「UX」という言葉が聞こえないクックパッドのサービスデザインとは?

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ふくろうと映画が好きなUX MILKインターン。

インタビューUX MILK編集部、編集スタッフの藤井です。

UXデザインの現場に突撃取材するUX MILKのインタビューコーナー、今回は株式会社クックパッドの倉光さんにお話を聞いてきました! クックパッドではどんなUXデザインを実践しているのかお伺いしたところ、そもそもクックパッドのサービス開発現場では「UX」という用語はあまり聞こえてこないとのこと…! その理由とは…!?

学生の方にもわかりやすくお仕事内容を説明いただいたので、ぜひ初心者の方にも読んでいただきたい内容となっています。それでは、早速インタビューをどうぞ。

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倉光 美和(くらみつ みわ)

福岡県生まれ・デザイナー。家庭用ゲーム業界でゲームのUIデザインを経て、2015年にクックパッドへ入社。現在は主に iOS/Android アプリの開発・改善を手がけるほか、グループ会社のサービスデザイン組織のサポートなども。人間中心設計推進機構認定 人間中心設計専門家。

ゲーム開発から学んだサービスデザイン

―まずは、倉光さんのお仕事について教えて下さい。

今はクックパッドでデザイナーをやっています。現在はiOS / Android アプリのUIデザインを担当していて、ユーザー体験の改善や新機能の開発を行うことが主な仕事です。

―デザイナーというと、PhotoshopやIllustratorでビジュアルを作ったり、UI設計したりというところを思い浮かべたのですが。

私自身はそういうこともやりますし、サービスの情報を設計したりもしますね。クックパッドでは定期的にユーザーインタビューを実施していて、そこに私のようなデザイナーやエンジニアも参加して、実際にユーザーの声を聞きながら、サービスのどういったところに課題を感じているかを知る、といったこともやっています。

そしてそれをもとに、ユーザーに料理を作りたくなってもらえるようなサービスとはどんなものかと、みんなで考えながら試行錯誤しています。

―そういった仕事をやるうえで、何か意識していることはありますか?

そうですね。私は必ずしもユーザーに優しくすることだけが良いUXデザインじゃないと思っています。

元々私はサービスデザインじゃなくてゲーム業界でゲームを開発していたのですが、ゲームってクリアに至るまでの過程を楽しむものなので、ユーザーに試練を与えて、その壁を乗り越えることによって達成感を得てもらうという体験のデザインを、ゲーム開発を通して学んだのです。

その時に、簡単に答えを与えてしまうだけではユーザーの満足感や達成感を得られないなと思ったので、自分の意志で選択できる余地を残しておくことは、今でもサービスの体験の流れを考える時に意識しています。

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―それは例えばクックパッドで言うとどんなところですか?

人気のレシピっていうのは、ものすごく効率的に作れるレシピや手順が簡単なものも多いのですが、ユーザーインタビューなどをやってユーザーの方々を見ていると、簡単なだけではなく、何かに挑戦したいっていう願望もあるのではないかなと感じています。

例えば魚をさばいたことのない人が、「さばき方くらい知っといたほうが良いだろうけど、面倒くさそう…」と思っていたとします。でも近所の人から新鮮なお魚をもらって、すごく美味しそうなレシピを見つけることができれば、過程で魚をさばくことにも挑戦すると思うんです。少し手間がかかったとしても、できた料理が美味しかったら達成感がありますよね。

―そうですね! ちょっと自分がレベルアップしたような感じがします。

そういった、新しい料理に挑戦してみたくなるようなレシピに出会えるようにするにはどうしたら良いか、どういうところでユーザーにその提案をしてあげたらいいかということを、いつも開発のメンバーで考えています。

ゲームのUXとクックパッドのUXの違い

―先ほど、ゲーム開発で学んだUXをクックパッドのサービスでも意識しているというお話がありましたが、ゲームとクックパッドのサービスで違うところもあるのでしょうか

社内でも以前「ゲームのUXとWebサービスのUXってどう違うんだ?」という話になったことがあります。ゲームも、クックパッドのサービスも、何かを達成するための道のりがあって、スタートとゴールがあるというのは同じです。この2つの違うところは、「スタートとゴールが何になるか」ということと、「その間の道のり」です。

ゲームの場合だと、スタートは「プレイ開始」で、ゴールは「ゲームクリア」だと思うのですが、ゲームを買って5分でクリアできちゃったら「えっ!? もう終わり!?」となりますよね。じゃあユーザーはゲームに何を求めているかというと、スタートからゴールまでの間に、大きな岩があるとか道が途切れているとか、ゴールにたどりつくのをジャマする仕掛けがあって、そこをどうやって試行錯誤しながらゴールに辿り着くかという試練です。そうやってトライ&エラーでクリアしていく過程がゲームのUXです。簡単すぎるとつまらないので、あえて試練を与えることが大事なのです。

一方クックパッドは、「今日の晩ご飯どうしよう」とか「この食材、今日中に使い切らなきゃ」というようなユーザーの課題がスタートで、家族がいると仮定すると、食べてくれた家族が喜んでくれることがゴールになります。忙しい生活の中で、ご飯の準備に使える時間っていうのは限られているので、作りたい!と思えるレシピと出会えることというのが、クックパッドのサービスで必要なことだと思っています。

とはいえ、長いスパンで考えたら、ずっと同じものを作り続けても飽きちゃいますよね。ですので、例えばお菓子作りが苦手な人が、「初めてカップケーキ作れた」とか、そこから「シフォンケーキも焼けるようになった」といった風に、ちょっとずつ段階的に成長を実感できるのも大事かなと思っています。レシピ作者さんも、別のユーザーからレシピを使った感想の「つくれぽ(つくりましたフォトレポート)」をもらったりして、自分のレベルアップを実感できるようにしています。

こういった、段階を踏んで成長していくところはゲームと共通する部分で、「作ったことないし、失敗しちゃうかもしんないけど、やってみよう」という気持ちをうまく引き出してあげるところは同じだと思います。

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―ユーザーの気持ちをとても大事にされているのですね。

たしかに、ユーザーさんがレシピを投稿してくれるからこそサービスが成長していくので、ユーザーさんをすごく大事にしようという文化がありますね。例えば、みなさんレシピを投稿してくださっているんですけど、レシピ画面にいろいろな関連サービスへの導線をたくさん組んだりしないようにしています。というのも、レシピ画面はユーザーさんの空間だと私たちは考えているからです。

あとは、スマホみたいに小さい画面でも、レシピを載せる時はレシピ名&レシピ作者さんの名前は一緒に載せるようにしていたり、キッチンレポートっていう機能で、自分のレシピがどれだけ見られているかっていうのも分かるようにしたりしていますね。

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UXという言葉があまり聞こえない職場

それから、実は、クックパッドは「UX」って言葉があまり聞こえない職場なんです。

―それは驚きです。なぜですか?

「UX」という概念自体が悪いということではなくて、「この画面はUXが良くないね」って言ってしまうと、「誰の?」とか「どういう時の?」といったことがあいまいになって、提供したい価値が正確に伝わらないことがあるんですよね。なので、「何でこのUXは悪かったの?」みたいな話はできるだけ具体的にしようとしていて、結果的に「UX」という言葉はあまり使われなくなっています。私は言葉に踊らされないところがすごくいいところだなと思っています。

あと、オフィスにキッチンがあるので、そこで社員自身がユーザーになってご飯を作り、サービスをドッグフーディング(=自社のサービスを社員が日常的に利用すること)できるところも、ユーザーファーストを意識できている理由かなと思います。

―なるほど、それは社員さんなら誰でもユーザーを意識できる機会になりますね。

食の分野なので、1日3回ユーザーになるチャンスが訪れるんですよ。お腹が空きますし(笑)。

やはり実際に料理を作ってみないと分からないことがすごくいっぱいあって。作ってみて、「このボタンの配置だと、手が濡れたままだと押しにくいかな」と気がついたこともありました。画面のUIだけじゃなくて、実際使ってみた体験も自分たち自身で確かめるようにしています。

例えば、自分がすごく疲れて仕事から帰宅した時でこそ、22時から料理を作ってみたりします。世の中の子育て中の主婦・主夫の人って、毎日のようにご飯を作らざるを得ない状況に陥っているわけですよね。料理をする気持ちになれない時もあると思うので、そういった時でもモチベーションが上がってくるサービスになっているかどうか確認しています。

自分でもレシピを書いてみたりもします。私の名刺のレシピ(クックパッドさんの名刺にはそれぞれ違う料理の写真とレシピが載っています)、自分で書いたものなのですが、この前、初の「つくれぽ」をもらいまして。「私の作ったレシピでも、誰かの食卓を彩る事ができたんだ!」と思ったら、「料理ってすごい」って思って。こういう気持ちを、サービスを作る上で大事にしたいなと思いますね。

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まとめ

クックパッドさんの徹底したユーザーファーストの取り組みのお話、いかがでしたでしょうか? 本当にユーザーさんのことを大切にしているのが伝わってきて、オシャレでアットホームなオフィス環境も相まって、ほっこりした気持ちになりました!

社内ではUXという言葉ではなく、料理の体験において具体的に言語化する点も、真摯にユーザーと向き合っているからこそだと感じました。

倉光さん、貴重なお話ありがとうございました!

クックパッドさんの開発におけるデザイナーの取り組み事例などはクックパッド開発者ブログなどで随時公開中です。

また、現在UIデザイナーを積極採用中とのことですので、詳しくは採用情報をご覧ください。