スマートウォッチって便利? 着用してみて気づいた6つのイケてないUX

三瓶 亮

UX MILK編集長/プロデューサー。ガラケーの時代から様々な形でモバイルコンテンツ制作に関わる。パンクロックとゲームが好き。[Facebook]。

スマートウォッチといえばまず一般的に思い浮かぶのがAppleのスマートウォッチ、Apple Watchです。Apple Watchが世に出てしばらく経ちましたが、皆様の周りでもちらほら見かけるようになったでしょうか?

かく言う私は現在Pebble Steelというスマートウォッチを毎日付けていますが、「それApple Watch?」とよく聞かれるので、まだまだ世の中には普及していないのだなあと実感する毎日です。

さて、スマートウォッチをつけていると「どう?」「それ便利?」などと目を輝かせて聞かれる事が多いです。しかし、現段階においてその期待に沿えるような良い感想は個人的にはありません。スマートウォッチに対して漠然と「次世代的で便利なもの」という幻想を頂いている方が多いのですが、そこには多くの誤解があるように感じています。

この記事では現段階におけるスマートウォッチの問題点をUXという観点で私なりにまとめてみたいと思います。画面のUIが云々、というよりは、スマートウォッチを着けた際の日常的なインタラクションやビヘイビア等に着目してみます。

1. 両手がふさがってしまう

スマートウォッチを付けてみてまず気になったのが、思った以上に両手を使わなければならないことです。Android Wearはある程度声で操作できますが、それ以外のものは竜頭やボタンを操作して情報を閲覧します。

その際ですが、時計をつけているほうの手は確かにフリーではありますが、ウォッチごとその手首を人質に取られたがごとく、動かすことが出来ず実質使えないので結局両手がふさがっているのと同じなんですね。ごく当たり前の話ながら見落としがちなポイントのような気がします。

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両手に荷物持っている時などはおっくうになります

例えば片手に重い荷物を持っている時に通知を見る際など、まさにウォッチの出番な気がしますが、重い荷物をもった利き腕をわざわざ時計の位置まで上げたいと思うでしょうか? スマホならば片手でさくさくブラウジングできるのに…。無論、スマホをバッグに入れてしまっている方にとっては、多少便利なのかもしれませんが、移動の際にスマホをすぐに取り出せるようになっている方は多いはずです。

※Android Wearは音声認識によるコントロールができるのでこの要件に対して善戦する気がしますが、少なくとも日本の公共の場において、「OK google」と言ってウォッチに肉声で命令するのは死ぬほど恥ずかしいので(経験済み)、大半の場合が上記のようにタッチインターフェースで処理することになると思います。

2. 時計をチラ見してしまう

スマホにも言えることですが、今日(こんにち)ではあらゆるサービスから通知が来ますが、スマホと連携するスマートウォッチにも例外なく全て通知が来ます。ここらへんは本人の設定のさじ加減でもあるのですが、概ねその通知をすぐ確認できるのは便利と言えます。

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どうしてもチラチラ見てしまう

問題はそれを見る私たちのアクションの方です。スマホ通知を随時ウォッチで確認する私の姿は何も知らない人にとって、ただの「時間を気にしている居心地悪そうな人」に見えます。これは実話ですが、初対面の方数人といる時にチラチラウォッチを見てしまっていて「時間大丈夫? なんか次予定あるの?」と気を遣われてしまったことがあります。実際はそのちょっと前に投稿したInstagramの写真にいいね!の通知を確認していただけだったのですが…。

3. 手首から個人情報がダダ漏れ

Android WearやApple Watchは美麗なディスプレイがひとつの売りだったりしますが、これが想像以上に眩しく、目立ちます。機種や設定によっては、意図せずLINEの通知、電話、個人情報が煌々と表示されてしまうこともあり、戸惑いを覚える着用者も多いのではないでしょうか。特にアドレス帳やLINEの表示名を人に見られたくない名前にしている方などは要注意です…。

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やりとりにはくれぐれもご注意を

ちなみに私の使っているPebbleは電子ペーパーディスプレイですのでそこまで光って目立たないものの、通知は問答無用で中身まで表示されるため、注意が必要です。

4. 肝心の時間が見えづらい

3.の画像をもう一度見て頂きたいのですが、Pebbleの場合は通知がきたとき、上に小さく現在の時間が表示されています。

確かに小さい文字とはいえ、表示はされているので、全く確認できないとはいえませんが、例えば移動中などで時間を確認したいとき、この表示ではさすがに見えづらく、通知が邪魔に感じてしまいます。移動しているときや、人混みにいるときなど、落ち着いて盤面を確認できないときなどを想定すると、現在の時間はある一定の大きさで表示されていないと、本末転倒かもしれません。

5. 電池切れはスマホ以上にみじめ

スマートウォッチの最大の感心事の一つとして、電池の持ちがあります。どう使用するかによりますが、カラーで美麗なディスプレイを備えたAndroid WearやApple Watchは平均して1〜2日の持ちかと思います。スマホ以外にも頻繁に充電するデバイスが増えるというのもイケてないですが、それ以上に辛いのがウォッチの場合、電池切れの文鎮と化したデバイスを腕に付け続けることになる点です。電池切れの腕時計ほど無用なアクセサリはありません。電池切れになったウォッチを外し、バッグにしまったことがあるのですが、外出中腕時計を外すという行為はあまりしないせいか、無防備な手首が妙に気になってしまいます。

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しーん…

6. 見たい時に反応しない/意図しない時に反応する

Apple Watchは盤面が常時表示されず、手首をクイッとひねり、時間を見る動作によってはじめて盤面が表示されます(設定で省電力モードにすると、随時時計が表示されるモードもあります)。またAndroid Wearも設定で常時表示できるものの、バッテリ消費の都合などでApple Watchと同様の設定にする場合があります。時間を見たい時に手首をひねり、そのタイミングで反応するUIというのは一見合理的ですが、果たして私たちは時間を確認する時に毎回手首を上げたり、大げさにひねったりするでしょうか? 常時点灯されていないデバイスを着けていて気付かされるのは、私たちは時間を見る時に必ずしもそれらしいアクションをしないということです。

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この体制のまま動かずに時計を見ることも多い

逆に、何気ない動作で反応してしまう場合があります。意図しない時に反応され、画面点灯されると案外気が散るものです。

考察:スマートウォッチはどうあるべきか?

散々批判ばかりしてきましたが、つまるところ、スマートウォッチはどうあるべきなのでしょうか?

ウェアラブルを考えるとき、私達はつい新しい動作やインタラクションに目が行きがちです。私自身も、スマートウォッチを最初に知った時、腕にデバイスを固定することで、どういった新しいインタラクションがあるのだろうとワクワクしたものでした。ところがいざ着けてみると、デバイスによって慣れない動作を強いられている自分に気づきます。大げさな言い方をすると、操り人形の糸でも巻きつけられているような気分になります。

ウェアラブルデバイスのデザインは、今まで以上にユーザーの動作に寄り添った考え方が必要です。ユーザーの日常的な動作を邪魔しない、インタラクションを模索せねばなりません。

特に時計の場合、既に古くから根付いている時計の歴史や文化的背景も併せて考慮しなければならないと思います。それはファッション的な観点であったり、生活のツールとしての実用的な部分であったりですが、時計そのもののアイデンティティとはなんであったか、もう一度考えて見る必要があります。

通知や他の機能で現在の時間が見えない・あるいは小さく表示されて見えづらいスマートウォッチを見ていると、本末転倒な気がしてきます。もちろんスマートフォンでも同じような議論がなされていたこともありましたが、例えば携帯電話の電話の機能がLINEなどに取って代わられても、他者とコミュニケーションを取る、という主目的は失われていません。

そう考えると、スマートウォッチにおいては、時間を確認すること以外の機能を入れること=イノベーティブであるかどうかは少し疑わしくなってきます。例えば現代において時間を確認するという動作が古くなっているならば考えられるかもしれませんが、時計の文化は今も昔もさほど変わっていないように思えます。

最近では盤面は極力普通の時計のままに、FOSSILのQ Non-Displayのようにスマートフォンの通知のみを光や振動で伝えたり、Withingsのように心拍を測ったりすることのできるものも出てきました。スマートウォッチというと、スクリーンありきで語られがちですが、必ずしも画面上で何かをすることばかりではないのかもしれません。

スマートウォッチを着けていての一番の気付きは、時計は決して、我々の生活におけるメインディスプレイにはならないということです。ですので、スマホや他のデバイスで使うようなコンテンツを時計の盤面に載せてもほぼ意味のないことです。

外出先でユーザーが知りたい情報とその優先度などを整理して、デザインに落としこむことが必要で、そこはまさにUXデザインが試される領域だと思います。

まとめ

本記事はあくまで現状のデバイスにおける考察です。今後技術的な制約が解消されていくに連れて、より自然なインタラクションを実現するデバイスも登場するかもしれません。各社改善を重ねて、どういったことが可能となっていくのか、私も引き続きウォッチングしていきたいと思います。

発行:2015/10/9、追記更新:2016/06/13