フリクションは必ずしもUXに悪影響を与える訳ではない

Nick Babich

Nickはロシアのセントピーターズバーグ出身のソフトウェアデベロッパー/ブロガーです。彼による他の記事はこちらをご参照ください。

この記事はNick Babichからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

When Friction In Design Is Good For UX (2017-07-17)

フリクション(摩擦)に対して、多くのデザイナーは悪いイメージを抱いています。デザイナーにフリクションについて尋ねると、フリクションはインタラクションを遅くし、コンバージョンを下げ、進行の妨げになるので、UXを劣化させると多くの人が答えるでしょう。

フリクションのないデザインは、ビジネスにおいて新たな目標となっています。そのためデザイナーも、物事がAからBへと、もっとも素早く円滑に、効率的な方法で移行するためのアイデアばかりに固執しているようです。

その良い例として、有名なAmazon Dash Buttonがあげられます。ユーザーはAmazon Dash Buttonがあれば、特定の商品を補充するのにたった1回のクリックで注文が可能です。

フリクションのないデザインとは、体験によって必要な労力を減らすものです。

手短で簡単なUXが理想的であることは、きわめて理に適っているように思えます。しかし、これは必ずしも真実ではありません。

Sangeet Choudary氏は次のように適切に説明しています。

「デザインにおけるフリクションは、インタラクションを妨げることなく促進する場合は、逆に役に立ちます。」

実際、フリクションはときとしてUXを改善します。ここでは、フリクションが製品のUXを改善する4つの場合を説明します。

1. ユーザーの判断の誤りを防ぐ

重要なアクションの確認をするダイアログ

製品やサービスにフリクションを導入することで、ユーザーが自身の行動について考える大切な機会を作り出すことができます。フリクションはユーザーに考える猶予を与え、間違いが起こるリスクを減らします。なぜなら、フリクションに対処するために労力が必要なおかげで、意思決定のプロセスをしばらく止める必要が生じ、その間に人々は立ち止まって分析ができるからです。

フリクションがユーザーに内省や批判的思考をうながすことで、ユーザーは無意識の作業から抜け出すことができます。

ユーザーはフリクションにより、実行しようとしている行動を考え直すことができます。フリクションが安全性を高める優れた例として、ユーザーが消去を確かめなければならないシステムダイアログがあげられます。こうしたダイアログを目にしたら、ユーザーは「これは本当に自分が実行したいことだろうか?」と自問するでしょう。注意してほしいのが、ここでもっとも目を引くボタンは「キャンセル」であることです。

こうしたダイアログを目にしたら、ユーザーは「これは本当に自分が実行したいことだろうか?」と自問するでしょう。

2. スキルの構築に役立つ

教育、ゲーミング

フリクションは混乱を招き、認知的負荷(cognitive load)を増やすことがあります。デザインがユーザーを悩ませる場合、一般的にフリクションは悪いものです。しかし、教育製品においては、フリクションによって結果が改善することがあります。

安全性の面でフリクションが間違いを防ぐのに役立つことは確認しましたが、重要なのは、すべての間違いがユーザーにとって悪いものではないということです。自転車を乗れるようになったときのことは多くの人が覚えています。乗れるようになるまではトライアンドエラーの連続でした。しかし、多くの人がそれを乗り越え、自転車を乗りこなせるようになったはずです。

フリクションを苦痛の時間から面白い挑戦へと変化させましょう。

人は成功よりも失敗から多くのことを学びます。

ゲームがその良い例です。フリクションはゲームの中で、学習をうながすために利用されます。私たちはゲームにおいて、実際に楽しみながら初心者から上級者に成長します。フリクションのないゲームは誰も好みません。なぜならフリクションのないゲームはまったく面白味がなく、何の意味もないからです。

ゲームデザインでは、フリクションはペインポイントをわくわくする挑戦へと変化させることができます。

ゲームデザイナーはフリクションを利用して学習をうながし、ペインポイントをわくわくする挑戦へと変化させます。

しかし、フリクションに関してデザイナーが慎重にならなくてはいけないのが、面白さと苛立たしさは紙一重だということです。挑戦のハードルが低すぎるとゲームは退屈になり、高すぎるとやる気が削がれます。ゲームデザイナーは、フリクションを使いこなしてきたと言えます。

挑戦が過大だとストレスを招き、過少だと無関心になります。

3. ユーザーの気分を良くする

達成感(IKEA効果)

2011年に Harvard大学、Yale大学、Duke大学の事業調査員が行った一連の実験において、人は他人が作ったものより、自分で生み出したり構築したりしたもののほうに価値を感じることが立証されました。これはIKEA効果と呼ばれるものです。

物事に労力を注げば注ぐほど、それはあなたにとって価値あるものになります。

これはIKEAの食器棚だけでなく、アプリやWebサイトにも当てはまります。

つまり、努力は愛着に繋がるのです。私たちが幸せであるために努力は不可欠です。人は一度何かに時間と労力を注ぐと、それを途中で投げ出しにくくなります。

人は達成感を味わいたいと思っています。なぜなら、味わうことで、自分に能力があり、意のままに操っていると感じることができるからです。

他方、同時に次のことも忘れないでください。

  • 努力が愛着に繋がるのは、ユーザーがタスクを上手く達成できた場合に限られます。
  • 要した努力の量に勝る見返りが必要です。ここで難しいのは、ユーザーによって十分だと思う見返りが異なるということです。

4. 品質を向上する

ユーザーの獲得について考えるとき、フリクションがトラクション(編注:ユーザー数や売上の獲得に結び付ける力)の最大の敵になることは、容易に想像できるでしょう。これが、多くの製品が申し込みのプロセスを簡単にしている理由です。しかし、簡単にしたことが実際に効果を発揮するのは、ユーザーの満足度がほかのユーザーに左右されない場合に限られます。一方で、ユーザーがコンテンツを作成するようなサイトでは、フリクションが役に立つことがあります。

ユーザーやインタラクションの質によって体験が優れているかどうかが決まるサイトの場合、フリクションが有効です。

Product Huntを例にとってみましょう。仮に誰でもProduct Huntにプロダクトを投稿することができたら、このサイトでの体験は、スパム業者によってProduct Huntのサポートチームにとって悪夢のようになってしまうでしょう。そのため、サポートチームはまず投稿できる人をキュレーションしたあとに、コンテンツを慎重にキュレーションしています。

Product Huntでは、優れたUXデザインのために悪いユーザーを取り除く必要があります。

結論

フリクションは悪評で有名ですが、本質的に悪いものではありません。ほかのデザインツールのように、適切なコンテキストにおいて使用されるべきものです。フリクションは正しく使われれば、より良い体験を生み出すのに役立つ強力なツールとなるでしょう。