楽天市場が社内でUXデザインを広めるために始めた2つの取り組みとは?

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

楽天市場という巨大なサービスの中ではどうUXデザインに取り組んでいるのでしょうか。今回は最近行われた「楽天チャリティー」のUXデザインの事例と、社内にその取組みをどう共有しているのかを現場のデザイナーさんにお伺いしました。

楽天の中川さん(左)と圓城寺さん(右)

―まずはお二人のお仕事内容を簡単にご説明いただけますか?

圓城寺:私は2つのグループに所属していまして、ひとつは楽天市場の機能のUI改善をやっているUXプランニンググループでマネージャーをしています。グローバルEC標準化グループという、外国の拠点とナレッジをシェアしたり、ガイドラインを作ったりするようなグループにも所属しています。

中川:楽天市場のWebデザインを担当している部署でUXデザイナーをやっています。圓城寺のUXプランニンググループにはUI/UXに携わるディレクターが多いのですが、Webデザインチームは現状私一人です。

―今回は主に中川さんが現場で行っている改善や社内共有の取り組みについてお聞きしたいと思っていますが、中川さんのお仕事についてもう少し具体的にお聞かせください。

中川:私はたとえばスーパーSALEなどのイベントページや、ギフトなどの特集ページのUX改善を担当しています。

イベントページって制作期間も短いですし、次々とリリースしていくものなので、数値的な目標はありつつも、UXデザインの部分が後回しになってしまうことも多く、そこに力を入れていこうとしています。

楽天のイベントページにおけるUXの取り組み

中川:たとえば最近のお仕事では「楽天チャリティー」というサイトがあります。

中川:楽天市場とショップとユーザーを巻き込んで、ユーザーがポイントを寄付したいという意思表明をしてくださった場合に、ショップと楽天市場から同額のポイントを上乗せして、ユーザーの気持ちが3倍になって社会貢献活動に活かされる、という取り組みでした。

去年の12月の1ヶ月が寄付を募る期間だったので、更新している部分もあるのですが。

関係者とのコンセンサスのためのコンセプトシート

中川:このプロジェクトではショップと社会貢献団体、そしてもちろん楽天市場の社員と、多くのステークホルダーがいました。ユーザーとのコミュニケーションももちろんなのですが、それ以上に内部での調整が大変でした。

―何かそれに対してやった施策などはありますか?

中川:たとえば社内だけでも、私の他にCSR、営業、開発などの各チームや役員などさまざまな人を巻き込む必要がありました。きちんとした軸がないとおそらくブレブレになって初期の設計とまったく違うものになってしまうのは目に見えていたので、やりたいのはこういうものです、というコンセプトシートを用意しました。

中川さんが実際に使用したコンセプト資料の一部

中川:一般的には当たり前なところかもしれないんですけど、イベントページみたいな短期のプロジェクトではコンセプトシートを作るようなことすらままならないんですよね。ですが、このプロジェクトではこれがうまく機能してブレないものができました。

―ワイヤーも割とデザインまで落とし込んでありますね。

中川:そうですね。初期段階からイメージを盛り込んだワイヤーを貼り付けておくことで、みんなの頭の中で同じものが思い描けるようにしました。

レジ横募金のイメージで、ユーザーのコンテキストにあった露出を設計

―楽天チャリティーは楽天市場の中でも少し毛色が違うように思いますが、この企画を展開するにあたって意識されたことなどはありますか?

中川:お買い物を楽しむことがコンセプトである楽天市場で、「寄付」というコンテンツの出し方は意識しました。

まず、この楽天チャリティーは、いつものお買い物促進の活動とはまったく別のコンセプトで実施しているということが伝わって欲しいと思っていました。誘導数を上げたい場合、通常だと楽天市場のトップ上部にバナーを出す、みたいな調整をするのですが、プロモーション向けバナーの中に突然チャリティーのバナーが出ていると違和感があります。

―コンテキスト(文脈)が違いますよね。

中川:そうです。あとコンテキストでいうと、もうひとつはユーザーがどのタイミングだったら寄付に前向きになってもらえるか? ということを考えてもトップ上部の露出ではなかったんですよね。ユーザーが寄付するモチベーションになるのって、何を買うか選んでいるときではなくて、決めたり買ったりしたあとですよね。

楽天チャリティーの導線設計

お買い物を目的として訪れたユーザーの行動に寄り添うため、目的の達成に近いコンテキスト(=購入意思がより大きい場所)で露出できるよう設計しました。ちょうどレジ横募金のようなイメージです。

楽天市場のUXデザインにおける取り組み

コンセプトメイクキット

―こうした取り組みは社内で共有されたりフレームワーク化されたりしているんでしょうか?

圓城寺:ようやく最近動き出しているといったところです。たとえば中川のところでいうと、今回チャリティーではこういう考え方でこうやりました、というのは横展開しますよね?

中川:今はまだできているとは言えないんですけど、やり始めているところです。今回のイベントページのような部分を担当するディレクターはたくさんいるのですけれど、ユーザー視点で考えるという点ではなかなか手が回っていないのが現状です。

これにメスを入れようとしていて、プロデューサーとかディレクターなどが使えるフレームワークを社内で作って、こういう手順で考えていこう、というのをようやく社内で導入し始めました。これがコンセプトメイクキットです。

フレームワークの全体像を示した図(クリックで拡大)

―すごい、雑誌のようなクオリティですね!

中川:実際、印刷して本になっています。まだ始まったばかりの取り組みなのですが、特集ページを考える上でのTipsがここに詰まっているようなイメージです。調査はこんな風にするといいよ、など。

特集ページの制作に特化した「オーダー整理」「リサーチ」「Q&A(分析)」「コンセプトメイク」という4つのステップでシートが用意されていて、質問に答えていくことで発散、収束できるように構成されています。UXデザインをやっている方なら、こんな課題があって、その解決のためにこういう手段がある、というのがわかると思うのですが、そもそもどういった切り口でやればいいかわからない方向けにQ&A形式にして答えが導き出せるような作りになっています。

―たとえば、どんな質問があるのでしょうか?

中川:その商品をユーザーがどう使うか、どんなタイミングで関心を持つのかなどですね。あとその方々がどんなライフスタイルなのかなど。

ペルソナ書いて! というよりはペルソナを思い描けるような質問です。表立った誰か、ということよりもその人にどんな課題があって、どんな生活しているかのようなところをとらえられるようにしたいと思っています。

―最初の方はQ&A主体で、最後の「コンセプトメイク」のシートはカスタマージャーニーのようなシートになっていますね。

中川:そうです。これを使って、特集ひとつひとつにおいてもよりユーザーを深く理解して、適切なコンテンツ作りをしていけるような風土にしていければと思っています。

ユーザー体験に対する評価

圓城寺:最近、個人的に変わったかなと思っているのが、KPIの指標の中にNPS(Net Promoter Score)のような指標が入ってきたんです。

編注:Net Promoter Scoreとは、顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向を知るための指標(Wikipediaより)

あれって一般的にはサービスに対してそれをおすすめできるかみたいな指標だと思うんですけど、それをもう少しブレイクダウンした指標ができあがっているんです。これを改善するとこれくらい利益になる、みたいなことが社内で共有されるようになってきたんです。

―UXをどう評価してビジネスに結びつけるかは大きな課題ですよね。

圓城寺:ここ一年くらいの話なんですけどね。この指標が入ることで、今までの指標だと無駄とされていたものもそうでなくなったり、必然的にユーザー体験に寄せた施策を取れる機会も増えていっていると思います。

中川が紹介した事例などもそうですが、こういったUXデザインのような取り組みがやっと始まってきていて、割とやりたいことが形になりやすいタイミングとなってきていますね。

―そういう意味では先ほどのお話でもあった、ひとつの特集からでもそういったユーザー体験を意識していくというのもその姿勢の現れだと思います。

圓城寺:今はUXという言葉が割と一般的に使われるようになってきて、現場の若い人たちがUXデザインやらなきゃいけなくなったときに、いろんなことに直面すると思うんです。楽天にいると、それが同時多発的にバーっと起こっているのが見える感じなんです。新卒1年目にしてそれを取り組まなくちゃいけないような。

だからこそ、中川の横展開の取り組みとかは組織的には非常に大事だし、採用されていると思うんですよね。

―本日はありがとうございました!

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3/30(木)、UX MILK主催で、楽天さんのデザインの取り組みにフィーチャーした特別イベントを開催します。

当日はインタビューに登場した中川さんもご登壇されます。本日より応募受付開始です。ふるってご参加ください。

UX MILK Workstyle 05 feat. Rakuten イベント詳細

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企画制作:UX MILK編集部


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