UIを取り除くことで改善するUX

Golden Krishna

Golden Krishnaは『The Best Interface is No Interface』の著者で、サムスンのイノベーションラボやZapposのデザイナー。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Back Pocket Apps: Let’s Reconsider the Wireframe (2015-02-17)

スマホの画面を見たり触ったりせずに、ポケットに入れたままで使えるアプリを作るにはどうすれば良いでしょう? The Best Interface is No Interfaceの著者であるGolden Krishna氏がこの刺激的な新しいUXの議論について、自身の新しい著作をもとに語ります。

Charlesは生活のすべてがスマホの中に入っているように感じています。彼は、日常のちょっとした事をするためにアプリを起動しなければならないことにうんざりしてしまいました。スマホの画面に向かうよりも、人と直接向き合って話をしたいのです。そして、スマホの画面ではなく最新の技術を利用できないか、スマホをポケットからわざわざ取り出さなくても生活が便利にできないだろうか、と考えています。

調査をしたり、過去の事例を見たり、問題となっている事についてインタビューをすることで、UXデザイナーはターゲットとなる顧客層の特有の問題を見つけます。そして、以下の3つのポイントを満たせるよう、画面のスケッチを始めます。

アプリのデザイナーがよく使うサンドボックス

アプリのデザイナーがよく使うサンドボックス

・できる限りスマートなソリューションを生み出す

・個性的なデジタル製品にする

・日常的に役に立つものにする

これは簡単なことではありません。素晴らしいUXについて考えているデザイナーは、画面という制約に縛られ、ユーザーの一般的な行動を考慮しないせいで、ベストな解決方法が見えなくなってしまっているかもしれません。

画面に縛られる苦悩

画面という制約があったとしても、ユニークで新しい体験を生み出す事も可能ではあります。しかし、アプリを画面上で使うには、必然的に多くの動作をしなければいけません。つまり、ポケットやバッグからスマホを取り出してログインし、アプリを探して見つけ、さらにパスワード入力、メニュー、ナビゲーションといったものもクリアしなければならないのです。これでは良いUXは生まれません。

画面上で操作することを前提にしている限り、競合製品と差をつけるUXを生み出すことはできません。たとえ、パララックス・スクロールや、ヘルベチカフォントで目を引く視覚的なデザイン、ナビゲーション用のハンバーガーアイコンなど、至る所で使われている流行の手法を取り入れて、製品を今風のデザインに近づけても、それは難しいでしょう。

僕は君の欲しいものがすべて入っているイカしたハンバーガーマンさ!

画面という制約に縛られている限り、ユーザーに何度もアプリを使ってもらうためには、通知、ブザー、バイブレーションなどのストレスフルなシステムを取り入れざるを得ません。Kleiner Perkins Caufield & Byers (KPCB)は、私たちが1日に平均150回スマホをチェックしていると概算しています。雑誌Timeが行った国際的なアンケートによると、「4人に1人が携帯を30分おきにチェックし、5人に1人は10分おきにチェックしている」そうです。90%の学生が、スマホが振動したり鳴ったりしていないのにそう感じるという症状を経験しています。

新しい見方

上に挙げたものとは違う制約がもう1つあります。スマホがポケットに入っていることです。

moves_app_icon

このアイコンは、ポケットにしまったままでも使えるMovesというアプリで、従来の画像中心のインターフェースとは一線を画するアイデアです。残念ながら今は別のアイコンに変わっていますが、次世代のスマホアプリの在り方を表す象徴的なデザインです。

メッセージ通知や呼び出し音がないアプリを想像してみてください。そのアプリは画面を操作する必要がありません。友だちや家族といる時間や、やらなければならないことを邪魔をせずに、ユーザーを驚かせ、喜ばせるような事をポケットの中でしてくれるのです。このアプリは、スマホという優秀なコンピューターの性質を最大限に活用しています。つまり、30年前から使われているWIMP(ウィンドウ、アイコン、メニュー、ポインティングデバイスの略)を取り入れたグラフィカルなUIに似せたインターフェースではなく、センサーや無線通信といった携帯電話に搭載されている機能を活用するのです。

このユニークな解決方法が、これからのアプリの可能性をより広げています。

キーレスエントリーシステムを専門とするLockitronの創設者たちは、すでに古い考え方を捨てています。The Wall Street Journalが以前に、イギリスの保険会社の調査として、イギリスの成人は平均して「一日に9個の失くし物をするが、その中でもっとも彼らがイライラするのは家の鍵を失くすことだ」という記事を載せました。Lockitronはこの問題の解決に取り組みました。そしてこれをWIREDが「携帯電話でお家の鍵を開けよう」という記事の中で絶賛しています。

そのアイデアは画期的なものでしたが、実際にはそのアプリで鍵を開けるためには特殊な「かんぬき」が必要だったのに加え、端末の画面を使うことを前提としたものだったので、鍵を開けるために毎日面倒な操作を行わなければならず、結局はアプリを使わない従来の方法に比べても、全く利点がありませんでした。具体的には、ユーザーはこんなことをしなければいけなかったのです。

1. アパートのドアまで歩いていく。

2. スマホを取り出す。

3. スマホを起動する。

4. アンロックするために画面をスワイプする。

5. パスコードを入力する。

6. 最後に使っていたアプリを終了する。

7. 最後にいたグループから抜ける。

8. 大量のアイコンの中から使いたいアプリのアイコンを探す。

9. アイコンをタップする。

10. 起動するのを待つ。

11. 鍵を開けるボタンをタップする。

12. 手でアパートのドアを開ける。

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1年後にLockitronのチームは、従来とは異なるアイデアでUXのデザインを一新しました。

彼らは、まずは特殊なかんぬきを変えました。それを廃止し、元からある鍵の構造を利用できるカバーを作ったのです。

さらに素晴らしいのは、画面を使うという前提を変えて、ユーザーがアプリを使用する状況を考慮し、ポケットからスマホを取り出さずに済むようにしたことでした。もちろん、アプリをダウンロードし、インストールする必要はあります。しかし、一度セットアップを済ませてしまえば、スマホはポケットに入れたままで良いのです。

Bluetooth技術を利用することで、第二世代のLockitronアプリは、複雑なスマホの操作をすることなく直接鍵を開けられるようにしたのです。おかげで、ユーザーはドアの前に来たとき、立ち止まったりタップしたりせずにスムーズに部屋に出入りすることができるようになったのです。このアプリには中毒性があるわけではありません。ただ、鍵を開ける時に必要な動作をよりシンプルにすることで、顧客に満足感を与えたのです。新しくなったアプリで必要な動作は以下のとおりです。

1. アパートのドアまで歩いていく。

2. 手でアパートのドアを開ける。

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この第二世代のLockitronはクラウド投資サイトのKickstarterで潜在顧客から2200万ドルの投資を得ました。素晴らしいドアロックアプリと言えるでしょう。

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次のステップ

「画面を使わない」という方法がすべての問題に適用できるわけではありませんが、顧客に予想もしなかったような恩恵をもたらす可能性はあります。今度アプリを作るときには、ぜひ「画面の代わりにユーザーの普段の行動を活用する」次の4つのテクニックについて考えてみてください。

ユーザーの典型的行動をまず理解する。

置かれた環境で問題にぶつかった時やタスクを処理している時、ユーザーがどんなふうに行動しているか観察しましょう。このことは、画面の中に制限して考えるのではなく、現実の世界でどのような制限の中で行動しているかに基づいてデザインするのに役立ちます。

どんな部分で問題を解決する手助けができるか探す。

ユーザーの典型的な行動が理解できれば、例えばアパートのドアの前に立った時にする行動のように、もっとシンプルにできそうなことを見つけられるかもしれません。そして、あなたのサービスで問題を解決できるかもしれません。時には、ユーザーの行動の中から複数の部分を組み合わせて判断し、ソリューションを提供しなければいけないかもしれません。例えば、「何曜日」の「何時」に「どこ」にいる、という組み合わせからユーザーが寝ようとしているのだと判断し、そこから8時間後に自動的にアラームが鳴るようにセットする、というようなことです。

ピクセルの枠を超え、スマホの最新技術をうまく利用する

スマホの技術はどんどん進化していくでしょう。デザイナーは最新のスマホにどのようなセンサー技術や無線通信などの装置が組み込まれているか知っておく必要があります。それを始めるのに役立つ資料はこちらです。

身体的経験のユーザビリティパターンに慣れる

AppleやGoogle、Microsoftは、自動ドアやエスカレーター、エレベーターといった現実世界でよく知られたものを、デジタルの世界にも取り入れ普及させました。優れた工業デザインを観察し、ヒントになりそうな動きを探しましょう。

技術的な問題解決のための、枠を超えて考える方法、第二の方法論、発想を変える手法を学ぶために『The Best Interface is No Interface』をお読みになることをお勧めします。

上記の記事は、画面の枠を超えたユーザーエクスペリエンスについて議論する、先見の明にあふれた上記の新刊に基づいた独自のものです。