リモートワークにありがちな5つの落とし穴

Jim Kalbach

Kalbach氏は、コラボレーティブ・ブレインストーミング・プラットフォームであるMuralのカスタマーサクセス部門長です。

この記事はUXPinからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

When Remote Design Fails: 5 Mistakes to Avoid

リモート(遠隔)での共同作業は難しいものです。リモートワークに携わるほとんどの人が、なんらかの理由で困難を感じています。

チームが物理的に分散されたとき、クリエイティブな仕事は特に不利な状況に置かれます。私たちの仕事はビジュアル的な側面が大きく、グループでの作業も多く発生します。多くのデザイナーにとって、クリエイティブワークをリモートで進めることなど想像できないはずです。

しかしリサーチによると、実際にはリモートでのデザイン作業はよくあることだということがわかりました。調査をしたデザイナー275人のうちの3分の2の人が、80%かそれ以上のプロジェクトにおいてリモート環境に取り組んだと回答しました。

そんな中、50%のデザイナーがリモートワークを行うと仕事のクオリティが下がると感じていることもわかりました。これは大きな問題です。デザイナーがリモート環境下において生産的かつ効果的に仕事をすることを期待されているとすれば、新しいプロセスやツールが必要となっているのは明白です。

しかし、諦めてはいけません。実はほんの少しの工夫と計画により、リモートチームと共に効果的にデザインを続けることが可能なのです。

今回は私たちがMuralが、世界中のリモートデザイナーと会話し、彼らを観察することから発見した、リモートワークにおけるいくつかの落とし穴をご紹介します。

リモートワークにおける落とし穴

1. 準備が不足している

単純なようですが、リモートワークを進めるに当たっての計画が存分に足りていないことは多くあります。

主に、作業を小さなステップに分解し、それぞれに時間制限を設定することをオススメします。私達Muralは従業員数が30名で、全員が完全なリモートワークを採用していますが、1時間の作業が2~5分単位の作業へと分解できることに気づきました。

どんなリモートでの協業作業でも、詳細な指示書を用意すべきです。全員にスクリーンを見てほしいなら、そうはっきり伝え、また繰り返してみせるべきです、何かを共有フォルダに追加してほしいなら、その場所とファイル名の付け方についても詳細に伝え、正確にコミュニケーションをとって下さい。

例えば、IBMのデザインフェローであるDoug Powell氏はオンラインセミナーにて、IBMで働く人々が、彼が呼ぶところの「マイクロタイムボックス管理」をどのように行っているかを示しています。彼らは、数分で終わるような短く瞬発的な作業を行うため素早く動きます。そうすることで、チームは参加者の注意を最大限に集めながら、作業を完了するのです。

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つまり、リモートでのデザイン作業はより多くの規律と厳密さを要するということです。最初は仕事が増えるような気がするかもしれませんが、効率的な作業セッションを行うことは、長い目で見れば時間の節約となるのです。

2. 進行役がオフラインと同じように仕事が進行すると思い込んでいる

オフラインで完全に問題なく機能するテクニックも、リモート環境で同じようにうまくいくとは限りません。

例えば、ブレイクアウトグループ(本題とは別に特定の議論をするために少人数の分科会)はデザインスプリントアイディエーション・セッションにおいて必要不可欠ですが、もっぱら音声のチャンネルが一つしかないせいで、オンラインでのリアルタイムセッションではうまく機能しない傾向にあります。他の誰もが聞いていないのに、グループ同士のコミュニケーションをとれるはずがないですよね。

そのため、リモートワークの際は、ブレイクアウトグループの代わりに交代で作業を行って下さい。まずそれぞれの人員に一人で仕事をさせ(もちろん、限られた時間内で)、その後グループに指示をさせるのです。

つまり、オフラインで考えられたデザインテクニックをオンラインで有効にするには、いくらかの工夫が必要なのです。

例えば私たちは、Lean UXの著者であるJeff Gothelf氏と連携し、彼のワークショップをリモート環境に置き換える試みをしました。ビジュアルコラボレーションプラットフォームである私達のアプリ「Mural」を用いて、Lean UXの手法を学べるセッションをいくつか開催しました。

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リモートUXワークショップを指導するGothelf氏

上述の準備を周到にすること以外で私達が学んだのは、Gothelf氏の講座の流れを調整しなければならなかったということです。そこで、以下に挙げるポイントを実践することをおすすめします。

1. ブレイクアウトグループは個人作業→グループディスカッションという流れに変えましょう。

2. 全員が参加できるよう、一人ずつ順番に発言させましょう。これにより、リモートでの会話において率直な意見を述べたり、割り込んだりする難しさに対処します。

3. ディスカッションをリードする人を指名して、会話が途絶えないようにし、気まずい沈黙や、次に誰が話すのか困惑することを避けます。書記やタイムキーパーなど、他の役割についても明確にしましょう。

4. 長時間の作業中はBGMを流すようにします。リモートセッション中は、10分間の静寂も非常に長く感じられるでしょう。作業の終わりに音量を下げ、時間がきたことをグループに知らせましょう。

3. チームがアナログな情報をデジタルで共有しない

チームで情報共有をする際、紙にスケッチしたり、ホワイトボードの前に肩を並べて立つのが一番です。しかし、オフィスの壁に貼られた付箋やスクリーンショットは、その場にいない人にとっては全くの無意味なものとなってしまいます。

リモートチームのメンバーは、物理的なフォーマットの情報からは事実上締め出されてしまいます。もちろん、写真をとったり、ウェブカメラをホワイトボードに向けたりして見せることはできますが、満足感は得られず、しかもそのやり取りが終わってしまえば情報は失われてしまいます。

これに対するアドバイスは明確です。その場で情報をデジタル化しましょう。紙とペンで作業を続けることは可能ですが、作成中に、物理的な成果物をデジタルにどう変換するか計画を立てましょう。

情報を保管するオンラインツールや場所について、事前に合意しておくと役に立ちます。ですが、そもそも初めからデジタルで作業することも検討しましょう。私たちは、ブエノスアイレスからサンフランシスコまで、4つのタイムゾーンにわたって分布しているチームです。チームミーティングやデザインスタジオ、そしてブレインストーミングのセッションは、ほぼオンラインのみで行われます。

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いくつかのMuralチームのメンバーは世界中に拠点を置いています。

例えば、デザインに対する意思決定を大陸をまたいで集約するには、以下のプロセスが有用であるとわかりました。

  • プロジェクトの初めには、Mural内のホワイトボードで共同作業をします(私たちの製品のドッグフーディングでもあります)
  • アイディアを批評し、実現かつ存続可能だと考えられる構想を分離し始めます。
  • 見込みのあるアイディアを、UXPinのローファイプロトタイプの中でイテレーション開発します。これはその後、プラットフォーム内でテストすることが可能です。追加で共同で行ったイテレーションは全て、アニメーション付きのハイファイプロトタイプを利用する段階までずっとプラットフォームの中に残ります。

4. 共働者とのコミュニケーション不足

1970年代の研究によると、距離が遠くなるほどコミュニケーションが減ります。見えないものは忘れられていくのです。では、どのようにして自分の存在を他のメンバーに認識してもらえばよいのでしょうか。

コツは、自分自身と作業内容を透明化することです。簡単な方法を以下に挙げます。

  • 週ごとのデザインレビューの予定を立てましょう。GoogleハングアウトやSkypeを利用して開催し、廊下で自然と行われるような会話の不足分を埋め合わせましょう。
  • 作業内容を毎日投稿しましょう。全てのデザイン作業をwikiやブログ、または共有スペースに毎日アップして下さい。例えばAutodeskは、共有のプロダクトポータルを作成し、プロジェクトに関する全ての情報とデザインリソースを関連付けます。

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  • 日常的にログインすることを心がけましょう。月に1回程度は、個々のチームメイトとよりカジュアルな会話をするよう計画して下さい。そうすることで、お互いを知り、仕事以外のことについて話す時間を持つことができます。

では、Hanno(完全なリモートワークを行うデザイン事務所)が、どのようにしてその作業プロセスに適応したのかを見てみましょう。

Hannoのチームは3つの大陸に分布しており、世界中にクライアントがいます。チームメンバー間でスムーズに仕事の引継ぎをするため、彼らはPPPドキュメント(Plan=計画、Progress=進捗、Problem=課題)というものをつくりました。これは、全てのプロジェクトメンバーやステークホルダーが日々の作業を集約するための、効率的なドキュメントです。

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出典:Hanno

一日の終わりに、PPPドキュメントはBasecampの中に格納され、リンクを知っている人なら誰でも見られるよう公開されます。

ワークフローや共同作業の中でこのようなタイプの習慣的な行いを実施することは、透明性やリモートでの交流におけるキーポイントです。繰り返しになりますが、これには多少の教育コストがかかりますが、長い目で見ればやる価値があるのです。

5. チームメンバーがお互いのことを単によくわかっていない

人やチーム、組織によっても変わってきますが、ときには面と向かってメンバーと会う必要があります。1年に1度会えば十分な人もいるかもしれませんし、大きなプロジェクトを始めるときにのみ顔を合わせている人もいます。

リモートでのデザイン作業を成功させるためには、チームはそれぞれの個性とコミュニケーションのスタイルに適応しなければなりません。

例えば、Scott Berkun氏は『A Year Without Pants』にて、完全なリモートワークを採用しているAutomatticで働いていた時代について述べています。本社自体は存在しないものの、組織全体で1年に1度の社員旅行を実施しているそうです。

Berkun氏のような境遇はそこまで珍しいものでもなく、BufferやUpworthyなどの企業も、完全なリモートワークを行っている125社に含まれているのです。

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Bufferの社員が2015年の社員旅行について協議している様子(出典:Buffer)

直接会うことは、強い人間関係を築くのに大いに役立ちます。皮肉めいた笑顔の絵文字をどのように解釈するか、という小さなことですら、より良い共同作業のための間接的な助けになるのです。

リモートでのデザイン作業はいつでも100%機能するわけではありません。直接交流することは、無駄な繰り返しのやりとりを減らすための投資であるととらえましょう。

まとめ

今日(こんにち)のデザイナーにとって、同僚が自分のデスクの隣に居てくれるという保証はありません。リモートでのデザイン作業の目指すべきところは、同僚などが同じ部屋にいないときでも、クリエイティブな勢いを変わらず維持することなのです。

気後れはしないで下さい。リモートワークに移行することは、頭を突き合わせるビジュアルワークの時代の終わりを意味しているわけではありません。むしろ、古い慣例を新しく素晴らしい方法に置き換える機会なのです。リモートデザインを受け入れてみてみましょう。

今回のまとめ

  • 成り行きに任せたり、もしくは即興でのやりとりをしないようにする
  • リモート環境に適するように、従来の手段やテクニックを調節する
  • 情報をデジタルに保存し、また共有する方法について事前に計画する。できる限り、最初からデジタルで作成し、交流を行う
  • 頻繁にコミュニケーションをとる。やりすぎに思えるかもしれないが、誤解や指示の見逃しを防ぐ
  • チームメイトをよく知る。そしてできるだけ信頼を築き、楽しむ

最後に、組織にはそれぞれ違いがあることを認識しましょう。ある組織ではうまくいくことも、自分のところではそうはいかないかもしれません。一番うまく機能するものを見つけましょう。様々な取り組みを試してみて下さい。

リモートでのデザイン作業を、成り行き任せにしてはいけません。



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2017/12/05(火)
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