これからのIoT時代において考えるべきユーザー体験

Armen Ghazarian

アルメニアのUXコンサルタントであり、洗練された使いやすいデジタル製品に対する大きな情熱を持っています。 @armen_ghazaryan

この記事はDesignmodoからの翻訳転載です。配信元または著者の許可を得て配信しています。

Internet of Things (IoT): The UX Challenges (2016-01-11)

ファンタジー映画は好きですか?

もしそうでなければ、そろそろ見始めるべきかもしれません。過去10年間にSF映画やファンタジー映画で観ていたものが、さまざまな新技術の開発によって現実になってきているのです。

私たちの日々を取り巻くモノは、さらに賢く、時には人間よりも賢くなっています。このことについて客観的に考えると、楽しいばかりではなく、不安を感じることもあるでしょう。しかし、私は常に技術の進歩には賛成派で、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)についても例外ではありません。 IoTは次世代の目玉で、既に現実に存在します。


広く認知されているIoTの定義は次のようなものです。「IoTとは、モノ、動物、または人々が一意のIPアドレスを持つことで、人と人、人とコンピュータのインタラクションの必要なく、ネットワークを介してデータを転送するもの。」

現在IoTは注目を浴びつつありますが、IoTは新しい概念ではありません。いくつかのテクノロジー企業は、インターネットに接続されたスマートガジェットの開発にかなりの時間を費やしてきました。今年の技術博覧会で、さまざまな革新的な製品が発表されていたのはこれが理由です。これまでの急速な発展からわかるように、IoTは今後数年間でさらに成長し、最終的には私たち全員がIoTに触れるようになるでしょう。

したがって、UXデザイナーは、UXやユーザビリティの面で生じる課題を踏まえて、ユーザーにとってその解決が受け入れられるものかどうか確かめる必要があります。

接続の問題

まずIoTとは、名前の通り、人間の介入なしにデータがデバイス間で転送される方法であるため、インターネットに接続されていなければ何も始まらないことを理解しましょう。いま存在するIoTデバイスのほとんどはWiFi経由で動作していますが、接続が無線であるかどうかは関係ありません。


さて、いま一度スマートフォンとコンピュータについて考えてみてください。恐らく誰もが、ビデオ電話中の接続不良や、Webサイトのローディングの遅れ、モバイルアプリのクラッシュなどといった接続の問題を経験したことがあるでしょう。ただ、そのような不具合は不愉快ではありますが、私たちはそれに慣れています。

しかし、トースターや室内照明、ガレージのドアなどでそのような不具合が起こるとは予想していません。毎日接するモノとのユーザー体験は、Webでの体験とは大きく異なります。

私たちは、ライトのスイッチを押せば、すぐに応答すると予想します。しかし、そのとき接続不良によって、ライトが消えるまで数分かかるとしたらどうでしょう。システムダウンによって、冷蔵庫を開けられないとしたらどうでしょう。ユーザーがこのような問題が起きることを理解しているかどうかはわかりませんが、特に第1世代のIoTではこのような問題は確実に発生します。

接続性の問題はIoT全体の体験に多大な影響を及ぼすことになるでしょう。技術的な問題であるため、これについて私たちUXデザイナーはほとんど何もできません。

複数のインターフェイスの問題

IoTのアイデアはかなり前から存在していましたが、消費者市場にはまだ参入し始めたばかりであり、依然として多くの課題や障害があります。主な問題の1つは、接続可能なデバイスがたくさんあり、1つ1つは賢く便利ですが、全体としては機能しないということです。つまり、IoTデバイスのコレクション全体を1つの場所から操作してデータを同期させることはできません。

たとえば、スマートカー、フィットネストラッカー、スマートサーモスタットを持っていたとしたら、それぞれに対して3種類のモバイルアプリを用意することになります。フィットネストラッカーのデータに基づいて部屋の温度を調整するといったルールの設定はできませんし、フロントドアがロックされたらすぐに車を始動させることもできません。

このことは、IoT製品全体のユーザー体験を損ないます。スマートデバイスの本来の目的は、ユーザーの生活をより簡単にすることだったのにも関わらず、この種の断片化されたUXは、私たちの生活をより複雑にしてしまう可能性があります。

しかし、この分野では進歩があります。 AllSeen AllianceやOpen Interconnect Consortiumのようないくつかの主要企業は、ほとんどのIoTデバイスの間で相互に作用できるようにするオープンスタンダードを作成するように努めています。

ユーザビリティについて

理論的には、IoTは私たちの生活を劇的に向上させます。「Don't Make Me Think」というSteve Krug氏の教訓が達成されるだけでなく、IoTは私たちのために考えるようにもなるでしょう。そして、単調で退屈な仕事に費やす時間が少なくなり、愛や友情のような、まだ機械化できないようなことに費やす時間が増えるでしょう。

これらの概念はすべて聞こえは良いですが、実際には、IoTはまだ未熟で、黎明期のWebサイトと同じように、最初はユーザビリティを損なうかもしれません。ほとんどの場合、ユーザーは新しいジェスチャー、アイコン、インターフェイスを習得し、覚える必要があるでしょう。シンプルなユーザビリティという面から見ると、現在のIoTはまったく使えないかもしれません。

たとえば、照明調整器について考えてみましょう。従来のやり方では1つの動作のみでライトを消すことができますが、「スマート照明」では、照明を消すのにスワイプでスマートフォンのロックを解除し、アプリを開き、正しいアイコンをタップするという、2~3ステップが新たに必要です。一方で、ソファでうとうとしている場合は、起き上がって電気を消しに行くことは間違いなく選択しないでしょう。その場合、「スマート照明」は便利かもしれません。

とにかく、現在のIoTデバイスについてヒューリスティック評価を行うと、気に入るような結果にはならないでしょう。だからといって、従来のユーザビリティについての知識や実践は、IoTにはあまり当てはまりません。したがって、新しいデバイスにおけるエンドユーザーの体験を研究し、それに応じて最適化することは、私たちUXデザイナーの仕事なのです。

結論

IoTのすべての課題に取り組む最善の方法は、UXデザイナー自身がユーザーになって、典型的なユーザーの手法を体験することです。そうすることで、UXを正確に改善する方法を発見できるだけでなく、ユーザビリティの主なペインポイントを突き止めることもできます。ただ、用心深く、密にデバイスを観察するようにしましょう。さもないと、トースターやスマートカーが持ち主に反抗するかもしれません。


イベント

2017/12/05(火)
Design Thinking Square