オンボーディングについてレストランから学ぶべきこと

Adam Fairhead

Adamはイギリスの起業家および慈善活動家で、「違いを作る人たちが違いをもたらす仕事をサポートする」というミッションの下に活動するFairheadという企業の創設者です。

この記事はUXPinからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

What Restaurants Can Teach You About Onboarding (2017-05-27)

一流のシェフが料理に対して「火の通し過ぎだ」と怒鳴りつけることと、ユーザーに対する優れたオンボーディングの間には、どのような関係があるのでしょうか? 素敵な食事の体験というものには、食べ物自体よりはるかに興味をそそられる何かが存在します。それこそが、オンボーディングの体験です。

編注:オンボーディングは、新規ユーザーがサービスに慣れてもらうためのプロセスを指します。

この記事では、レストランでのオンボーディングの優れた部分と、それを今後のUXデザインにどのように応用できるかを解説していきます。

1. ドアの向こうにあるもの

前回私が妻とパリを訪れたとき、ほかの観光客と同じように私たちはよく外食をしました。ドラマチックな演出とおいしい食事はなかなか手放せるようなものではありません。

しかし外食で一番楽しんだことは、それぞれのレストランがどのように集客しているのかを見ることでした。客を一旦店内に入れてしまうことがそのまま客を滞在させることと同義であることを、彼らはよく理解していたのです。

優れたレストランは、いずれも同じやり方をしているように見えました。パリの建築を眺めながら歩道をぶらついていると、私たちは歩道の真ん中に置かれたメニューを意識的に避けて歩かなければなりませんでした。

実際、店員はこう言います。「こちらが私たちの提供しているものです。ご覧のとおり、もう何を食べられるか知らないままお店に入る必要はありませんね。気に入ったものがあれば、より確信をもって入ってこれます。」

このような形は、多くのプロダクトデザイナーが達成したい目標でしょう。UXデザインに共通する間違いとして、自分が知っていることをほかの人も知っていると思ったり、それを理解するだけの自信を皆が持っていると思ったりすることがあります。ほとんどの人たちはそうではありません。

たとえ食べたい料理が決まってなくても、道中にメニューがあることで、どこで食事するか決断しやすくなります。そこで何が食べられるかがわかり、またどんな料理なのかイメージできるので、意思決定をしやすくなります。「よし、決めた。これを食べてみよう、きっとおいしいだろう。」決断はこうして行われるのです。

メニューがあると、レストランの内装が美しいかどうかや不当に値段が高くないかといった不安や、決断の面倒さが払拭されます。そして、このレストランを楽しめるだろうと確信して中に入ることができるでしょう。

同じ原則を、UXデザインにも当てはめることできます。良い例がTeuxDeuxのホームページです。

ホームページが表示されるとすぐに、ユーザーはTeuxDeuxのプロダクトを使うことができます。プロダクトを理解するのに、複数のスクリーンショットやイメージに頼る必要はありません。もし使い続けたいと思えば、あとで登録することができます。

教訓:ドアの向こうに何があるかを訪問者が明確にイメージできるほど、そのドアを開ける可能性が高くなります。

2. 訪問から登録までの継ぎ目に注目する

私たちが食事したある2つのレストランでは、まったく異なることが起きました。

1軒目の対応は素晴らしかったです。あいさつで迎えられ、好みの席に案内されました。ウェイターは多くの人から尋ねられることをわかっていて、次のように説明しました。

「化粧室はあちらです。こちらが当店のおすすめです。こちらはグルテンフリーで、こちらがベジタリアンメニューでございます。当店のステーキは普通よりややレアですので、普段より火を通したものを注文してくださいませ。」

私たちは、内装や体験を心から素晴らしいと感じ、とてもリラックスしました。サービスが行き届いていると感じられました。

2軒目のレストランでの体験は楽しみに欠けましたが、1軒目と同じくらい印象深かったです。私たちはテーブルまで案内されることはなく、逆にどのテーブルに行けと指示されただけでした。ウェイターの英語は私たちのフランス語よりも下手で、私たちのうちの一人が「乳糖不耐症」であることを伝えるために、その場にはまるでふさわしくないジェスチャーをしなければなりませんでした。

私たちはこの2つのレストランのどちらに滞在したのかは言うまでもないでしょう。

後者のレストランに改善すべきことがあったのと同様に、UXデザインでもデジタルプロダクトのサービスに、いくつか共通して見落とされている部分があります。

デジタルプロダクトの「ドアをくぐった」直後には、何が起きるでしょうか? おそらく訪問に対する感謝のページやWebアプリのダッシュボード、または認証のページなどがあるでしょう。

しかし、これらはデザイナーが忘れてしまいやすいページです。これらのページは、開発してきたサイトやUIを何となくクリックしている間に指摘されるものではありません。このようなページはアプリケーションの理論の奥深くにしまい込まれ、会員登録して深くまでアクセスしなくては体験できないようになっていることがよくあります。

入り口と中身、マーケティングとアプリ本体という前後の2つの状態をつなぐ部分は、ほぼ必ずユーザー体験の弱点になっている部分です。この部分こそ強化しなければなりません。

この素晴らしい例としてRedPen.ioのWebサイトがあります。ある仲間のデザイナーが教えてくれたので、先週使ってみました。

ページが読み込まれるとすぐに、画像をアップロードして文を入力することができます。「アカウントを作成する」ページはありません。

画像にいくつか文章を載せると、ダイアログが出現して以下のようなメッセージが表示されます。「素敵な投稿ですね。誰かがリプライを投稿したらお知らせしたいので、メールアドレスを教えてください。あなたも仲間に入りましょう。」

RedPen.ioでは、登録が障壁ではなくユーザーにとっての利益になるように、ユーザーが入力した文章をほめて、メールアドレスの登録を推奨していました。

教訓:訪問してから登録するまでの継ぎ目に対してもっと注意を払いましょう。この点に注目している人は少ないですが、ユーザー体験全体にとってとても重要な段階です。

3. すぐに成功体験をしてもらう

レストランでの体験という意味では、パリよりアメリカのほうに軍配が上がります。

初めて何かに成功したり正解をしたとき、誰もがそれを気持ちよいと感じるものです。特にそれが、あまり試したことがないものであればなおさらです。

私たちが訪れた中でもっとも良かったパリのレストランでは、テーブルに着くなりお水が提供されました。もっと気の利いたところでは、何種類かのパンや前菜を運んでくれたかもしれません。しかしアメリカでは、私が座るや否や、すぐに水やパンが提供されます。

客は最初メニューを見て何を食べるか決めますが、それでもレストランはできるだけ早く食事を提供することを優先すべきです。

私は食事をして楽しい時間を過ごすために、レストランへ行きました。そのため食べ始めるのが早いほど、思い描いていたことが実現するのも早くなります。

デジタルプロダクトのUXデザインに共通する誤りとして、「恩恵を実感できる」タイミングが遅いことがあります。水とパンは、私がその晩食べようと考えていたものではないでしょう。しかし水とパンによって、プロダクト、つまり食事が提供されているイメージを与えることができます。

最初にパンを提供するレストランのように、HelloFaxのサイトには、利用者にサービスを利用し続けてもらうための素晴らしい仕組みがあります。

オンラインでファックスができるようになるこのサイトではユーザーが登録作業を終えたあと、さらに追加作業をするごとに追加で5ページ分ファックスできるようにしています。登録に必要なのはメールアドレスだけなので、アカウントにパスワードを設定するだけでも追加でファックスをすることができます。このようにインセンティブが追加されることで、ユーザーは追加の作業をすることが好きになり、その分の作業履歴がそのまま使い込んだ歴史のように感じることができます。

教訓:レストランのチョイスを褒められるように、ユーザーができるだけ早く恩恵を感じられるようにしましょう。これによって、ユーザーに成功感を与えることができ、プロダクトを使い続けたいと思うでしょう。

4. サービスの終わりをみせない

「サービスの終わりを見せない」ことを考えると、6年前私がアメリカに移住してまもまく、東海岸へドライブで旅行したときを思い出します。

私たちは名前も知らない場所でチキンナゲットを食べようとマクドナルドに寄りました。そこでドリンクのおかわりを買おうとして、私はびっくりしました。

「おかわりが無料? この国ではどこでも無料なのですか?」店員がどんな顔をしたか、想像に難くないでしょう。

どの飲み物も「お代わり自由」な中で、なぜ誰もが決まって「Lサイズ」を頼むのかちょっと戸惑いましたが、それはサービスの終わりを見せないための素敵な方法として際立っているように思えました。

世界中のレストランでは、グラスが空になる前にグラスを満たそうと懸命に努めています。アメリカでは、この理由は大人がストローで音を立てて飲むことを避けたいという思惑があるからです。先のことを考えたサービスを提供することで、体験できることとできないこと、サービスでしてもらえることともらえないことの境界線を感じさせなくさせることができます。

ここでのUXデザインに共通する間違いは、利用に制限があることと直接関係があります。もう1つファイルをアップロードしようとする、もう1つプロジェクトを作成しようとする、もう1つ曲を聴こうとする。すると以下のようなポップアップが表示されます。「これ以上はできません…追加料金をお支払いください。」

まるでデジタルの警備員に「そのような身だしなみではこちらの階級に入ることはできませんよ」と優しく注意されるかのようです。これがユーザーを立ち去らせる大きな要因です。

代わりにこのように言ってみてはどうでしょう。「こちらはあなたのような熱心なユーザーのための、プレミアム機能です! 少しだけ試してみませんか。もし気に入っていただければ、プレミアムアカウントにアップグレードして制約なくご利用頂けます。」

どちらのメッセージも内容は同じですが、前者だけがユーザーを嫌な気持ちにさせます。

Basecampのページは、サービスの終わりを見せないサイトの良い例です。Basecampのサイトには「それはできません」と言われる瞬間がありません。多くのSaaSタイプのプロダクトと違い、アップグレードは頻繁に利用するユーザーがプロダクトを使い続けるために許可されるものではなく、それまでアクセスできなかった新しい機能を解除するものを意味しています。

教訓:ユーザーを否定する瞬間をすべて排除しましょう。ユーザーを動かすために、より優れたもてなしがあるような期待をさせてはいけません。かえってユーザーは現状にとどまってしまうでしょう。代わりに、利用状況を褒めて、ユーザーがプレミアム会員になることを祝福し、アップグレードを喜ばしいと感じてもらえるようにしましょう。

終わりに

ここまで素晴らしいレストランについて話してきましたが、私たちは食事の体験において欠かすことのできない部分への言及をあえて避けてきました。それは食事そのものについてです。

実は、食べ物の質は、私たちの口の中で一番印象を残したものではなく、オンボーディングの体験の質によって決められているのです。

デザイナーのみなさん、あなたはどんなレストランを作りますか?


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