一流のデザイナーにコミュニケーションスキルが不可欠な理由

Tom Greever

TomはWalmartやT-mobile、Wells Fargoなどをクライアントに持つデザイン会社、BitoviのUXデザイナー。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Great Designers are Great Communicators

デザインについて話すのは簡単なことではありません。デザイナーはステークホルダーに判断の正当性を説明しなければなりませんが、納得させられる力を持ってる人はほとんどいないでしょう。

デザインの決定をわかりやすく説明する能力は、プロジェクトが成功するか否かに密接に関係しています。なぜなら、往々にして一番明確にアイデアを伝えられる人の案が採用されるからです。

実際、一流のデザイナーとそうでない人との違いは、デザインの問題を解決する能力だけではなく、提案したソリューションがどう問題を解決するのかはっきり説明し同意を得る能力にも現れます。

デザイナーにコミュニケーションスキルが必要な理由

最近、企業や組織ではデザインに対する考えと取り組み方が変わってきています。これまで企業は、製品の見た目を良くし売れるものにするためにデザイナーを雇っていました。しかし現在では、多くの企業がデザインを自社のビジネスプロセスの中心に据えるようになりました。結果として、ステークホルダーや企業幹部はUXデザインの価値を認識し、関わっていきたいと考えるようになったのです。

それ自体は大した問題ではありません。しかし専門家であるデザイナーだけでなく、デザインの専門知識がない人もプロジェクトとデザインのプロセスに影響を及ぼしている点は見過ごせないでしょう。今やUXデザインは製品戦略の中心であり、誰もがその会話に入りたがっているのです。デザイナーがベストプラクティス、ユーザーテスト、よく起こりうるパターンなどを踏まえて、細心の注意を払って作り上げたインターフェイスが、デザインの知識がないステークホルダーの善意によってやすやすと台無しにされてしまうのです。

もっとも良いアイデアが選ばれるはずだ、素晴らしいアイデアは一目見ればそうとわかるはずだと思われるかもしれませんが、実際にはそのようにはいきません。ミーティングによってデザインが左右される可能性があるのです。みんながデザイナーに対して、どうデザインすべきか言い出すでしょう。ですから正当性をほかの人に納得させられる人だけが自分の意見を通せるのです。自分のデザインの理由を納得させる能力がないデザイナーは議論で勝つことはできません。最終的にはただ自分のアイデアをしっかり守り通せなかったせいで、納得できない変更を強いられることになるのです。そんなことになればデザイナーは気を病んでしまうかもしれません。

ですが、こうならないように防ぐ手段もあるのです。実はステークホルダーとより良いコミュニケーションを取ることで、組織でのデザインで起こりがちな妥協を回避することができます。つまりデザイナーは、プロジェクトに影響のある人々に対して自分のデザインの判断を専門的に説明できる素晴らしいコミュニケーターである必要があるのです。明確に説明できるようになれば、以下の事柄が可能になります。

  • 知性を感じさせる-デザイナーはもともと賢いですが、説得力をもつことで、ステークホルダーに対し自分がその分野でいかに専門知識を備えているか知ってもらい、ソリューションを信頼してもらうことができます。
  • 意図を示す-デザイナーは自分のソリューションについて論理的に考えたうえで着手しています。それをわかりやすく説明することで、ステークホルダーに「でたらめなアイデアではなく、きちんとした目的と焦点がある」と伝えることができます。
  • 自信を表すデザイナーは問題解決のためには何が必要でどのようにするべきかを知っています。明白で理路整然とした意見を持っていれば、ステークホルダーにデザイナーがしていることをわかってもらえます。
  • 敬意を示す-デザイナーはすべての意見の価値と、説明のために十分な時間をかけて準備した時間の価値を理解しています。明瞭に話すことができれば、ステークホルダーの意見も考慮し尊重していることを示すことができます。

デザイン判断をきちんと説明するためのベストプラクティス

より良いコミュニケーターになるためのベストプラクティスを理解するためには、まず良いデザインの基本を定義することが大切です。わたしの経験では、UXデザインにはおよそ3つの要素があると言えます。

  1. 問題を解決する
  2. ユーザーにとって使いやすい
  3. 誰からも支持されている

これら3つは、ステークホルダーのような一般の人でも理解できる、素晴らしいUXを生み出すための基本となる要素です。失敗するプロジェクトはだいたいこの3つのうち1つが欠けています。デザイナーがこれら3つを完遂できたとき、プロジェクトは成功するのです。ではそれぞれについてより詳しく見てみましょう。

問題を解決する

これは非常に明白です。ほとんどのUXデザイナーはすでに問題を解決することに慣れています。しかしデザイナーはクリエイティブなソリューションを見つけることに慣れていても、ほかの人にも理解できるほど理路整然とした思考回路に沿って判断しているとは限りません。ここでは直感が重要な役割を担っていて、だからこそデザイナーは一般の人と切り離しておくべきなのです。つまり、デザイナーはあまり考えずとも問題を解決できます。ですが難しいのは、何が直感を働かせているのかを解明することです。何がこの「良い感じ」を生み出しているのでしょうか、どうすれば人々が論理的な根拠を理解できるように説明できるのでしょうか? 説得力をもつためには、デザインで問題を解決する過程の中で、これらの決断を説明できるように意識をむけなければなりません。

ユーザーにとって使いやすい

使いやすいデザインを生み出すこともまた、概してよく理解されています。ユーザーにとって使いやすいアプリやWebサイトには、おのずとユーザー重視のデザインアプローチが必要になります。やはり、ユーザビリティへのフォーカスはUXの主目的の1つです。従って、UXが組織で製品をデザインする過程において重視されたのと同様に、デザイナーが使いやすさを理解することも重視されたのです。デザイナーはユーザビリティがデザインで直面する核心問題だと理解していますが、そのことをデザイナーでない人に説明するのは難しいかもしれません。

誰からも支持されている

残念ながら、問題解決と使いやすさだけでは不十分です。もしチーム内でほかの誰もソリューションを支持してくれなかったら、そのアイデアが日の目を見ることは決してありません。決定にはほかの人も関与しています。ですからただ単に素晴らしいデザインを生み出せばいいというわけではないのです。加えてデザイナーはチームのほか全員の同意も得なければなりません。そのため、デザイン決定に説得力をもたせることが決定的に大切なのです。

その意味では、素晴らしいデザイナーとそうでないのとの違いは、問題を解決する能力だけでなく、そのデザインがどう問題を解決するのかわかりやすく説明する能力を備えている点だと言えるでしょう。実際、問題をじっくり考え、どんなソリューションでもはっきりと説明する能力は、毎回完璧なデザインを生み出す能力よりも優れているとさえ私は考えます。

デザイナーが悩み抜いて意識的に決断を下しているとわかったら、ほかの人々はたとえ賛同していなくてもデザイナーを信用する気になるでしょう。デザイナーは、最善のUXを提供するために全員が大筋で合意している環境をつくる必要があります。

説得力を持って説明するために

では、ソリューションを理解してきちんと説明できるよう意識するために、デザイナーはどうすればいいでしょうか? デザイナーは、すべての決定とその理由に意識をむける必要があります。実はデザインを一般の人に説明し、デザイナーの専門的視点が最終決定プロセスの中核にあり続けるようにするためのカギは、それらの無意識下の決断が握っているのです。成功したければ、デザイナーは以下の3つの質問に答えられるようにしておかなければなりません。

  1. どんな問題を解決するのか?
  2. ユーザーに対しどのような影響を与えるのか?
  3. なぜほかの選択肢よりも良いのか?

3つめの質問に対する答えが、成功するために不可欠な、他人からの支持を獲得する糸口となります。デザイナーがほかの選択肢を知っていること、それらを考慮し、場合によっては試しさえしたこと、自分のソリューションがほかより優れていることを説明する用意があることを、この質問から暗に読み取ることができるのです。この理解を説得的な説明につなげるために、2つシンプルな手段をおすすめします。それは紙に書くこと、声に出して練習することです。

紙に書く

デザインの決定を納得させる練習に一番いい方法は、上記の3つの質問に対する答えを紙に書き出すことです。無意識の考えを目に見える形にして説明できるようにするには、おさえるべきことがあります。問題を書き出し、そのソリューションを隣に書き出してみましょう。以下に挙げるのはわたし自身がやった例です。

[問題]:ユーザーが、フィルターコントロールが結果のリストをアップデートしても瞬間的すぎて気づかない

  • ユーザーが数量の変更を見えるように、リスト内のアイテム総数の表示をフィルターの近くに移動する

  • ユーザーがチェックをしたら、各チェックボックスにローディング画面を一時的に表示させる

  • ユーザーがタスクが完了したことがわかるように、パネルを閉じる「完了」ボタンを追加する

[問題]:ユーザーが「検索結果」のリストからカートに商品を追加しない

  • 検索から商品をカートに追加するまでに求められる動作を減らす。

  • 「カートへ追加」をタップすることで、最初は量などの情報を求めることなく自動的に商品をカートへ追加する

  • タップすると、ボタンが「1個」を示す数量インクレメンタに変わる。ユーザーが必要に応じて数量を増やせる

  • 副次的な「カートへ入れる」の確認ボタンをなくす

  • 商品が追加されたことを示す新しいメッセージアニメーション

  • 「精算してよろしいですか?」というCTAがメッセージの下にスライドする

  • 色やサイズなどのオプションのある商品はデフォルト設定で選択されるが、ユーザーは見ながら変更できる

表の代わりに、簡単なメモでも、より複雑な図でも、すべてのソリューションのリストでも、効果を実証した絵コンテでも、答えを書き出す方法は何でも構いません。大事なのは、自分の思考回路を理解し、ほかの人に伝えられるように、すべてのデザインの決定のフローを段階的に考えることです。

声に出して練習する

もう1つの方法は、ステークホルダーとのミーティングの前に、声に出して説明する練習をすることです。デスクでもシャワーを浴びているときでも同僚と一緒にいるときでも、快適な場所ならどこでも練習できます。ミーティング前の10分間だとしても大きなプレゼンの前の数時間だとしても、前出の質問に対する答えを踏まえて話すのは非常に重要なことです。自分の思考プロセスを言葉にすると、それまでわからなかったたくさんの意図を発見できることがよくあります。たいていの場合、声に出して言うだけでそのソリューションを導いたロジックを明白にできます。デザインについて話す練習をすればするほど、自分の思考が明らかになり、自分の意見を論理的に説明する心構えができるのです。

次のステップ

デザインの決定をより良く伝えるには、デザイナーは以下のことを習慣づけなければなりません。

  • 判断したことに意識をむけ、それらを書き出すこと-UI要素を配置し選択した際の無意識下のロジックを見つける。
  • 3つの質問に答える-それはどんな問題を解決するのか? ユーザーにどのような影響を与えるのか? なぜほかの選択肢よりも優れているのか?
  • 書き出すこと-デザインの決定について書き出すのは、ほかの人に話す準備をするのに一番良い方法です。
  • 説明する練習をする-1人でもほかの人と一緒でもいいので、口に出して話すことで思考プロセスが明らかになる。

理想的には、この方法によってデザイナーが自分の生み出すものすべてにアプローチできます。3つの質問への答えが説得力ある応対の土台となるでしょう。このプロセスを経てデザインすることで、より生産性のあるミーティング、ユーザーのニーズと調和した決定、そして成功へと向かうチームを創り上げることができるのです。加えて、デザイナーはデザインの決定を明瞭に説明し、ステークホルダーとコミュニケーションを取り、気を病むことなく、最善のUXを提供することができるようになるのです。