コストを最小限に抑えた実用最小限ペルソナ(MVPs)とは?

Neil Turner

Neilは、イギリスのAstraZenecaで働くUXデザイナーです。現在さまざまなUXデザインのプロジェクトを率いています。

この記事はUX for the Massesからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Minimum viable personas (MVPs) (2016-09-18)

私は頭文字をとった略語が大嫌いです。そのような略語は、正しい言葉を使うことすら面倒な人たちや、秘密の暗号を使ってグループを周囲から遠ざけたい人たちが使うものです。私はコンピューターではないのですから、私が理解できないような短いコードで話しかけないでください。

そういうわけで、すでに頭文字をとった略語で溢れかえっているこの世界に、新たに略語を提案するのは心苦しいのですが、悲しいことに多少の2次的被害は時として避けがたいものです。

私が提案する新たな略語とは、MVPs(Minimum Viable Personas:実用最小限ペルソナ)です。

MVPsとは何でしょうか? 答えは、実用最小限の製品とまったく同じように、活用するのに「必要十分なだけの」ペルソナです。つまり、必要な情報と詳細だけをもつペルソナです。

ペルソナは、UXデザインプロセスにおいてとても便利ですが、必要以上に時間や労力が費やされることはありませんでした。MVPsは、質素ながら欠かすことのできないサンドイッチのようなものです。確かに、これまで食べたものの中で一番おいしいものではありませんが、空腹を満たすには「十分な」ものです。

私は以前の記事で、ペルソナにさらなる活用の余地がある理由をまとめました。また、多くのデザイナーがペルソナを好まない理由もいくつか紹介しました。その理由の1つに、ペルソナの作業に時間と労力をかけすぎているというものがあります。それに対して、MVPsは、時間と労力を最小限に抑えることでこの問題を解消することができます。どういうことか説明しましょう。

ペルソナとバーベキューの共通点

かつてイギリスのBBCに、Fast Showという素晴らしいバラエティ番組がありました。その番組の登場人物の1人に、Swiss Toni氏という人がいました。Toni氏によれば、人生のほとんどすべての状況は、「美しい女性を愛するようなもの」として説明できるそうです。コーヒー作りを例に考えてみましょう。

「コーヒーを作ることは、美しい女性を愛するようなものです。きっとホットなことでしょう。時間をかけなければなりません。また、優しく、一方でしっかりとかき混ぜなければなりません。そして、こすれた音が出るまで豆を挽かなければなりません。」

私はどうしても、MVPsが「美しい女性を愛するようなもの」であることを示したかったのですが、それでは自分がどこに向かってしまうのか不安でした。そのため代わりに、MVPsが「バーベキューを料理するようなもの」であることを示すことで、記事の体裁を保ちたいと思います。

バーベキューとMVPsには、一体どのような共通点があるのでしょうか? それは、きちんと準備することと、正確な時間を判断することに尽きます。

「正しい」炭火焼きのバーベキューをした経験がある人なら誰でも知っているように、食べものをすぐに焼こうとするとまだ火が燃え盛っているので、食べものが台無しになってしまいます。外側は焦げてしまっているのに、中は生焼けのままです。

たとえ火が収まるのを待ったとしても、そこから綱渡りのような作業が待っています。十分に焼かなければ、食中毒を起こす恐れがありますが、焼きすぎると食べることはできても焦げていて美味しくありません。

バーベキューが得意な人は、バーベキューの準備に必要な時間と労力をかけて、適切な時間で食べ物を焼くことが重要であることを知っています。準備が十分でないと料理は失敗します。また、調理時間が少なすぎても多すぎるても美味しい料理は作れないでしょう。

ペルソナもまったく同じです。ユーザーのインサイトやユーザーリサーチの結果を踏まえるという必要な準備作業をしないでペルソナを作成しても、そのペルソナは黒焦げでとても使えません。ペルソナを設定する時間が少なすぎると、おそらくプロジェクトチームはたくさんの危険な仮説や根拠のないユーザー情報によって中毒を起こすでしょう。逆に設定に時間をかけすぎても、焦げた手遅れのペルソナになってしまいます。最初にペルソナを作成する段階で、必要以上に時間を消費してしまうだけでなく、チームやステークホルダーに対して、必要以上に情報を提供してしまうことになるでしょう。

ペルソナを作るのはバーベキューのようなものです。どちらともきちんとした準備と正確な時間が求められます。

バーベキューとはおいしい食事を作るための手段です。同じように、ペルソナもユーザーに素晴らしい体験を作るための手段です。よって、ペルソナの設定に費やされる時間と労力も、1つの手段に費やすのに相応しい量であるべきです。美しく詳細まで作り込まれたペルソナを数週間もかけて作成するより、午前中や数時間だけの間に、一連のMVPsを作りましょう。その方法について説明します。

MVPsの作り方

MVPsを素早く作るための優れた方法は、ワークショップを2~3時間行うことです。ユーザーに詳しい人たちを数人招きましょう。その人たちと直接的なコンタクトがあると理想的です。たとえば、営業担当者やサポートスタッフ、マーケットリサーチの人などが挙げられます。

もしユーザーについての情報が比較的少ないとわかった場合は、ワークショップの前に、即席のユーザーリサーチを実施する必要があります。プロトペルソナとは異なり、MVPsは、常に伝統的なユーザーリサーチに基づいていなければなりません。オフィスを出て、ユーザーの記録を取りましょう。彼らがどんな人で、どんな理由で動いていて、何を重要だと思っているのかを突き止めてください。時間をかけすぎてはいけませんが、少なくとも、ユーザーがどんな人なのかについて、いくらか知見を得る必要があります。そうでないと、MVPsはただの虚構になってしまい、虚構のユーザーに向けてデザインされたものが良いものになることは決してありません。

共同ワークショップはMVPsを作成する優れた方法です。

1. ユーザーグループを決定する

ユーザーリサーチを除いて、最初にやるべきことは、ユーザーグループを決定することです。この作業はワークショップの前にもできることです。そうすることで、ユーザーグループをある程度想定した上でワークショップを始めることができます。

ユーザーグループを特定するときには、階層の違いよりも行動の違いを探しましょう。たとえば、食料品のECサイトに向けて製品をデザインしていたら、購入する必要があるものをすべて決めてからネットを見るユーザーグループがいることに気づくかもしれません。このユーザーグループは、あらゆる年代やバックグラウンドの人で構成されている可能性が高いです。しかし、共通の行動をとっているという点で、1つのペルソナにこのグループを含めることができます。

ワークショップの最初の段階でユーザーグループについて議論して、決定しましょう。結果的に、真っ先に焦点を当てるべき重要なユーザーグループを特定するのにも役立ちます。

2. それぞれのユーザーグループにMVPsを設定する

ユーザーグループが決定したら、手元の情報と知識を駆使して、協力してそれぞれのグループにMVPsを設定します。もっとも重要度が高いグループから開始し、1つのペルソナにつき30分以内で作成するようにします。そうすることで、ワークショップの時間内にすべてのペルソナを完成できるでしょう。

それぞれのペルソナに関する重要な情報を把握してください。以下の項目から始めるとやりやすいです。

  • 名前―覚えやすい名前とキャッチコピーを付けましょう。
  • 目的―彼らが達成したいものは何でしょうか?
  • バックグラウンド―彼らはどんな人ですか? どんなバックグラウンドがありますか?
  • ニーズ―彼らにとってもっとも重要なことは何でしょうか?
  • 態度―製品に対してどのような関係を求めるでしょうか?
  • ストレス―ペインポイントは何ですか?

推測しなければいけない部分もあると思います。その場合、後で検証できるように、推測した部分を把握しておいてください。さもないと、間違った前提に対してデザインすることになります。

Anthony Reyes氏によるMVPsの例

3. 写真と詳細を加える

ワークショップのあとは、好みに応じてMVPsに少し磨きをかけましょう。読みやすくて理解しやすいように、ストックフォトではない写真を加えたり、多少情報を加えたりすると良いでしょう。

写真と詳細を加えたMVPsの例

4. ペルソナを使う

ユーザーがどんな人なのか全員で議論して、ユーザーについての理解を共有することはとても役立ちます。しかし、MVPsを実際に活用できないのであれば、作成する作業は無意味になってしまいます。

・・・

私は以前、シナリオ体験マップユーザーストーリーマップストーリーボードシナリオマップなどのデザインストーリーにおいて、ペルソナがどれほど重要であるかについて記事を書いてきました。

そこで次回の記事では、実際にプロジェクトで活用するための5つの具体的な方法を紹介したいと思います。


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