ユニバーサルデザインとは? 導入のためのビギナーズガイド

UX Booth Editorial Team

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Complete Beginner’s Guide to Universal Design(抜粋)

私たちはアプリケーションをデザインする際、誰でも直感的に使えるものにしたいと考えます。しかし「誰でも」というのは一体誰のことを指すのでしょうか? 良いデザインは、すべての年齢、どんな技術レベルの人にとっても便利なものです。一方で、真のユニバーサルデザインとは様々な身体能力を持つユーザーが利用可能なものです。これを実現するために、デザイナーとデベロッパーは黄斑変性症(眼疾患)、パーキンソン病(運動性疾患)、てんかん(神経疾患)などを考慮する必要があると言えます。

UXにおいてよく言われる「人々のニーズを考慮する」ことは、言うだけなら簡単です。多くのデザイナーはユーザーのニーズを把握するためのペルソナを利用しますが、障がいのあるユーザーを考慮に入れることは稀です。そこで、ユニバーサルデザインの出番です。ユニバーサルデザインは、年齢や能力(精神的身体的)が私たちの体験に大きな影響を与えることを再認識させてくれます。障がいのあるユーザーがデバイスを音声操作したり、デスクトップ画面の拡大機能を使ったり、何らかの障がいに対する支援技術を利用するにせよ、デザイナーは彼らのニーズやユーザー体験を向上させるにはどうしたら良いかをよく考えなくてはなりません。

このビギナーズガイドではユニバーサルデザインを実践しているデザイナーが活用している手法を検証しながら、ユニバーサルデザインの起源や、その親戚にあたるアクセシビリティについても説明していきます。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインは「心遣いの集まり」とも言え、ユーザーの適応努力や特別なデザインの必要がなく、プロダクト、サービス、環境を誰にとっても最大限に便利にするものです。

Usability First siteは以下のように説明しています。

アクセシブルデザインとは身体的、精神的、環境的にパフォーマンスを制限されている人のニーズをカバーしたデザインのことです。ユニバーサルデザインは一般的なデザインの原理を拡大し、すべての年齢層や能力の人々を包括しながらも一般的な仕様を保つことを狙いとしています。そのため特定の障がいのニーズをすべてカバーすることは難しいと言えます。

ユニバーサルデザインはより良いユーザビリティ、より良い体験、そして負担の少ない方向性を目指し、プロダクトとサービスをより使いやすくします。一般的なニーズや能力を考慮しているだけではありません。ユニバーサルデザインは原理に基づいており、組織のアクセシビリティのレベルをテスト評価するガイドラインが存在します。それはユニバーサルデザインを1つのアイデアからUXの一部にするシステムのようなものです。

そうは言っても、これらに着目しているほとんどの書籍や専門家は、アクセシビリティの観点から語ってはいるものの、アクセシブルデザインとユニバーサルデザインの2つを区別せずに使っていることが多いです。このガイドの中でさえもそうなっているかもしれません。

一般的な方法論

アクセシビリティの指標はユニバーサルデザインの考え方の支柱を与えるだけではありません。ユニバーサルデザインを実践する人は、デザインに関わるすべてのユーザーを内包することに信念を持たなければなりません。ユーザーに対して共感すること、インクルーシビティ(包括性)に向けてすぐに実践できる方法を取ることで、私たちはより良いプロダクトを生み出すことができ、また思慮深い、思いやりのあるデザイナーになれます。ここでは、ユニバーサルデザインの領域を構成する重要な3つの方法論を見ていきます。

アクセシビリティ

「アクセシビリティ」と「ユニバーサルデザイン」は区別されず使われることが多々あります。しかし、対象とする範囲が異なります。アクセシブルデザインは不自由のある人々のニーズにフォーカスしている一方、ユニバーサルデザインはすべての人々のニーズにフォーカスしています。「車いすのリフト」をアクセシブルデザインの一例だとすると、「エレベーター」はその車いすを利用する人や、幼児とその両親、大きな家具を運ぶ人、疲れた大人にとって便利なものであり、ユニバーサルデザインの一例だと言えます。

どのくらい対象がアクセシブルなのかを判断するための一定の基準があります。

アクセシブルコンテンツとは

知覚できる:目で見る、またはスクリーンリーダー(コンピュータの画面情報を音声で読み上げるソフトウェア)やその他の方法を用いて、そこにあることを理解できること

操作できる:機能し、利用できること

理解できる:学ぶことができ、論理的で正しいこと

安定している:コンテンツに対して1つ以上のアクセス方法が存在する。例えばビデオの横の文字や、ボタンの上に表示される代替テキストなど

インクルーシビティ(包括性)

インクルーシビティはユニバーサルデザインと同等に重要な考え方であり、より広範囲の目標が存在します。ときに社会的に除外、無視されるような人々を包括するような場合もあり、ハンディキャップのある人、学習能力に不自由のある人、多種多様な人々、マイノリティを含みます。

例えば、インターネット接続環境が悪いユーザーに向けてインターネット環境(低額料金のインターネット接続環境)を設計することで、高額料金の高速インターネット接続を購入できない人もインターネットを利用できるようにするといった風にです。

UXデザイナーとして、私たちは頻繁に自身がユーザーではないことを再確認するようにしています。その理由は、私たち個人のメンタルモデルや先入観によって、意図せずうちに他者を含まないデザインをしてしまうことを避けるためです。言い換えれば、インクルーシビティは私たちがUXデザインで追求していることの基礎の1つと言えます。

メンタルモデル

ユニバーサルデザインを追求していく上で手助けとなる方法論の1つとして、メンタルモデル(人の物事の捉え方)があります。私たちはユーザーを対象に調査を実施する際、彼らがどのようにふるまうか、何を考えているかを学ぼうとします。また特定の人が、状況やデザインを見るその視点を理解しようとします。基本的なメンタルモデルが知覚とシナリオに重点を置く一方で、私たちは障がいをメンタルモデルの一部として考えることで、そのコンセプトを一歩先へ進めることができます。

言い換えるならば、私たちが、赤色を「止まれ」の標識として認識する人のメンタルモデルに考慮するのと同じように、色盲で赤を認識できないユーザーのメンタルモデルも考慮できるし、すべきなのだと思います。それが彼ら色盲のユーザーの体験であり、シナリオなのです。

多くのデザイナーが直面する難題は、自身のメンタルモデルから抜け出し、ユーザーのメンタルモデルを把握できるようになることです。よって、メンタルモデルを識別する方法を学ぶことは、不自由のあるユーザーに共感し、彼らのためにデザインをする大きな一歩となります。

ユニバーサルデザインのための手法

ユニバーサルデザインに資する手法は、UXインタラクションデザイン、コンテンツ戦略、IA、デベロップメントなどの形をとります。以下は私たちがユニバーサルデザインを意識してデザインをする際に特に役立つと考えている手法例です。

リサーチとインタビュー

リサーチはUXの一領域であり、以前そのことについても書いたのですが、ユニバーサルデザインに関する話で特筆に値します。リサーチは私たちがデザインするものに直接影響を与えます。同じ考え、共通したメンタルモデルを持つ人だけにリサーチを行うと、その特定の視点しか見ることができません。

しかし、ユニバーサルデザイン、とりわけアクセシビリティについて考えると、その問題は更に複雑になります。UXプロジェクトにおけるリサーチのフェーズに入ると、私たちは一般的に、私たちがインタビューしたいユーザーの種類を特定することから開始します。精神や身体的な障がいのことになると、「人の種類」から「障がいの種類」を区別することが重要になってきます。

例えば、生徒や先生のためだけでなく、手を動かすことに障がいを持つ生徒も利用できるアプリケーションをデザインしたい場合、私たちはその障がいを「生徒」というペルソナの中の1つの要素として加えなければなりません。

ユーザーフロー

リサーチが完了したら、ユーザーフローに移ります。ユーザーフローはユーザーとシステム、プロダクトとの関わり方、相互交流のあり方などのコンテキスト(前後関係、背景)を考えるのに適した手法です。ユーザーフローはユーザーのステップ、Webサイトやアプリケーションにおけるユーザー行動や相互交流、さらにはユーザーの一日の生活で起きるユーザー行動を明らかにすることもあります。

時間をかけて、これらユーザーのステップを見て、ユーザーがどのステップにいるのかを考えるとき、ユーザーが何を考えているか、どのように身体を動かしているか、話しているか、スクリーンをタップしているかも同時に考慮します。そうすることで共感の度合いを1つ上げ、ペルソナを想定するだけの場合よりもユーザーの行動をより具現性をもって感じることができるようになります(ペルソナは素晴らしいものではありますが)。明確に定義されたユーザーフローの活用によりコンテキストレベルが追加され、ユニバーサルデザインへと一歩近づきます。

ユーザビリティテスト

UXを実践する者として手持ちの道具箱の中に必ず持ち合わせたい道具が1つあるとするなら、それはユーザビリティテストです。それはUXデザインにおいて私たちが行うことの実験モデルと言えます。ユーザーがシステムを利用している所を観察し、どのようにシステムが彼らに影響を与えているかを知ります。ユーザビリティテストは私たちがどれくらいうまくユニバーサルデザインを実現できたのか、評価するための究極の方法と言えます。

インタビューへの参加者を見つける場合と同様に、適切なテスト参加者を見つけることがユニバーサルデザイン実現に役立つユーザビリティテスト実施の鍵となります。(テスト参加者はターゲットユーザーグループの考え方、年齢、精神的・身体的な能力のタイプを反映している人々)

アクセシビリティレポート

ポジティブな体験を作り出す要素の1つとして、改善点を見い出すことが挙げられます。そこでアクセシビリティレポートの出番です。アクセシビリティレポートはユーザビリティレポートに似ています。Webサイトやアプリケーションにアクセスし、それらを実際に利用して評価し、ギャップ・機会・改善点を発見することを仕事にする人々がアクセシビリティレポートを作成します。

アクセシビリティレポートはWCG Accessibility, Usability, and Inclusion standardsのWebサイトのようにユーザビリティやUXを専門とするプロが作成することもありますし、ユーザビリティテストの結果がレポートになることもあります。アクセシビリティレポートがWebサイトやアプリケーションのアクセシビリティの目標ゴールを設定し、そのゴールの基準に到達する過程を評価できるようにしている限りにおいて、レポートはより良い体験を創造するための価値のあるものとなるでしょう。

コードレビュー

WCGのWebサイトでは「アクセシビリティの評価を実施するのは基本的には専門家とユーザーの2グループです」と説明しています。専門家による評価は、内在するWebテクノロジーがどのようにユーザーとのインタラクションを起こすか理解している専門家が実施する点において重要です。ユーザーによる評価は、ユーザーが自身の能力と自身を支援してくれるテクノロジーに対して一番理解している点で極めて重要なのです。

コードレビューは、前者の専門家による評価に分類されます。可能な限りデザインやコンテンツ設計を通じてアクセシビリティを向上させ、Webサイトはアクセシブルな方法でコーディングするべきです。フロントエンドエンジニアは、セマンティックなHTMLとアクセシブルなJavaScriptを書くことを確実にするためにもアクセシビリティガイドラインを見直す必要があります。デザイン、コンテンツ、デベロップメントが一丸となって協働すれば、すべてのユーザーを包括する盤石のデザインを創りだすことができるでしょう。


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