ケチャップボトルの事例で考えるユーザー体験の評価方法

Jeff Sauro

Measuring Uの創設者。シックスシグマに熟練した統計学分析者であり、ユーザーエクスペリエンスを定量化したパイオニアでもあります。

この記事はMeasuring Uからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

THE IMPORTANCE OF EVALUATING UX


ケチャップボトルを観察したことはありますか?

LinkedInで話題になったミームですが、ケチャップボトルを例にするとUI(ユーザーインターフェイス)とUX(ユーザーエクスペリエンス)の違いを上手く説明できます。

従来のケチャップボトルは単なるUIです。しかし、2002年に導入された、蓋とボトルが逆さまの状態で立てることができるケチャップボトルにはユーザー体験があると言われています。

UIとUXの混同

このミームを広めている人々に悪気はありませんが、この例には、UIとUXの違いを混同してしまう原因が現れています。実際には、両方のボトルともUIを提供していると同時にユーザー体験があるのです。

本来意図されているのは、新しいケチャップボトルのほうがより優れたユーザー体験を提供しているということです。なぜなら、ケチャップが底で溜まりやすいというユーザーにとって共通の課題に目が向けられているからです。

確かにこのケチャップボトルは優れたユーザー体験を提供しているのでしょう。しかし、単にデザインし直したからと言って、そして、たとえユーザーのことを考えてデザインし直したからと言って、ユーザー体験が良くなるとは限りません。

たとえば、上下逆さまに置くことができるケチャップのボトルをしばらく使用すると、ケチャップがふたの中にこびり付いてしまいます。さらに悪いことに、向きが逆さまなので蓋に圧力がかかってしまい、蓋を開けたとき衣服にケチャップが飛び散ってしまうことがあります。

インターフェイスが改善されることで、ユーザー体験も向上します。ユーザーは、より素早く満足度の高い方法でタスクを効率的に完了したり、以前はできなかったことを達成できるたりするかもしれません。

Heinzの優秀なスタッフはこのボトルを開発するために、繰り返し実験に基づいた調査を行いました。そして、面倒な課題は残っているものの、優れたユーザー体験を見つけたのだろうと思います。Heinzの調査チームによる報告書はボトルほど魅力的には映らないですが、優れたユーザー体験を提供するために必要なプロセスです。

私たちはケチャップに優れたユーザー体験を期待していますが、ケチャップボトルのデザインに責任を持っている人はほとんどいません。しかし、何をデザインするにしても、ユーザー体験を評価するためのシンプルなフレームワークを活用することができます。それがソフトウェア、Webサイト、携帯電話、そしてケチャップボトルだろうと同じです。

ユーザー体験を評価し、改善するフレームワーク

ユーザー体験を評価し改善するフレームワークは、比較的シンプルで柔軟なものです。MeasuringUでも広く活用されていて、シックスシグマのDMAICの手法に基づいており、多くの組織でさまざまな製品に適用されています。

1. 結果の指標を定義する

指標と開発目標は対応しているべきです。その項目としては、検索性完成度推奨する可能性、購入率などが良いでしょう。ケチャップボトルであれば、ケチャップの出しやすさや所用時間、液漏れの原因も指標として使えるかもしれません。

2. 対象となるユーザーとユーザーの目的を定義する

ユーザーはどんな人で、何をしようとしているのでしょうか? ユーザーを理解するための意向調査と、多くの些細なタスクから少数の重要なタスクを区別するトップタスク分析を組み合わせた手法を使用します。

ケチャップボトルであれば、目的は「ケチャップを出すこと」だと定義して間違いないでしょう。また、サンプル対象からケチャップを好きではない人を排除するべきです。

3. ベースラインを測定する

以前どの時点で変更がなされたかを把握しなければ、ユーザー体験が改善されたかどうかがわかりません。まずは、サンプル対象に既存製品で最重要なタスクを実行してもらい、定義したユーザー体験に関する指標を集めましょう。

4. デザインの変更を実施する

新しくデザイン、機能、ブランディング、バグ修正を実施します。ここでは繰り返し検討を重ねることが大切です。そして、早めに失敗しておくと良いでしょう。

Heinzも新たなケチャップボトルを決定するまでに、何度も反復を重ねたのだと思います。下の写真のような先の細いケチャップボトルはうまく使用できるのでしょうか? 採用したら、どのような問題が新たに生じるのでしょうか?

5. デザインし直したものを測定をする

変更後にもう一度デザインを測定することを忘れないでください。サンドイッチは具の上下に2枚のパンが必要なように、デザインの前後には必ず評価をしましょう。

変更した結果デザインが改善されることは、保証されているように思えるかもしれませんが、本当に改善されたのでしょうか? どの程度改善されたのでしょうか? デザインし直したことで生まれた新たな問題は、デザインプロセスに導入されていますか?

ここでは、新しいデザインが持つ潜在的な欠点について、ケチャップをボトルから出す点を改善する価値があるかどうかを見ています。そして、改善する価値があるのであれば、実際に測定して示す必要があるのです。

結論

あらゆる製品、Webサイト、デザインにはUIがあります。そして、それが使用されれば、ユーザー体験が生まれます。ユーザー体験の良し悪しを決定するのは、受賞数や賞賛の数ではありません。もちろん、それらを獲得するのは素晴らしいことですが、本当に良し悪しを決めるのは優れた測定可能な結果に基づくものです。

指標、ユーザー、タスクを定義して、デザイン変更の前後に測定するフレームワークを活用しましょう。それによって、ユーザー体験を定量的に向上させることができます。


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