目的地が同じであることを確認する必要があります。
皆さんがクライアントの真の要求について理解していることを、クライアントがちゃんと認識しているかという確認に時間をかけてください。ゴールと、それを達成した際の利益、その達成の仕方などについて、皆さんがどのように感じているかを自分の言葉で説明してください。ゴールを理解して、クライアントがそのゴールを目指していることを確認しましょう。
クライアントの希望する結果をシミュレーションする
さて、単純にクライアントのやり方を却下するのはやめましょう。その代わりに、この道筋を採用した場合どのような事が起こるかについてのシミュレーションを提示しましょう。
このアプローチが、クライアントの求めているものにいかに近づいているかを説明し、アプローチの弱点も一緒に説明しましょう(それが間違いと感じるなら、弱点があるはずです)。
覚えておいてもらいたいことは、間違いを犯したいと考えている人はいないということです。計画に欠点がある場合は、隠さずに公表するようにしましょう
そして今こそ、欠点を解決する方法を提示するタイミングです。クライアントに解決策を提示しましょう。その後は、皆さんの専門分野です。クライアントは自分の事業の専門家ですが、皆さんは皆さんの分野、つまりこれらのゴールを達成するためのツールをデザインすることにおいて、専門家なのです。
皆さんの解決策がどう最終的にクライアントの求めているところまで到達するのか、そして同時にそうすることのデメリットなども説明しましょう。皆さんがこのような状況に直面したことがある場合、既に皆さんは貴重な経験を持っているならば、そのことも説明しましょう (しかし、NDAにより、過去のプロジェクトの詳細を解説することが制限されるかもしれません)。
クライアントが皆さんの言うことを信頼する場合、クライアントは失うものは何もなく、むしろ得るものがあると考えることでしょう。クライアントは、皆さんが提案したやり方で遂行するという可能性が高いです。
そして最も重要な部分は、クライアントに彼らが間違っているということを明確に言わないことです。
まとめ
私たちはしばしば「クライアントに間違っていることをどのように指摘すればよいか?」と頭を悩ませてきたことでしょう。ですが、この質問自体が間違っています。これでは短絡的すぎて、クライアントが言っていることの真意を認識することができません。
そのことに気がついたら、クライアントに間違っていることを納得させる必要はないのです。ただ、皆さんが正しいと思うことを納得させるだけで良いのです。クライアントの条件で良いものを選び出し、そしてそれを基に構築しましょう。クライアントが皆さんを信頼していれば、クライアントは皆さんのやり方でやらせてくれることでしょう。