UXデザイナーが身につけるべき「質問力」とは?

Jason Grant

JasonはEffective UIのシニアUXデザイナー。カスタマーインサイトやリサーチ結果を製品に落としこんだり、デザインのワークショップを開いたり、UIやユーザビリティテストなどを行っています。

この記事はUX Movementからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

The Art of Questioning as a UX Skill (2015-02-17)

デザインを始めようとすると、チーム内でたくさんの質問を投げかけることになります。チーム内で想定されている課題と、実際の課題が違うことはよくあるからです。

では、どうすれば(本当の解決すべき課題を浮き彫りにできるような)よりよい質問ができるようになるのでしょう? 私はワレン・バーガー氏の著書『A More Beautiful Question』を読んで「質問力」を高めることにしました。

questioning-book

バーガー氏によると、質問することは(誰もがもともと持っている)生まれつきのスキルであり、子供の頃に熟練するものだそうです。子供の頃というのは、誰しもがまだ、世界に対して「メンタルモデル」を形成しておらず、ゆえに全てに対して、あれこれ聞きたがります。ですが、(成長に伴い)標準化された教育を受けることによって、徐々に私たちは好奇心を抑えこむようになってしまうのです。

大人になると、職場で多くの質問をする人は煙たがられます。

逆に聞かれる立場になったときには、質問に答えられないことを恥ずかしいと思ったりもします。ですが、バーガー氏は、質問の答えが分からないことを認めて、逆に質問を投げかけられる能力こそが、よりよいスキルだと述べています。

バーガー氏はイノベーター達を分析した結果、彼らがよく使う、突破口となりうる3種類の質問を発見しました。

3種類の質問:

Why?(なぜ?)

なぜ物事は、そうである必要があるのでしょうか? そうあることが当たり前だと思っているせいで、目の前にある明らかな課題を見落としたりしていませんか? 当たり前という前提で、物事を理解していませんか?

「なぜ」という質問を投げかけるということは、「当たり前」や「思い込み」に挑戦する行為です。「なぜ」で有名な例はエドウィン・ランド氏の息子の質問です。ランド氏の息子は「なんで写真を見るためだけに、(現像やらあれこれ長い時間)待たなければならないの?」とランド氏に質問しました。

ランド氏はその質問の答えとして、ポラロイドカメラを発明しました。

What if...(もしも…?)

異なったアイデアをくっつけたり、常識的な考えに意図的に反してみたり、違った要素を足したり、引いたりしてみると、自分たちの取り組みがより一層面白くなります。

おかしなアイデアほど、実は有益ということがよくあるので、発想に制限はありません。この思考プロセスは「発散的思考(divergent thinking)」と言われることもあります。

Reese's Peanut Butter Cups(米国のピーナッツバター入りチョコレート菓子)も、H.B.リース氏がある日「もしピーナッツバターとチョコレートを一緒にしてみたらどうなるだろうか?」と発想したことで産まれました。

How? (どうやって?)

ここが肝心なところです。解決策を見出し、仮説を検証し、インサイトを得るためにたくさんのテストをします。自分たちのアイデアのどの部分が現実的な答えなのか? いわゆる「プロトタイピング」のタイミングで検証する必要があります。

好例として、Google Glassのラピットプロトタイピングが挙げられます。彼らのチームはいびつながらもなんとか動くプロトタイプをたったの45分で作りあげました。

UXデザインという観点での質問力

さて、よりよい質問のための3つの基本を抑えたところで、実際に何を訊ねればいいのか? どんな常識・前提を(質問によって)打ち破って行けばいいのか?

私がUXデザイナーやストラテジストとしてクライアントのプロジェクトを始めようとするとき、より深い課題認識やインサイトを得る必要性を感じることが数多くあります。当然ですが、課題を深く理解することで、より良い解決策が見いだされます。

次の3つの例は、クライアントがよくおっしゃることですが、質問によってどう改善できるか見ていきましょう。

例1:「我々は既に顧客を十分に理解しているので、ユーザーテストもリサーチも必要ない」

単純に言えば、クライアントはしばしば自分たちと顧客は似ているものだと思い込んでいます。

この思い込みを打破する簡単なテクニックとして、この発言を逆にして質問してみましょう。「私たちは顧客が〜したいことを知っている」を「私たちは顧客が〜したいということを、どうやって知ったのか? そもそも、なぜ彼らはここに来ているのか?」とします。質問を裏返すことで、「3つの質問」の「なぜ」を掘り起こし、思い込みから抜け出すことが出来ます。

あなたのゴールは、事実を基に、確かな知識を持ちいて解決策を導き出すことです。私の経験では、大半のクライアントは「なぜ」を最も見落としてがちです。

例2:「我々の顧客はアプリが必要だと思っているので、あとはそれをあなたにパートナーとしてデザインして欲しい」

前もって決められた解決策に取り掛かる前に、そのチームは「もしも」シナリオを探るべきです。

制限を取り去ることで、現状の思い込みや前提を打破し、今よりももっと効果的な方向性が見出せます。この「もしも」という(前提や常識を覆す)問いは、大手のすでに成功している企業の人々にとっては、恐怖心をあおるようです。

しかし、多くの「常識を覆すことを志向する」スタートアップ企業やベンチャー企業にとっては、一般的な考え方となっています。「イノベーション(革新)」や「ディスラプション(破壊)」という言葉の流行が、その事実を裏付けています。

例3:「これで課題は明確になったので、仕様を書き出して、3ヶ月でβ版を作ろう!」

「もしも」シナリオで有効な解決策(らしきもの)を見つけることができると、なぜかチームというものは、そのひとつの解決策にこだわる傾向があります。

ですが、「もしも」はあくまでも仮説でしかないので、そこにリソースをつぎ込む前に検証が必要です。「どうやって」の段階では、チームは柔軟性を保ちながら、共有できるプロトタイプを作らなければなりません。プロトタイプは安く作れて、すぐに出せるものであるべきです。

リーン・スタートアップの教えは「速く失敗すること」です。賭けに出る前に、自分たちのプランの穴を見つけておきたいですよね。

ビジネスにおける質問力

近頃の大企業は"out of the box thinking(常識にとらわれない考え方)"のようなバズワードを使いますが、そういうところに限って「質問嫌い」であるように思います。効率のよい働き方が求められ、疑問を持つことを悪とするような風潮すら感じさせます。

大規模なソフトウェアデザインでは、リーンの手法を考え方というより、むしろプロセス(方法論)と捉えています。コンセプトから実装までを素早く実現するための手段と捉えており、単に検証サイクルを回すためだけの仕組みとは捉えていません。

いくつもの手法を試し、失敗をたくさん重ねることこそが、リーンの本来の姿です。革新的な成果を産むには、質問を許容できる文化を作り出す事こそが大切です。

UXデザイナーやプロダクトデザイナーは質問する力を身につけるべきです。よい質問はチームの考え方を変え、よりよいアウトプットを生みます。

多少はチーム内を引っ掻き回すことになったとしても、質問をすることによって新しい方向性を見出したり、仲間を動かすことができるはずです。


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