スカウトミーに見るスタートアップのLeanUXケーススタディ

浦岡憲二

インターネットメディアの開発・運営を行うstudio Usagi株式会社のプロダクトマネージャ 兼開発者。Webサービスの開発に20年間、携わっている。

この記事は、ITエンジニア専門スカウト転職サービス「スカウトミー」による寄稿記事です。スカウトミーでは、求人情報の検索や応募が一切不要。プロフィールを登録するだけで採用企業からスカウトメールが届き、自分に合った企業を見つけることができるサービスです。

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スカウトミー」のプロダクトマネージャー兼開発者の浦岡です。今回はスカウトミーの、およそ半年間にわたるLean UXケーススタディをご紹介します。

ITエンジニア専門スカウト転職サービス「スカウトミー

スタートアップにおける3ヶ月の法則

弊社には、スタートアップの鉄則として「3ヶ月の法則」なるものがあります。新サービスの立ち上げは、理想のUI/UX設計を一から始めることができる非常にエキサイティングな機会です。しかし人間とはわがままなもので、わくわくしながら始めたプロジェクトも、終わりが見えない、あるいはゴールまでの期間設定が初めから長過ぎると、途中から一気に失速してしまい、体力のないスタートアップではリリースすらできないといった事態を招いてしまいます。そこで我々は、3ヶ月以内にリリースできないものはチャレンジしないと決めています。

これだけ聞いてしまうと、小さくまとまったサービスしかチャレンジできないではないかと思われてしまいますが、ここで言うリリースとは、必ずしも正式リリースである必要はありません。開発部署内リリース、社内リリース、ベータ版リリースなど、どんな形でも構いません。適度に区切りを付けることが、走り続けるために必要なことだと考えています。

スカウトミーにおける開発ケーススタディ

スカウトミーの開発は今年の2月2日、以下3名のチームでキックオフしました。

・エンジニア:1名
・デザイナー:1名
・ディレクター兼デザインアドバイザー:1名

初回リリースは社内テスター向けに、4ヵ月後の6月中旬に行いました。スタートアップにありがちな他業務との兼業もあり、1ヶ月ほど遅れる結果となりましたが、作業期間自体はちょうど3ヶ月でしたので「3ヶ月の法則」通りとなりました。そろそろ開発モチベーションが低下し始めそうな頃だったので、やり足りない気持ちはあったもののリリースすることにしました。

UI/UXフレームワークの選定はたったの5分

スカウトミーのUI/UXフレームワークは、別サービスで実績のあった既存のものを採用しました。最低限必要な機能の開発ボリュームから換算すると「3ヶ月の法則」を遵守するには、新しいフレームワークを一から作るという選択肢は現実的ではありませんでした。また、既存のサービスがUXにおいて、特に大きなトラブルを抱えていなかったことも大きな理由の一つです。

従って、デザインカンプによるコンペなどは一切行わず、

開発者A:「開発期間は最小限に抑えたいし、いつものPC/スマホ出し分けなし1カラムレスポンシブで行きたい。」
開発者B:「いいと思います。細かい所は後で詰めましょう。」
開発者C:「いいと思います。」

5分程度のこんなやり取りだけでスタートしました。

採用したUI技術は以下となります。

・PHP/HTML5/CSS3(サーバサイド・レンダリング)
・Bootstrap
・Sass
・Font Awesome
・jQuery
・Handlebars.js(一部、クライアントサイド・レンダリング時に使用)

昨今、JavaScriptフレームワークを用いたSPA(シングルページアプリケーション)が増えていますが、開発リソースに余裕のないスタートアップでは、採用に踏み切るのがなかなか難しいのではないでしょうか。

レビューと修正を繰り返す日々

キックオフから3ヶ月目にして実現したお披露目ですが、見切り発車だったということもあり、テストレビュアーの反応は散々なものでした。

「入力が面倒」
「この後、どうしていいか分からない」
「そもそもサービス内容が良く分からない」

ネガティブな反応は、開発者にとって堪えるものかもしれませんが、「もし、この低評価がまったくなかったら、あのイケてないままの状態でリリースする事になっていたんだ。」とあくまでプラス思考で受け止めました。

最終的には、このレビュー&改善作業のサイクルを、社外のボランティアの方を含む計10名のテスターによって、8月中旬までの2ヶ月間に渡って行いました。更に、スカウトミーの顧客となる採用企業にもコンタクトを取り、10社ほど要望点などのリサーチを試みました。

UXを数値化することは難しいですが、この期間にサービスは劇的に改善し、リリース後のコンバージョンアップに大きく貢献してくれるのではないかと期待しています。

テストレビューにおいて大切なこと

新サービスには当然ユーザーはまだ存在しません。テストレビューは、ユーザーの生の声にもっとも近い重要な要素ですが、この声にだけ耳を傾けていれば素晴らしいサービスになるかと言えばそうではありません。では、一体どのようなことが必要なのでしょうか。以下にまとめました。

1.レビューの指摘は氷山の一角

テストレビューはサービスが抱える問題のすべてを指摘してくれるとは限りません。指摘された点を丁寧に一つずつ解決していくと共に、その背後に別の問題が潜んでいないかを考察し改善していかなくてはなりません。

「入力が面倒」
「この後、どうしていいか分からない」
「操作がしづらい」

こういった声が挙がったときには、木を見て森を見ずとならぬよう、

・フローチャートそのものに問題がないか
・独りよがりに機能を盛り込み過ぎていないか
・分かり易さを追求するあまりシンプルなUIになり過ぎていないか

など、入念に検討する必要があります。

2.ユーザーの声が必ずしも正しいとは限らない

レビュー結果は貴重な意見として受け止めつつも、すべてを受け入れることによって、サービスのコンセプトがぶれてしまう様な事態は絶対に避けなければなりません。時には、あえて対応しないことも必要となります。

たとえば、スカウトミーの場合では、「とりあえず基本情報だけ登録して貰い、後から詳細スキルを追加する様にした方が登録ユーザー数が増えていいのでは?」という指摘もありました。確かに一部は真理であるのですが、スカウトミーは他の転職サービスとは異なり、スカウト機能のみを提供する特殊なサービスであるため、スカウトする為に最低限必要なスキル情報すらない登録は無価値であるというコンセプトをぶらさないよう心掛けました。

3.開発メンバー自身が一番のユーザーになる

開発メンバーは、そのサービスの一番のユーザーにならなければなりません。PC、スマホ、タブレットで、とことん使い倒さなければなりません。そして、開発者のテストはどうしても開発者目線になりがちですから工夫も必要です。時にソファーで寝転びながら、電車に乗ってつり革を握りながらと、頭をOFFモードに切り替えて操作をしてみると、デスクでは気付かなかったことが見えてきました。

4.たくさんのサービスを参考にする

レビューで、どんなに改善すべき点が割り出せたとしても、最適なUI改善策を打ち出せなければ意味がありません。良いUXは“無”からはなかなか産まれません。競合他社や類似のサービスは勿論のこと、人気のサービスや最新技術を取り入れたスタートアップのサービスなど、普段からたくさんのサービスに触れる必要があります。弊社では、UI/UX設計力は、いかに多くの良質なサービスを知っているかに比例すると考えています。

LeanUXで気を付けたこと

最後に、LeanUXを進めるにあたって気を付けたことをまとめました。

1.UIフレームワークのUX確認は初期段階に

新サービスの場合、デザイン作業に入る前に、UIフレームワークの設計から始めますが、MVP(実用最低限の商品=Minimum Viable Product)の機能単位ができた段階で必ず、制作にまったく携わっていない人にテストをして貰い、UXを確認します。レスポンシブ・レイアウトやテーマカラーをどうするかなど、ここで大枠を決定します。

後になって「想定のUXとは違っていた」とフレームワークを再設計することがないようにします。

2.テストスケジュールは計画的に

スタートアップには、テスト専門のメンバーがいるケースはほとんどありません。忙しい業務の合間をぬってテスト作業をして貰うことになります。頻繁過ぎたり、期限が急なテスト依頼は、大きな負担を掛けることになりますので、相手の立場に配慮したスケジュール計画を心掛けます。

3. 完璧に実装をしない

UI開発者たるもの1ピクセルの違和感すら許せませんが、スタートアップにとっては時間が一番の命です。初期段階ではほどほどに済ませるよう何度も自分に言い聞かせましょう。

4.MVPの品質を担保する

いくら時間が命だと言っても、完成度が低過ぎて、作った開発者にしか意味が分からない様なUIでは、かえってテストの時間を無駄にしてしまいます。たとえ社内リリースであっても、リリース時のつもりで考慮してUI設計を行います。

Webサービスの開発に終わりはない

以上、スカウトミーに見るスタートアップのLeanUXケーススタディをご紹介させていただきました。Webサービスの開発に終わりはありません。そして、UXは誰か一人のスペシャリストによって産み出されるものではありません。たくさんのユーザーと開発チームの仲間と共に、ブラッシュアップされ続けていきいます。スカウトミーは、まだ始まったばかりのサービスです。これからさらにUX向上を志して開発を続けていきたいと思います。

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提供・企画制作:studio Usagi株式会社
編集:UX MILK編集部