UXリサーチの知見をわかりやすく伝える方法8選

 Neil Turner

Neilはイギリスを拠点とするUXデザイナー&リサーチャー。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

8 great ways to communicate UX research insights (2017-01-22)

私は今まで不眠症の人が行うような睡眠方法を、一度も試したこともありません。たとえば、寝る前に温かいミルクを1杯飲む、羊を数える、UXリサーチのレポートを読むなどです。

リサーチチームやエージェンシーが作成する、長ったらしくて、面白味のないUXリサーチレポートですが、1つだけ役に立つことがあります。それは、人を眠りに誘うことです。読み始めれば、ものの数分で赤ちゃんのように眠り始めること間違いありません。もし夜に頑張って眠ろうとしているのであれば、UXリサーチレポートはとても役に立つでしょう。しかし、もしオフィスでよだれをたらしいびきをかいてしまうようであれば、レポートは役に立ちません。

長くて細かすぎるレポートは、UXリサーチで得られた重要な知見を伝えるのにはまったく向いていません。リサーチには、インタビュー、観察、日記、調査、アンケートなどがあります。しかしそれをレポートにまとめても、誰も読まないか、読んでも5分で忘れられてしまうでしょう。そして大抵は、棚の隅でほこりを被る運命にあります。 そこで、詳細情報をすべて盛り込んだ長くて退屈なレポートよりも、UXリサーチの知見を伝えるのに優れた8つの方法を紹介します。もちろん、すべてを1つのプロジェクトで行うのではありません。

1. プレゼンテーション

周到に準備されたプレゼンテーションは、UXリサーチの知見を伝えるのに適した方法です。ただし、プレゼンテーションのみではなく、知見を伝える複数の方法が必要であることを覚えておいてください。これから紹介する手法のドキュメントをプレゼンテーションと一緒に用いると、素晴らしい効果を発揮します。プレゼンテーションで重要な知見を関係者やチームに伝え、ドキュメントでその情報を記憶に留めてもらうのです。

一般的に人間の記憶力は良くありません。聴衆があなたのプレゼンテーションを覚えていてくれると期待するのはやめましょう。重要な知見だけに焦点を当て、ストーリーや引用文、動画、画像など、UXリサーチの知見を思い出してもらえるような要素を盛り込みます。プレゼンテーションは、20分程度の短くて楽しいものにしてください。また、新しいチームメンバーや出席できなかった人が見れるように、録画しておくと良いでしょう。

UXリサーチプレゼンテーションのさらなる情報

UXに焦点を当てたプレゼンテーションのヒントについては、私の記事『10 ways to improve your UX presentations article』をご覧ください。

また、Carmine Gallo氏の著作『Talk Like TED: The 9 Public-Speaking Secrets of the World’s Top Minds』もおすすめです。

2. ペルソナ

以前の記事(Getting the most out of personas)で、私はペルソナを画期的な発明だと書きました。大胆な主張ではありますが、いまだに私はこの主張を曲げていません。以下の例のようにペルソナとは、基本的にはユーザー個人のプロフィールのことです。プロフィールは架空のユーザーのものですが、可能な限り事実に基づいている必要があります。ペルソナは、チームとステークホルダーが、ユーザーとなる人物像の理解を固めて共有するのに役立ちます。

重要なUXリサーチの知見をまとめているペルソナの例|PDF

ペルソナはUXリサーチの知見を伝えるのに役立ちます。なぜなら、手に入れた知見を実際のユーザーと関連付けることができるからです。また、ペルソナによって知見にコンテキストが生まれます。ペルソナは、UXリサーチから得たストーリーを伝えるための素晴らしいキャラクターです(詳しくは下のリンクをご覧ください)。たとえば、見つけたユーザーニーズやペインポイントをまとめたり、ユーザーの行動や特徴をまとめたり、リサーチしたユーザーの発言を引用したりできるでしょう。

ペルソナのさらなる情報

私は今までペルソナに関する記事をたくさん書いてきました。そのくらい私はペルソナが気に入っています。もっとペルソナに関して知りたい場合は、次の記事を見てみてください。Getting the most out of personasWhy there’s still life left in personasMinimum viable personas (MVPs) 、example personas

3. ユーザージャーニーマップ

ストーリーは、リサーチの知見を伝える手段として非常に優れています。そしてユーザージャーニーマップ(別名エクスペリエンスマップ)は、ユーザーの目線でそのストーリーを伝える素晴らしい手法です。私は以前から多くのプロジェクトでこの手法を用いており、非常に気に入っています。

ユーザージャーニーマップは、ユーザーが特定の目標を達成するまでの一連の流れを表します。たとえば、顧客が新しい車を購入するとき、休暇を取るとき、レストランで食事をするときの流れを考えてみてください。ジャーニーマップは各段階でユーザーが行動すること、考えること、感じること、そして体験することを、ペインポイントと共に表します。

Adaptive Pathによるジャーニーマップの例|PDF

ユーザージャーニーマップは全体像を表すだけでなく、現在の体験のクオリティや、ユーザーが取るアプローチをまとめるのにも役立ちます。 また、現在のユーザージャーニーを改善する方法を考えたり、解決すべき問題やイノベーションの機会を見つけたりする起点にもなります。

ユーザージャーニーマップのさらなる情報

もしユーザージャーニーマップについてより知りたい場合は、まずこちらをご覧ください。Adaptive Path’s excellent guide to experience mapping

また、次の記事もおすすめします。example user journey maps

4. リッチピクチャー

スケッチノートをご存知でしょうか。情報を視覚的にとらえるのに効果的なノートの取り方です。スケッチノートはリッチピクチャーが進化したものです。 リッチピクチャーとは、複雑な問題や分野を、漫画のようにスケッチすることで視覚的に表したものです。この手法は25年以上も使われていて、初めて用いられたのは、Peter Checkland氏のソフトシステム方法論(サービスデザインの前進の一種)でした。 

Dan Zen氏によるリッチピクチャーの例

リッチピクチャーは複雑な問題をシンプルに伝えるのに優れた手法です。リッチピクチャーはある状況に存在している人物、製品、関係性、問題を示します。直面している問題への理解を共有するのに適しており、問題に対するソリューションを考えるきっかけにもなります。

リッチピクチャーのさらなる情報

リッチピクチャーにルールは特にありません。そのため、リッチピクチャーを始める最善の方法は、自分で作成してみることです。もし何かヒントが欲しい場合は、Nick Bowmast氏の記事『Visualising UX research』をおすすめします。また、Boon Yew Chew氏の『Visual thinking workshop』や、リッチピクチャーを発明したPeter Checkland氏の『rich picture guidelines』も是非ご覧ください。

5. タスクモデル

タスクモデルは、ユーザーが特定のタスクにどのように取り組むかを示すのに優れています。 たとえば、休みの日に行く場所の決め方や、Netflixで見る映画の決め方などです。タスクにおける、人々のメンタルモデルや意思決定プロセスを示します。

CXPartnersによるタスクモデルの例|PDF

現在のタスクプロセスをまとめることができるだけでなく、モデル化し、プロセスを改善できる方法を特定することができる点において、タスクモデルは非常に優秀です。たとえば、ユーザーの疑問を解消するための情報や、ステップを進むサポートをする機能を提供する、といった方法があげられます。

タスクモデルのさらなる情報

CXPartnersのTask model cheat sheetはとても有用です。また、彼らのTask modelling workshop materialもご覧ください。

6. ストーリーボード

新進気鋭の俳優が突然ハリウッドで注目の的となるように、ストーリーボードは漫画や映画の世界から突如UX業界に現れ、大旋風を巻き起こしました。信じられないかもしれませんが、初めて映画でストーリーボードが使われたのは1890年代です。ストーリーボードは大人のための漫画です。ユーザーストーリーを、スケッチやイラスト、写真を用いて視覚的にわかりやすく表します。

Robot-Hugs.comの、知見を伝えるストーリーボードの例

ストーリーボードはユーザーが将来体験するかもしれないことだけでなく、現在ユーザーが体験していることを伝える素晴らしい方法でもあります。つまり、リサーチから生まれたストーリーを表現することで、ユーザーが直面する問題や体験する感情などのUXリサーチの知見を、生き生きと魅せることができます。

ストーリーボードのさらなる情報

もしストーリーボードについてさらに情報が必要な場合は、Johnny Holland氏の記事、ストーリーボードとUXpart 1part 2part 3)をおすすめします。また、example storyboardsも役立つでしょう。

7. シナリオとシナリオマップ

以下の例のようなシナリオとシナリオマップは、与えられたシナリオの中でユーザーが進むであろうステップを表します。たとえば、情報を探す、特定のタスクを達成するなどのステップです。また、ステップを表すだけでなく、疑問やペインポイント、必要なリソースなどの重要な情報を表すこともできます。シナリオは物語のように読まれるものですが、シナリオマップは単純に詳細なステップを描写するので、より効率的です。

シナリオの例|PDF

シナリオとシナリオマップは、ユーザーが現在どのように行動しているのかを伝えるのに優れた方法です。John Pruitt氏とTamara Adlin氏は、著書『The Persona Lifecycle』の中でこのマップを「リアリティマップ」と呼んでいます。私はこの言葉をとても気に入っています。なぜなら、目の前にあるマップは、いつか起こるかもしれないことではなく、実際に今起きていることを表しているという事実を思い起こさせるからです。同書の中で、将来を予想するマップは「デザインマップ」と呼ばれています。

シナリオマップの例|PDF

シナリオとシナリオマップは、ストーリーボードに比べると人を引き付ける力が弱いことも覚えておいてください。本を読むより映画を見るほうがわかりやすいのと同じです。一方で、作成にかかる労力は少なく済みます。そのため、素早く作成したい場合や、簡素でも十分な場合に適しています。

シナリオとシナリオマップのさらなる情報

シナリオについてより知りたい場合は、私の記事、complete guide to scenariosをご覧ください。シナリオマッピングの詳細な情報はstep by step guide to scenario mappingにまとめています。また、example scenariosexample scenario mapsも参考になるでしょう。

8. デザイン原則

UXリサーチの知見を伝える最後の手法は、デザイン原則です。もっとも簡単な方法ですが、もっとも正しく行うのが難しい方法でもあります。そのため、リサーチの知見をデザイン原則にまとめることはとても効果的です。

たとえば、私は、ヨーロッパ最大の旅行代理店であるTUIのUXチームとして働いていたとき、いくつかのUXリサーチを実施しました。店舗スタッフがどのように顧客に旅行プランの紹介や予約をしているかを調べるためです。私は店舗とコールセンターに長期間滞在し、店舗スタッフと彼らの仕事について話をしました。とても良い経験だったと思います。最終的に私はこの記事で紹介している手法のいくつかを、リサーチの知見を伝えるために使用しました。ペルソナ、ストーリーボード、ユーザージャーニーマップです。しかし、作成した中でもっとも影響力があったのは、デザイン原則でした。たとえば次のようなものです。

顧客を覚えておいて、以前中断したところから再開できるようにする。

この原則は、旅行プランを選んで予約するには、必ず複数のステップがあるため、どのタイミングでもスタッフが対応できるということが重要であることを強調しています。デザイン原則はUXリサーチの知見を伝えるだけでなく、店舗スタッフに新しい旅行予約システムのデザインを提供することにも役立ちます。

デザイン原則のさらなる情報

デザイン原則の例はデザイン原則:FTW(FTW は 「For the win:勝利のために」の略)をご覧ください。また、以下の記事もおすすめです:Gov.UK – Government Digital Service Design PrinciplesLuke Wroblewski’s guide to Developing Design PrinciplesCXPartners guide to Design PrinciplesStanford d.school design principles method guide


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2017/12/05(火)
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