UXデザイナーになるということは、ある種の宗教に入信するようなものです。
UXデザイナーの仕事の一つは、他者にあなたの信念を受け入れさせることです。まるで聖職者の鑑のように、UXデザイナーは他者がUXの担い手になることを望みます。
ユーザー体験のような抽象的な概念について理解を得るには説明が必要です。そして、共有したい信念について共通の経験がない限り説明は失敗するでしょう。
「ユーザー体験が何であるかを説明することはできません。できるのは、示すことのみです。」
それでは、良い言葉を広めるためのいくつかの有効な戦略について深堀してみましょう。
最初の信者を構築する
The Guide to UX Leadershipで説明したように、エバンジェリストは自分の声が届く範囲までしか影響を及ぼすことができません。
もし組織を拡大したいと考えているなら、信者の面倒を見るあなたの弟子たちのグループを作らなければなりません。
最初のステップは、自分の信者を得ることです。
もちろん、お金で雇うこともできるでしょう。しかし、必要なのは目的とお金の2つです。
以下は、私が経験したステップです。
1. 明瞭さ
影響力を持つ人は自身の目的について明瞭に理解していなければなりません。
HP Enterpriseでは、以下のメッセージを信条にしています。
「顧客が何に価値を置いているかを組織に理解させることで、戦略チームは顧客満足度を向上させ、顧客解約率を減らし、売上を増加させるでしょう」
2. ビジョン
ビジョンはあなたが望む結果についてのストーリーです。
ゴールを達成したときの組織はどのようになっているでしょうか? 顧客の生活はどのように影響を受けるでしょうか?
あなたのストーリーは劇的で、感情的で、魅力的でなければなりません。人々を惹きつけ取り込む必要があります。そして、人々はストーリーのコアメッセージを心に留めながらも、ストーリーを自分自身のものにする必要があります。
Rackspace社で戦略を立案をしていたとき、我々は同社からサポートを得る必要がありました。そこで私たちは同社の価値観に忠実なストーリーを新たに作り、それを元にしたビデオプロトタイプをKeynoteで作りました。これは価値の提案であり、ストーリーは実現可能なものをベースにしています。そして、戦略が従業員とユーザーの生活をどのように改善するかを示しました。
もっと簡単なアプローチをとることもできます。あなたの製品をより小さな単位(機能など)に分解してみてください。それができたら小さな単位ごとに、組織と顧客にインパクトを与えるために新しいビジョンを創り上げましょう。社内でサポートが得られたら、ビジョンを評価してもらってください。こっそり外部の人にも評価してもらうのも良いでしょう。
そして、成功の記録を残しましょう。意思決定者か、意思決定者に影響のある人物にたどり着くまで、ゆっくりと成功を積み重ねましょう。
3. 能力
これが「行動するリーダー」が重要である理由です。
ほとんどの組織で、「Bias Towards Action(行動志向)」は一般的なリフレーミングです。しかし行動とはなんでしょう。彼らは「自分たちが見たり、利用できるもの」を作って欲しいのです。
スタンフォード大学dスクールにおけるデザイン思考ガイドブック「Design Thinking Bootcamp Bootleg」に記載されているマインドセットのひとつ。議論するよりも、まず行動をしてみることが大事であるとしている。
例えば、私が10年前にスタートアップでマネージャーだったとき、経営陣はIPOや買収に向けて企業を成長させることに熱心でした。彼らにとって大きな障害のひとつは、技術的負債に苦しめられているシステムでした。そのため、その企業は技術的負債をリファクタリングしようとしていました。
彼らはすぐに実現可能なアイデアに最も反応を示していたので、私は実現可能な2つの施策を考えました。
- 私はCTOと親密に仕事をしていて、どのようにすれば技術チームと一緒に最高の仕事ができるか話していました。私たちは、UX戦略がすぐに実行可能であることを示すために、実行のためのアジャイル計画を作成しました。
- 新しい営業チームは、新たなマーケットにとって価値提案が正しいことを確かめるために熱心でした。そこで私はUX戦略がいかに製品を差別化するのかについて営業チームに説明し、彼らは顧客がセグメント毎にどのような反応をするか明らかにするのを助けてくれました。
このように、技術チームと営業チームという2つの最も影響のあるグループからの支援を勝ち取りました。なぜなら両者は歴史的に幹部パートナーと密接であったため、統合された計画を提案することで、私はこれまでにないくらい迅速に予算を受け取ることができました。
4. 感情移入
私たちデザイナーはユーザーに多くの時間を払うあまり、デザインを実現するためにはチームが必要であるということを時々忘れてしまいます。
協力者の立場になって考えることができますか?
協力者を観察し、マネージャーが彼らを評価する基準を知りましょう。将来のためにデザインするときは、彼らが必要としていることを考慮しましょう。
例えば、Rackspace社でのビジョンに関する仕事では、プロトタイプビデオでRackspaceの従業員を主要なキャラクターにしました。私たちはそのキャラクターに組織の価値観を体現させ、顧客を喜ばせたときに組織も利益を得ることができるということを示しました。
メッセージを他の人たちに広げる
支援してくれるリーダーの数だけあなたは力を持つことになります。それは声を上げる人から人を育てる人に変わること、ステージの上に立つ人からステージの横にいる人になることを意味します。
1. 他の人の声に力をもたせましょう
あなたの弟子たちが自分たちの名を上げ、メッセージを広げることができるプラットフォームを創り上げて利用しましょう。ランチミーティングのような機会を用意し、弟子たちがUXについて他の人に説明できるような場を設定しましょう。
2. 他の人々に光を照らす
周りの人たちの成功を大きな声で宣伝しましょう。自分自身の意見にフォーカスしてはいけません。
あなたが成功をしたときは、特定の利益(カスタマーサポートの件数が30%削減されたなど)について説明してください。
施策の実行に誰が貢献したのか説明しましょう。特にその人がデザインチームの外にいる人である場合はなおさらです。賞賛は譲りましょう。そうすれば、これから何度も助けてくれるようになるでしょう。
3. プレイヤーからコーチへの変身
メンタリングを始めましょう。メンタリングができなければ教育をしましょう。
デザイナーたちに専門分野のトピックだけでなく、UXを広めるための方法を教えましょう。自分自身の苦労しながら成功した話をして、彼らがゼロから始めることのないようにしましょう。
デザイナーでない人と一緒に仕事をするときは、知識と時間を惜しまないようにしましょう。
関連業界のケーススタディ(UberやGoogleといった定番だけではなく)をプレゼンしましょう。たとえば、MS Office 2007の立ち上げのときは、UXチームのブログを徹底的に追って、デザイン重視の会社の教訓を他の人と分かち合いました。
また、ビジネス書から得たデザインの見識を共有しましょう。Fast Company、GartnerそしてHarvard Business Reviewの資料を共有すること、単にUXに関する書籍だけを共有するよりもはるかに説得力があります。
結論
支援者が5人から始まるか0人から始まるかに関わらず、あなたの成功に直接的に影響を与えるのは支援者を構築する能力と弟子を育てる能力です。
あなたの声を最も効果的に届けることができる計画を立てましょう。そして、あなたの計画をより効果的になるように変えていきましょう。
ここで必要なスキルは共感、コミュニケーション、戦略、そして強い自己感覚です。
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