インタラクションデザインは、UXデザインという大きな分野の中で非常に重要な要素です。この記事では、インタラクションデザインの基本概念と凡例、またインタラクションデザイナーが普段どのような仕事をしているのかを簡単に説明していきます。
インタラクションデザインとは
インタラクションデザインとは、簡潔に言うとユーザーと製品間のインタラクションに関するデザインのことです。
インタラクションデザインにおける製品とは、アプリやWebサイトなどのソフトウェアを指しています。インタラクションデザインのゴールは、ユーザーにもっとも適した方法で使用目的を達成できるような製品を作成することです。
インタラクションデザインの分野区分が広いために、定義が漠然としているように感じるかもしれません。ユーザーと製品間のインタラクションは、美しさ、モーション、音、空間などのさまざまな要素に関係しています。そして、ユーザーインタラクションで使用される音を作り出すサウンドデザインのような専門的な分野では、よりそれぞれの要素と密接に関係します。
このように、インタラクションデザインとUXデザインの間には共通の部分が数多くあります。UXデザインとは、ユーザーが製品を使用した際の体験を形作るもので、体験の大部分においてユーザーと製品間のインタラクションが関係しています。しかし、UXデザインのほうが、インタラクションデザインよりも範囲が広いと言えます。たとえば、UXデザインではユーザーリサーチ(まず、ユーザーがどのような人たちなのか探る)、ユーザーペルソナ(ユーザーが、どのような状況下や目的で製品を使用するのか)、ユーザーテストの実施、使いやすさの検証なども行います。
インタラクションデザインの5次元要素
インタラクションデザインに関係する要素は、以下の5つの次元に分類することができます。インタラクションデザインの研究者であるGillian Crampton Smith氏が、まずはじめにインタラクションデザイン言語の4次元要素を紹介しました。そして、IDEXX研究所のシニアインタラクションデザイナーのKevin Silver氏がさらに5つ目となる次元を追加しました。
1次元:言葉
ボタンラベルのようなインタラクション特有の言葉は、十分な情報を持ちつつもわかりやすい必要があります。言葉はユーザーに情報を伝える必要がありますが、負担をかけてしまうほどの情報量にならないよう考慮する必要があります。
2次元:視覚要素
画像、タイポグラフィ、アイコンなど視覚的にユーザーと関わりのある要素を指します。これらの要素は、情報をユーザーへ伝える際に、言葉を補助する役割を担います。
3次元:物質あるいは空間
ユーザーと製品間にインタラクションが発生する際、ユーザーが物理的に使用するものを指します。たとえば、マウスやタッチパッド付きのラップトップ、ユーザー自身の指とスマートフォンなどです。
また、ユーザーがどのような空間にいてインタラクションが発生するかも考慮されます。たとえば、混雑した列車内やオフィスのデスクなどです。
物理的な物質と空間、どちらもインタラクションの発生と密接な関係性があります。
4次元:時間
この次元は、少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、時間が経つと変化するメディア(アニメーション、動画、音)のことを指すことが多いです。モーションと音は、ユーザーの視覚や聴覚にうったえかけるフィードバックを与える際に有効です。また、ユーザーが進行状況を確認できるか、もしくは時間を空けて途中から再開することができるかどうかなど、インタラクションに費やすことのできる時間の考慮も大切です。
5次元:行動
行動は、製品のメカニズムに関係します。ユーザーはWebサイトでどのような行動をとるでしょうか? どのように製品を使用するでしょうか? 言い換えると、ユーザーの行動は4つ目までの次元が製品のインタラクションをどのように定めるのかによって左右されます。そして、行動にはユーザーと製品の間にインタラクションが発生する際に抱く感情も含まれます。
以下のアニメーションで、どのようにインタラクションデザインの5次元要素が関わっているのか確認してみてください。
インタラクションデザイナーが問う重要な質問
インタラクションデザイナーは、有意義なインタラクションを作り出すためにどのようにして5次元要素を製品に取り入れるのでしょうか。Usability.govが提供している、インタラクションデザイナーがデザインのために問う重要な質問事項をいくつか確認していきたいと思います。
- ユーザーはインターフェースとの物理的なインタラクションの際に、マウスや指、スタイラスをどのように使用するか:ユーザーが製品と可能なインタラクションを定義するのに役立ちます。
- ユーザーに対して、製品の機能性を伝えるための見た目(色、形、大きさなど)は適切か:ユーザーにどのような操作ができるのか、ヒントを与えるために重要な要素です。
- エラーメッセージは、ユーザーに問題の解決法、あるいはなぜエラーが発生したのかを説明できているか:起こりやすいエラーが予想できて、解決しやすくなります。
- ユーザーが起こした行動に対して、どのようなフィードバックがされているか:ユーザーの行動に対して、システムが合理的な時間内にフィードバックを行えるようになります。
- インターフェースの要素のサイズはインタラクションにおいて妥当であるか:このような質問によって、製品に取り入れられるそれぞれの要素について戦略的に考えられます。
- 馴染みやすい、もしくは標準的なフォーマットが使われているか:標準的なサイズの要素やフォーマットであれば、学習しやすくなります。
インタラクションデザイナーの業務内容とは?
たとえば、豊富な資源のある大きい会社であれば、UXデザイナーとインタラクションデザイナーで仕事がわかれているかもしれません。大きなデザインチームでは、たとえば、UXリサーチャー、情報アーキテクト、インタラクションデザイナー、ヴィジュアルデザイナーのような役割が存在するかもしれません。
しかし、比較的小さい会社やチームでは、UXデザインの仕事の大部分を1人か2人で担当することになるでしょう。そして、インタラクションデザイナーという肩書きは持たないかもしれません。
しかし、どちらの場合でも共通に存在する、日常業務におけるタスクがあります。
デザイン戦略
デザイン戦略は、ユーザーの目的が何か、反対にユーザーの目的を果たすためにはどのようなインタラクションが必要なのかを考えます。
会社によっては、インタラクションに適用されるデザイン戦略を立てる前に、ユーザーの目的を探し出すためのユーザーリサーチをインタラクションデザイナーが実施する必要があるかもしれません。
ワイヤーフレームとプロトタイプ
こちらも会社で与えられた職務によって異なるかもしれませんが、多くのインタラクションデザイナーはインタラクションのワイヤーフレームを作ることが仕事の1つとされています。
場合によっては、実際のアプリやWebサイトのようなインタラクティブプロトタイプや高い忠実度のプロトタイプを作ることもあります。
インタラクションデザインに深く関わる
インタラクションデザインについてもっと詳しく知りたい方は、Jonas Lowgren氏のインタラクションデザインの簡単な紹介を読んでみると良いでしょう。こちらは、人間とコンピューターのインタラクションに関する百科全書の一部です。この分野におけるわかりやすい導入やさらに詳しく勉強できるそのほかの文献が掲載されています。
参考文献
5 dimensions of interaction design - UX Matters
Questions to consider when designing for interaction - usability.gov