大学生が聞く:リクルートの大規模サービスにおける精巧なUXデザイン

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

この記事は、株式会社リクルートホールディングスの提供による連載記事の2話目です。

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UX MILK編集部でインターンをしている大学3年生の田中です。

前回、「UXデザインって何?」ということを聞いたので、今回は実際に既存サービスのUXデザインをどのように行っているかを聞いてみたいと思います。

立石 信介
株式会社リクルートテクノロジーズ

株式会社リクルートテクノロジーズに所属。IA,UX全社横断組織にて、リクルートグループの様々なサイトの立ち上げ支援、改善業務に従事してきた。現在は、UXデザイナー職の社員向け教育プログラム設計、運用などを中心に育成、組織運営をおこなっている。

新規事業と既存事業におけるUXデザインの違い

― 立石さんがどのような仕事をしているのか聞いてもいいですか。

リクルートグループの各サービスの新規立ち上げや改善を行ってきました。

― 前回、岩佐さんからUXデザインの概要をお聞きしたので、今回は既存サービスのUXデザインについて聞かせてください。

UXデザインは端的に言えばユーザーの課題解決なので、ユーザーが既存サービスを使うときの課題を見つけて解決するということをしています。

― 新規サービスと既存サービスで違いはありますか?

ユーザーの課題解決という意味では同じですが、ひとつひとつの施策のインパクトが違います。リクルートの既存事業の場合、ひとつのサービスでもユーザー数が数千万人という規模なので、たった1%の変化でも数十万人のユーザーに影響があります。

大規模サービスでコンバージョン率が0.1%でも変わると、1日の売上にかなりのビジネスインパクトが出てきます。これが新規サービスとの大きな違いであり、意図した体験が多くのユーザー行動に影響するところが、UXデザイナーとしての醍醐味でもあります。

― そんなにも大きな影響が出るのですね。

そうです。そのため、影響範囲を限定して施策の効果を検証するために、リクルートではABテストという手法を使っています。

ABテストは簡単に説明すると、AパターンとBパターンのデザインを用意して、ユーザーの半分にはAパターンを、もう半分にはBパターンを表示してどちらが効果的か検証する方法です。

― ABテストについてよく知らないのでもう少し教えてもらうことはできますか?

具体的な事例でお伝えすると、カーセンサーでチャットで相談に乗ってくれるUI(以降チャットUI)を導入して成功した事例があったので、「ゼクシィ」の予約画面でもチャットUIを導入した事例があります。

従来のパターンとチャットUIパターンをユーザー毎に出し分けてリリースしたのですが、最初のリリースでは、カーセンサーのときと同じように効果がでるだろうと思われていた、チャットUIパターンのほうがコンバージョン率が低いという結果になりました。

― パターンを分けることで、コンバージョン率にどう影響するのかわかるのですね。

その通りです。ただチャットUIでは、一旦入力を始めてもらえれば完了率は高かったので、次のステップとしてチャットUI自体を改善することにしました。そこで課題を分析していった結果、「チャット相手がいる感」のせいでチャットに億劫になってしまうなどの問題が発見されました。

これを解決するために、チャットはできるが、そこに人間味を感じさせないようなUIに変更しABテストをしたところ、コンバージョン率が向上したのです。

このように、パターンを分けてリリースし、課題を見つけて改善するということを繰り返し行うのがリクルートにおけるUXデザインの基本です。

3つの手法を組み合わせた課題抽出

― どのように改善が行われているかわかってきたのですが、そもそもどうやってその施策をしようと決めるのですか?

基本的には、ユーザーの課題抽出をして、その課題の解決策を考えて、具体的な施策としてリリースするという流れになります。

― ユーザーの課題抽出ではどのようなことをするのですか?

さまざまな手法を組み合わせて、ユーザーが抱えている問題を発見するのが課題抽出です。

リクルートでは課題抽出のスキームがあり、定量データ、定性データ、専門家によるレビューという3つの手法を組み合わせて課題を見つけています。

― 3つの分析を組み合わせた課題抽出というのが、あまり具体的にイメージできないです……。

たとえば、サイトの分析をして離脱率が高いページが見つかったとします。離脱率というのは、そのページからどのくらいの人が離脱してしまっているかという割合を示すものです。

これだけ聞くと離脱率が高いページは駄目だと思うかもしれないですが、そのページに問題があるとは言えないんですよね。

― サイトから離脱してしまっているのに問題がないこともあるのですか?

あります。たとえば、あるお店があって、ユーザーがお店の中に入ってきて商品を見て回り、いろいろ考えた結果その日は帰りました。そして、何回かお店に来訪して最終的に商品を買ってくれる。これはユーザーの行動からすればよくあることですね。

なので、離脱率が高いという定量データだけでは課題があるとは言えません。そこで、そのページで離脱率が高い理由を考えるために、定性データが必要となります。この場合、定性データは「ユーザーは何をしようとしていて、なぜ離脱したのか」というユーザー心理を明らかにするものです。

こうして手法を組み合わせることで、やっと正しい課題が見えてきます。

― 離脱率だけでもここまで分析するのですね。

そうです。悪い箇所を1つ直すのにもお金や人の工数がかかるので、改善施策を無駄打ちをすることはできません。なんとなく悪そうだからとりあえず直そうではなく、確実にユーザーの課題であると判断できた上で改善をする必要があるのです。

できるだけ問題を見つける精度を高めて、そこを直すと確実に病気が良くなるようにしています。

― なんだかお医者さんみたいですね。

その通りです。社内育成では、よくお医者さんにたとえて説明しています。まずは、ユーザーの行動を記録したログデータを見て、出血がないか調べます。新規サービスだと明らかに血がだらだら流れている箇所がいくつもあるので、止血しなきゃってなります(笑)。

そうやって止血をしていくとパッと見つかるケガがなくなる。そうすると、次は体の中を見なければとなり、表面上の離脱率ではなく、もう少し深堀りした定量分析をやるんですよ

ね。そうすると「ちょっと肝臓が悪いですね」みたいなことがわかるのでこれを改善していきます。

そのフェーズも過ぎると、今度はもう健康診断しても悪い数字はないとなります。でも、リスクとして病気になる可能性はあるので、これから先を考えた上で課題を見つけ出す必要が出てくるのです。

― 健康になったあとはどうするのですか?

たとえば、私はカーセンサーで8年ぐらい改善をしていたのですが、最初の頃は傷だらけで一生懸命止血していくみたいな感じでした。

ですが、いつの間にか見た目は健康になってきます。なので、次はブランド観点でどうすればユーザーに好かれるかという視点が必要になります。

課題の優先順位はコストパフォーマンスを重視

― 課題が見つかったあとは解決することになると思うのですが、どうやって解決していくのですか?

まずは課題に優先順位を付けていきます。初期の頃は1回の分析で100個くらい課題が見つかるのですが、もちろん全部を解決することはできません。そうすると、どれから着手するかという順番を付ける必要があります。その順番を付けるロジックは明確で、「アクションが増える施策」から優先的に着手します。

アクションというのは、サービスごとにある目標の達成のためにユーザーにしてもらいたい行動です。リクナビであったら「就活生にエントリーしてもらうこと」ですね。なので、リクナビを改善するのであればエントリーの数が増える施策から着手する必要があります。

― 直接売上を見ているのではないのですね。

売上をあげるために影響している要因はたくさんあります。なので、アクションと呼んでいる予約やエントリー、お問い合わせの数などを「中間指標」として切り分けて、そこでのアクション数を増やしていくことを目指してやります。

あとは、効果以外にも施策にかかるコストも見ます。たとえば、その施策をやったときの効果が数千万円で、実施するのに何億円もかかる場合は、そもそもできないですよね。そこで、その施策にかかるコストの見積もりをして「効果 × コスト」で決めるというのが基本的な考え方です。実際にはもうちょっと細かいですが。

成功事例をまとめることで解決策を導き出す

― コスパが良いものからやっていくのですね。優先順位を付けたら、いよいよ解決策を考えるのですか?

そうですね。課題が確かであればもう勝ったも同然で、あとはその課題をどう解決するかです。いよいよサービスの画面を直していくことになります。

私たちの仕事の一番わかりやすい成果物は「ワイヤーフレーム」です。これは、どのように画面の変更をするかを示す設計図ですね。たとえば、「このボタンに問題がありそう」とわかれば、そのボタンをどう変えるかっていう話になります。

ボタンの文言や色を変えますという簡単な改善策もあれば、サイト全体の情報の並びを大幅に入れ替えていくこともあります。

― 解決策のアイデアを出すのも難しそうだと思うのですが、解決策にもスキームがあるのですか?

解決策の型化は難しい部分で、同じような課題でも細部は異なるので共通した解決策というのはなかなかありません。

ただ、みんなが解決策のアイデアを発想しやすくするのは、まさに現在取り組んでいることです。たとえば、カーセンサーで成功した解決策は、ゼクシィでも通用するかもしれないので、成功事例をストックして知識を共有しています。先ほど話したゼクシィでのチャットUIの導入もその一例です。

― 改善のプロセスがなんとなくイメージできてきました。こんなにきっちりとしたプロセスがあるんですね。

サービスの規模が大きいので、きちんとしたプロセスが必要となりますね。サービスが大きい分だけ緊張感はあるものの、それだけビジネスインパクトの大きい仕事を行っているので、プロとしてとことん成果の精度を高めることに徹しています。

また前回の岩佐の話であったと思うのですが、リクルートは結婚や就職など「人生の転機」において価値を提供するサービスが多いので、自社のビジネスだけでなく社会的影響力も強いです。そのようなサービスにおけるユーザー体験を任せてもらえるのが、リクルートでUXデザイナーとして働く面白さでもあると思います。

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株式会社リクルートホールディングスでは、学生を対象にしたインターンシップ「WINTER INTERNSHIP 2018 UX DESIGNER」を今冬開催予定です。

テーマは、「ユーザーの意思決定にどこまでの影響を与えられるか」。

14日間のチーム対抗コンペティション形式のインターンシップとなっており、UXデザインの業務フローを網羅的に実務レベルで体験できるそうです。リクルートのサービスが抱える数千万のユーザー、そして数億回のアクションに影響を与えるユーザー体験を設計することができます。

学年・専攻は不問なので、UXデザインに興味がある方は応募してみてはいかがでしょうか。

応募締切 2017年11月9日(木)
開催期間 2018年2月13日(火)~3月2日(金)
募集人数 15名程度
開催場所 株式会社リクルートホールディングス 本社 グラントウキョウサウスタワー 他

インターンシップの募集要項を見てみる
(締め切りました)

提供:株式会社リクルートホールディングス
企画制作:UX MILK編集部