UXって結局何なんですか? 大学生が専門家に聞いてみた

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

こんにちは! UX MILK編集部見習いの鈴木です。

最近UXという言葉を様々な場所で聞きますが、みなさんはその概念をきちんと理解し、イメージできているでしょうか? かくいう私もUX初心者で、編集長から「UXって何か知ってる?」と聞かれて、「ユーザー体験ですよね!」と元気よく受け売りの和訳を宣言する程度の理解レベルからスタートしております。

私のようにUXという言葉は知っていても、いまいち理解やイメージがしづらくとっつきにくいなと感じている人は結構いるのではないでしょうか。そんな方々の疑問を解決すべく、UXの現場で働いている方に初心者の目線でインタビューしてきました! 今回は株式会社リクルートテクノロジーズの坂田さんに、「UXとは?」という基本的なところや、実際にUXに携わる上で大切にしていることなどを聞いてみました。

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坂田 一倫(さかた かずみち)

1984年生まれ、ブラジル出身。慶応義塾大学 環境情報学部卒。株式会社リクルートテクノロジーズにて、リクルートグループが提供する各種サービスのサービスデザインに従事。楽天株式会社、株式会社コンセントを経て現職。ユーザエクスペリエンス設計担当者が集まるコミュニティ UX Tokyo 主宰。HCD-Net 審査員特別賞受賞。監訳書として『Lean UX-リーン思考によるユーザエクスペリエンス・デザイン(オライリー・ジャパン)』などがある。Twitter 創業者 Evan Williams が立ち上げた Medium の日本代表アンバサダー。NPO 法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)認定 人間中心設計専門家。

-それでは、本日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします。

-まずは、坂田さんのお仕事について教えて下さい。

一言でいうと「主に目に見えないところを設計する仕事」です。リクルートグループが持つサービスをテクノロジーの面で支える、株式会社リクルートテクノロジーズという会社で働いています。今は人材系のサービスでプロジェクトを推進したり、UXを改善したり、そもそも根本からサービスを改善するためのコンセプトや戦略を考え、設計し、実行したりするところを担当しています。

UXデザインは「伝わる仕組み」を考えること

-実際UXってイメージが湧きにくかったりするんですが、どういったもののことを指すのでしょうか?

UXデザインを説明するときは、好意を持っている人へのプレゼントを渡す場面に例えるとわかりやすいと思います。その人の誕生日に何かプレゼントをあげようと思ったとして、まず何をしますか?

-うーん、相手のことを考えますね。何が好きなんだろう、とか。

そうですね、相手の性格や好きなものなどを分析し、何をあげたら喜んでもらえるかを考えてプレゼントを選びますよね。このプレゼントはただの「モノ」ではなく、例えば「好きです」という想いが込められたものです。

そしてそれを素直に渡すのではなく、海が見えるレストランなどの場所やシチュエーションなどの「コト」にもこだわって、より気持ちが伝わるように工夫をするわけです。そしてプレゼントを開けた時の反応を見て、次回に活かしていくんです。

このように人が想いを伝えるための「モノ」と、場所や時間などの「コト」を作り、それに対するフィードバックを得てまた「モノ」と「コト」を改善していく、それ全体がUXデザインです。伝えたつもりになってしまわないことが一番大事で、そうならないための「伝わる仕組み」を考えることがUXデザインなのです。

-すごくわかりやすい! 贈られる人と贈る人、「モノ」、「コト」全部を設計するのがUXデザインなんですね。

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自分の中でものさしを作り、それに対してアンテナを張る

-ユーザーと向き合う機会が多いかと思うのですが、その上で大切にしていることはありますか?

ユーザーと向き合う上で大切にしていることは2つあって、1つが定期的にユーザーと直接会うことです。先月も20~30人くらいにインタビューしてきましたが、わかったつもりにならないためにもなるべく定期的に会うようにしています。

リクルートグループのサービスは結婚や就職・転職、住まいなど人生の決断に関わるものが多く、扱うものの時間軸が非常に長いのが特徴です。なので、実際のユーザーの行動や思考が変動しやすいんです。だからこそ、ユーザーと接近しないとよりよい洞察が得られないので、定量的な分析よりも直接会うことを大切にしています。

-人生の決断に関わるサービスだからこそ、より一層ユーザーの声に寄り添うことが求められているんですね! もう1つは何ですか?

もう1つは、ものさしを持つこと。つまり、自分自身としても色々な体験をすることです。とある課題に対して解決策またはその指針となるアイディアを如何に出せるかが勝負だと思っていて、そこがデザイナーに求められている役割、価値だと考えています。僕は、自分の中でいいものを判断するためのものさしがそのアイディアの質を決めていると思っています。

人は常にアンテナを張っていない限り、優れているモノやコトを感じないことが多いんです。「最近感動した体験はありますか?」と問われた時に、意外と答えられなかったりします。だから、自分自身が何をもって楽しいと思うのか、悲しいと思うのか、不便に思うのかを、身をもって体験することを大切にしています。

-なるほど、自分の中の判断軸を日々の経験の中で磨いていくわけですね。私も意識してみます!

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SFこそUX

-今の仕事をしている中でバイブルとしてきたものはありますか?

僕のバイブルはSF小説で、攻殻機動隊』などが有名ですが、おすすめは日本で一番の鬼才と言われている伊藤計劃さんの作品です。来年映画化される『虐殺器官』は2040年の世界が舞台で、コンタクトにその人が見ている情報が記録されていて、亡くなった人の直前の映像からすぐに犯人が特定されるなど、現実に有り得そうな未来の技術や想像するだけで興奮するような体験にたくさん直面します。

-バイブルがSFとは意外でした! SFって、UXとどう関係してくるんですか?

ドラえもんの「どこでもドア」然り、このようなSFの世界に憧れて実用化を目指して取り組む人がいるほど、SFは我々にとってすごく良いパワーを与えてくれていると思います。SFは必ず誰かに影響とインスピレーションを与えて、その人の指針になります。UXはビジョン、世界観、妄想が非常に大事なので、そういう意味ではSFこそUXです。

よくUXのバイブルとして『誰のためのデザイン? 』が挙がりますよね。確かに良著ではあるんですけど、入り口としてはSFから入ったほうがいいと僕は考えています。「こういう世界観を築きたい」という目標が先にあって、「どう実現するか」の手段で実用書を参考にする。いきなり実用書から読み進めると頭が固くなるので、僕はおすすめしません。

なんのためのUXかを考える

-最後に、初心者へ向けてメッセージをお願いします!

それこそ僕が働き始めた時はUXという言葉はなかったものの、そういった取り組みをすることの重要性というものは理解できていました。実経験への問題意識が先にあり 、後から体系化されていったように思います。でも今は逆で座学や理論に先に触れ、それをそのまま実践しようとして失敗してしまう人が多い印象を受けます。「そもそもなんのためのUXなのか?」をあらためて考える必要があると僕は思っています。

そして、前述のものさしとなるユーザーとのエンパシー(=共感力)を養うために色々な経験をすることが大切です。様々な経験を積み、多くの人とのコミュニケーションに時間を費やしている人はインタビューをしていてもその汲み取り方がスムーズですし、何を良しとするのかという可能性の引き出し方が上手く、相手への共感力が高いんです。そういったエンパシーを磨いていくことがデザイナーにとって大切だと思っています。

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まとめ

「エンパシー」を高めることを大切だというお話をしていただきましたが、実際にお話していても坂田さんの心の豊かさを感じとることができました。エンパシーは日々の経験の中で磨かれるもの。そういった体験を自分の中に意識的に取り入れ、感覚を磨いていきたいですね。

坂田さん、ありがとうございました!


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