いつからか私たちは、Webをほかのマーケティングチャネルと同じように扱い始めました。私たちが持つチャネルにはテレビ広告、ラジオ広告、印刷物、そしてWebがありました。しかし、ほかのチャネルとWebは異なるものであり、それをきちんと認識しなければ、潜在顧客を遠ざけてしまうでしょう。
なぜWebは異なるのか
Webサイトとほかのマーケティングチャネルとの間には大きな違いがあります。それは、サイトの訪問者があなたのオファーに対して既に関心を持っているということです。
少し想像してみてください。新聞広告を出す場合、その広告を見る人々は製品やブランドに何も関心がないかもしれません。広告の目的は、注目を集めて興味を刺激することです。同じことが、テレビやラジオなどの伝統的なマーケティングチャネルにも言えます。
しかしオンラインでは違います。Webサイトを選んで訪れているのです。人々は面白そうなリンクをクリックしたり、URLを入力したり、検索をしたりします。彼らは、「私にはニーズがあり、どのようにそのニーズを満たす手助けをしてくれるのかに興味がある」と言います。
ユーザーは疑問への答えを求めている
Webを使うとき、私たちは疑問を持っていて、その答えを探しています。Webサイトの役目は疑問への答えを提供することです。しかし、多くの場合、私たちは疑問に答えることよりも、説得することに興味を持ちます。皮肉なことに、誰かを説得する最善の方法は、その人の心配事を解決することです。つまり、その人が持つ疑問に答えることなのです。
このような考え方を持ってから、私たちがWebサイトに取り組む方法は完全に変わりました。「自分たちが何を伝えたいのか?」という前提から始めるべきではありません。「ユーザーは疑問に対してどのように答えてほしいのか?」という前提から始めるべきです。
この思考は、サイトの構造から各ページのコンテンツに至るまであらゆる点に影響します。企業のタグラインにさえも効果を持つのです。
幸せな広告文は答えの邪魔になる
ユーザーがWebサイトに到着して最初に抱く疑問は何でしょうか? 答えは、「いま自分は正しい場所にいるか?」です。優れたタグラインとは、会社が提供しているものを要約することで、この質問に答えます。しかし、ほとんどのタグラインは、意味をなさない幸せな広告文を掲げています。有益な文章よりも巧みな文章を目指してデザインされているのです。
マーケターを非難するのは簡単です。しかし、責任はすべて私たちにあります。私たちが座ってコンテンツを書くときに問題が起きるのです。私たちは、人々に自分たちの考え方を納得させることに躍起になるあまり、彼らが何を欲っしているのか考えられていません。そのため、コンテンツを書くときにはいつも、「ユーザーのどのような疑問に答えているのか?」という疑問から始めるべきです。
疑問から始める
私はクライアントと一緒にサイトを作るとき、彼らにユーザーが抱く可能性のあるすべての疑問を書き留めるよう求めます。これらの質問は、Webサイトのコンテンツの基礎となります。コンテンツを書く出発点として使用されるだけでなく、サイトの構造の基礎にもなるのです。
疑問がサイトの中心にあるべきだと私は信じています。そのため、私はリデザインするときにコンテンツをそのまま移行することに反対しているのです。Webデザイナーのほとんどは、自分たちが伝えたいことを中心にサイトを構築しているので、ユーザーのニーズを満たすことができない可能性が高いでしょう。つまり、UIをどれだけ改善しても、サイトのユーザビリティは向上しません。
さらに、ユーザーの疑問に焦点を当てることで、多くのコンテンツを削除できることに気づくでしょう。実際には誰も興味を持っていないのにも拘らず公開されているコンテンツはユーザーの助けにならず、むしろユーザーの気を散らす原因になります。
よって、次に同僚やクライアントとコンテンツを考えるときには、ユーザーの疑問から始めてください。それだけでなく、自分自身のWebサイトで作業しているときも、技巧を凝らそうとする衝動や説得しようと躍起になる衝動を抑える必要があります。できるだけわかりやすく正直にユーザーの疑問に答えてください。人々がこのとてもシンプルかつ(残念なことに)珍しいアプローチにどれほど好意的に反応するか、きっと驚くことでしょう。