効果的なデザインスプリントのための5ステップ

David Pasztor

Davidはデジタル製品のデザインを10年以上行っています。彼はブダペストにある20名のデザインチーム、UX Studioの創設者です。彼らの顧客には、HBOのような国際的ブランドのほかに、ベルリンやロンドンの新規事業も含まれます。

この記事はThe UX Boothからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Every Week is a Design Sprint

性格が悪いように聞こえるかもしれませんが、デザインスプリントが流行する前から私はデザインスプリントを実践していました。

数年前、デザインスプリントについての書籍が存在せず、ブログ記事も非常に少なかったとき、私たちはUX Studioでデザインスプリントを実践していました。まず、デザインの仕事を開発者のスプリントに合わせて行うことから始めて、継続的にスプリントを繰り返せるようにしました。スプリントを今では私たちは継続的なデザインプロセスの一部として、週単位でデザインスプリントを活用しています。

この記事では、私がこれまでに学んできたことと、私たちがデザインスプリントの元々のアイデアをどのようにチームに適用してきたかを紹介したいと思います。また、デザインスプリントを継続的な開発活動に適用するためのアイデアも、いくつか紹介します。

デザインスプリントとは?

IT産業におけるアジャイル革命が起きて以来、多くの開発者やデザインチームがスプリントに基づいて業務を行っています。Monika Adarsh氏は、Google Ventureのデザインスプリントにおける彼女のチームの経験を説明しました。スプリントは、通常1~4週間の決められた時間枠で行われ、その中で遂行できる量の作業をこなします。それぞれのスプリントは計画から始まり、チームでスプリントの間に何を達成するか決めます。スプリントの終わりで、チームで集まり、何を達成できたかを振り返り、どこに改善の余地があるかを議論します。

デザインスプリントは、アジャイル型開発のうちの1つです。その考えは、デザインプロセスの時間配分を決定して、設定した目標に忠実であることにあります(理解する、分業する、成果をまとめる、プロトタイプを作成する、テストを行う)。また、スプリントという短い期間では、チームは問題点について検討し対処することができ、ミスをしても再度やり直すこと機会があります。Google Venturesの開発では、デザインスプリントの期間は1週間でした。開発チームによるとGoogle Venturesのスケジュールは以下のようなものでした。

月曜日に問題点を取りまとめて、焦点を当てるべき重要な部分を選びます。

火曜日にいくつかの異なる解決策を紙に書き出します。

水曜日、難しい決断をするでしょう。そして、アイデアを検証可能な仮説へと変換します。

木曜日に忠実度の高いプロトタイプを作成します。

そして金曜日、それを実際のユーザーを対象にテストします。

The Design Sprint

毎週スプリントの達成を継続して行えるのだろうかと、疑問に思われるでしょう。深刻な課題を選んだり、プロトタイピングや調査の実施、ステークホルダーを巻き込んだりと、達成すべきことはたくさんあります。それでも、デザインスプリントでの作業はウォーターフォールよりはるかに良いのです。とは言っても、私たちのチームは、Google Ventures独自の方針を以下の4つの分野に焦点を当てて、自分たちのニーズに合うように修正しました。

  • 参加者
  • 構造とタイミング
  • 計画
  • 目標

すべての人たちを参加させる

デザインスプリントの秘訣は参加です。チームは関係者全員が連携するために1週間の予定を決めます。ビジネスのリーダーや開発者、デザイナー、ときにはチーム全体が参加します。そして、全員が重要な発見に気付くので、後々開発がスムーズに運びます。このように、チームに団結力が生まれるのです。しかしデザインスプリントを毎週行うとなると、全員に参加を頼み続けることはできません。それぞれに自分の仕事があります。

チームがデザインスプリントの実行を決めたら、最初に行うことは製品に関わる組織全体から賛同を得ることです。デザイナーとUXリサーチャーがプロトタイピングやデザイン、調査などのほとんどのタスクを行い、その後のほかのメンバーのタスクはなるべく少なくしましょう。依頼することはただ1つ、毎週のブレインストーミング会議へ何人かのメンバーに出席してもらうことだけです(それ以上はあとで頼みます)。

私たちは、デザインプロセスにすべての部署が参加することは不可欠だと思います。参加しないチームがあると、大失敗に終わるでしょう。デザインプロセスに参加しなかった部署が最終的な結果を見たとき、不明な点が出てくるでしょう。そして、ピリピリとした議論になり、リリース間際の突然な変更などが出てきてしまうかもしれません。そのため、全員を参加させてデザインがどのようにしてつくられたかを順を追ってを示したほうが良いです。そうすることで、すべてのチームにアイデアを出す機会を与えられて、関心を高めることができます。

私たちのウィークリースプリント

製品チームがデザインスプリントに合意したあとは、デザインスプリントの予定を考える段階です。私たちの場合、デザインスプリントは1週間で終わります。ペース配分をする一方で、それぞれの日において、作業に対する厳しい目標は定めません。結局のところ、デザイナーは専門家です。彼らが自身のペースで、アイデアの提案や推敲は、各自のペースで行ってくれると信じています。

デザインスプリントを開始したら、計画通り厳密に進めていくのは難しいかもしれません。デザインスプリントが始まったら、問題点を選び、解決策をデザインし、同じスプリントの期間中にテストをすることがもっとも重要な目標であることを忘れないようにしてください。

私たちのチームにとって最適なスケジュールでは、ミーティングに1日、デザインに2日、そしてテストに2日を割り当てます。

月曜日:毎週のデザインミーティング

スプリントは毎週行うデザインミーティングから始まります。このミーティングは、協調関係を築くためのメインフォーラムです。製品チーム全員が出席しますが、ビジネス部署や開発部署からも参加することが義務づけられています。なぜこの2つの部署が大事なのでしょうか? ビジネス部署の人は、デザイナーが中心となるビジネス目的に焦点を当てられるようにサポートします。そしてデザインチームが必要とする権限やリソースを提供します。開発チームは、デザイナーの仕事が実現可能なものにできるようにサポートをします。

このミーティングは、過去のスプリントの調査結果を共有する機会としても活用します。こうして、デザイン、開発、ビジネスの各部署がスプリントの方向性に対して同意をし、デザイナーが行った意思決定の理由などをしっかりと把握します。

火曜日〜水曜日:デザイナーが作業を進める

デザインミーティングが終わると、チームは作業に取りかかります。たくさんの取り組まなくてはいけない問題をひとつのスプリントで解決していくのは、すごく難しいことです。大体の場合、取り組む問題は2つか多くても3つにすると良いでしょう。前回のスプリントの結果を修正することが求められる一方で、新たな機能のデザインも始めます。しかし他方では、デザインされたすべてのものは、同じスプリントの期間中にテストすることが望ましいです。

スプリントの作業量について、2つの良い事例を挙げましょう。

  • 前回のスプリントのユーザビリティテストで失敗したボタンの新しいコピーを試します。また、新たなプロフィールページのワイヤーフレームを作成します。
  • ある要素のピクセルパーフェクトなデザインを完成させます。また、会員登録ページで見つかったユーザビリティの問題点を解消しようと試みます。

通常、デザイン面において、アイデアの提案と推敲の作業はデザイナーが行います。しかしときには、製品チームのほかのメンバーを交えたブレインストーミングする必要もあります。デザイナーの業務とは、製品チームのほかの人たちの進捗状況を更新して、フィードバックするためのチャネルを提供することです。

木曜日〜金曜日:調査をする

デザインが準備できたら、調査を開始します。調査はデザインスプリントにおけるもっとも重要な工程なので、本腰を入れて取り組みます。実際に私たちのUX Minimum Checklistでは、製品チーム全員に、毎週少なくとも1回はユーザーテストを行うように提言しています。その結果は、次回のスプリントでデザインを見直すために不可欠で、また顧客からの重要な考えやフィードバックを提供するものでもあります。

協力的なUXリサーチャーの存在はチームにとって不可欠で、そのような人がいることでデザインスプリントをうまく機能させることができるでしょう。ユーザーテストを毎週実施し続けるのはとても難しいことです。参加者を募集し、テストの計画を作成し、結果を分析し、そしてレポート作成など、一連の作業には、時間がかかります(テストを実行すること自体も、言うまでもありません)。もしデザイナーが調査にも責任を負うとすると、デザイン作業に支障が出ます。このように時間に追われると、リサーチ全体の工程が飛ばされるなどの悪い習慣につながります。

リサーチャーの仕事は、木曜日から始まるのではありません。その週の間、リサーチャーはデザイナーとタスクやタイミングを協力して行うために話し合いをします。デザインのニーズや製品の種類によって、実施するテストのタイプが決まります。新しいデザインに対して、リサーチャーはターゲット層となる実際の人たちの集団で、ユーザビリティテストを行いたいと思うかもしれません。すでに多くの閲覧者がいる製品に対しては、A/Bテストのほうが良いでしょう。すでに述べたとおり、タイミングはとても重要です。たとえば、もしリサーチャーが木曜日の午前10時にテストを予定している場合、それよりも前にワイヤーフレームを準備しなくてはなりません。

開発者と同じスケジュールで実施しない理由

デザインスプリントも開発者のスプリントに合わせて2、3週間で行うべきだと考える方もいるでしょう。しかし、それは良いアイディアだと思いません。通常デザインは開発よりも早く行われますが、反復作業が必要とされます。デザインスプリントは、反復作業にかかるのと同じくらいの時間がかかり、外的状況に依存するべきではありません。「Agile Design Process Guide」の記事で書いたとおり、デザイナーと開発者は、たとえ同じチームに属していたとしても、異なる期間のスプリントを行って良いのです。ただ、その作業を同期させる必要があるだけです。そのため、開発者には前回のスプリントを完了させ、次のスプリントを計画するというような開発者の順番のスプリントがあり、デザイナーにもデザイナーのスプリントがあるのです。

デザインスプリントを始めるための最初のステップ

もっとも重要なステップは理解できたと思いますので、実践してみましょう。デザインスプリントは、一般に思われているよりも簡単です。

1.組織からの同意を得ます。

2.中心となるデザインスプリントのチームを考えます。デザイナーとリサーチャーを組ませて、ビジネス部署と開発部署からしっかりと協力を得ます。

3.週の初めに行う定期的なデザインミーティングの計画を立てます。また、協力してくれる人が参加することも確認してください。

4.最初のミーティングで、製品の現状を確認して簡単に取り組めるタスクを選びます。デザイナーによって伝えられることの定義、リサーチャーのテスト方法や予定表などを具体的にします。

5.次のミーティングでは、デザインと調査結果を発表します。デザイン決定を共同で行い、次のスプリントを計画します。機能したもの、逆に機能しなかったものについて話し合うことによって、チームが学習し、スプリントを改善することができます。


Welcome to UX MILK

UX MILKはより良いサービスやプロダクトを作りたい人のためのメディアです。

このサイトについて