この記事は、株式会社リクルートホールディングスの提供による連載記事の3話目です。
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UX MILK編集部でインターンをしている大学3年生の廣瀬です。
これまでの2回では、「UXデザインとは何か」という初歩的な質問から、実際に行っているUXデザインまで伺ってきました。今回はより私たちに近い、入社3年目の若手UXデザイナーの方に、UXデザイナーとしてのキャリアや、この職業に対する想いを伺います。
水上 寛之
株式会社リクルートテクノロジーズ
2015年株式会社リクルートホールディングスにUXデザイナーとして入社し、リクナビ含む3サービスのUI設計・ディレクションに従事し、大規模サービスのデザインリニューアルを経験。 現在はカーセンサーにて、ブランディングを担当するグループに所属しUXの中長期戦略設計・実現に向けて動いている。
多趣味な自分の経験をすべて活かせる仕事がしたかった
― 初めに、水上さんのお仕事について教えてください。
現在は「カーセンサー」という中古車販売のプロジェクトを担当しています。カーセンサーは、中古車販売店と顧客をつなぐ手助けをするサービスです。
新卒のときは「リクナビ」の担当で、最近担当が変わりました。リクナビでは、サイトのデザインリニューアルなど割と大きな仕事を任せてもらっていました。
― 新卒のときからそんな大きなお仕事を任せられるんですね!
入社してすぐ数ヶ月間のITスキルの基礎を身につける研修があり、その後すぐに現場に入るという流れです。もちろん、先輩からレビューを受けたり、確認してもらいながら進めていくのですが、裁量は大きいですね。
― 水上さんは学生の頃からUXデザイナーを目指していたのですか?
UXデザインをやろうと思ったのは、就活を始めてからですね。
学生時代は色々なものに手を出していて、プログラミングをやってWebを作ったり、イベントのフライヤー作ったり、映像を作ってみたりVJしたり。就活などで「何になりたいの?」とよく言われたのですが、エンジニアやデザイナーなどの職種を挙げられてもいまいちピンとこなかったんですよね。自分のやりたいことってなんて呼べばいいんだろうって(笑)。
そんな中、「UXデザイナー」って仕事は、自分がやってきたことが全部活かせそうだと思ったんです。「体験価値を上げる」っていうUXデザインの理念って、自分のやってきたことすべてに適用されると感じました。
― UXデザイナーとして実際に働いてみて、どのように感じましたか? 想像通りでしたか?
サービスに対して幅広く色々なところに関わりたくてこの職種を選んだのですが、現実ではそうはいかなくて。クライアント側や関係各所がどう動いてサービスが成り立っているかなどは学生時代にはわかりません。なので、それを踏まえて自分のやりたいことを全部やろうとしたら絶対パンクするな、とすぐに思いました(笑)。
今はまずは自分がやるべきことを中心に、ワークフローを覚えていって、徐々に多くのアウトプットに関われるようなノウハウを貯めて行きたいと思っています。
そういう意味では最初に関わった「リクナビ」は、画面のUIなどの話からサービス全体のユーザー体験まで幅広く見ることができて、スタートとしてとてもいい環境だったと思います。
就活生の気持ちに寄り添ったUXデザイン事例
― 仕事をしていく中で、印象に残っているエピソードはありますか?
印象に残っている案件の1つに、リクナビのメンテナンス中の画面の改善があります。
リクナビは、新卒採用のエントリー開始の前日に、データの移行などで12時間程どうしてもサービスを止めなければいけない時間があるんです。以前その時間は、「メンテナンス中です。申し訳ありません」というような1画面だけが表示されていました。
でも就活直前って、「何から始めるんだろう」とか「緊張する」とか、ネガティブな気持ちが溜まっているじゃないですか。そんなときにリクナビに来て、「申し訳ありません」というそっけない画面だけというのは何だか寂しいし、最初からこのサービスを使うのが不安な感じがして嫌じゃないですか。
― 確かに物足りないように感じますし、出鼻をくじかれた感があるかもしれません。
はい。もう少し就活やリクナビに対してポジティブなイメージを持ってもらえるようにできないかと思ったんです。
そこで、縦長のLP(ランディングページ)を作りました。3月1日になったら何をすればいいか、リクナビをどのように使えばいいのかというように、就活期間のことをより具体的にわかるようなコンテンツにしたら、結果的に訪問者数がとても増加したんです。
たったの1画面ですが、ユーザーの気持ちに寄り添うことができたと、自分の中では印象に残っています。
― 就活生としてはメンテナンス画面よりもずっと嬉しい配慮ですね!しかし、なぜ今までその画面は注目されてこなかったのでしょうか?
3月1日からより高い品質のサービスを提供したいという想いが強く、注力していたので、その画面についてじっくり考えることができていなかったのかもしれません。
僕は新卒ならではの第三者的な視点があったからこそ、実現することができたんだと考えています。当事者でありながらも少し引いて考える、というマインドが、UXデザイナーには必要なんだと思います。
― みんなが気付いてないユーザーのニーズに気付くというのも、UXデザイナーの仕事なのですね。
ビジネスとして価値を上げることに注力するのは良いことですが、それだけでは不十分です。たとえば、他社さんのサービスよりリクナビのほうがいいよね、とユーザーに思ってもらうためにどうしたらいいか考えたとき、必ずしも数字からは見えてこないこともあります。そういったところを作っていけたというのは、UXデザイナーとして入った意味がある案件だったと感じます。
広告やPRもUXデザイナーの仕事
― 現在はカーセンサーを担当されているということですが、ここでもUXデザイナーとして関わっているのでしょうか?
カーセンサーでは、主にブランディングを担当するグループでプロモ・戦略PR・プロダクトの戦略を立てているのですが、プロダクトの3年間戦略を作ったりしています。
― UXデザイナーというより、広告担当のようなイメージですね…!
プロモーション、戦略PR、プロダクトのUXという3つが、ブランドのビジョンを反映するために相補的に動いています。ユーザー体験の定義は人によって違うこともありますが、僕は広告などもユーザーがプロダクトに触れる最初のポイントなのでUXデザインの領域だと思っています。
― 確かにそうですね! ちなみに事業計画というのはどういったことを決めるのでしょうか?
まず未来の話として、自動走行が2035年までに実現するだろうと言われているんですね。自動走行できる車が普及したら、移動手段としての車の需要は高まる一方、わざわざ自分の手でハンドルを握って運転することは、趣味のようなものになると思っています。
中古車を売っている身からすると、そんな社会になったときにも「車を運転することって楽しいんだ」と思ってもらいたいです。
― 遠い未来のことまで考えてサービスの方針を考えるのですね。
もちろんそういった未来だけではなく、今現在の業界の変化や兆しといったものをきちんと視野に入れて、戦略を考えていきます。
今の世代って、昔の世代と車の選び方が全然違うんですよね。昔のバブル世代の方々は「モテたい」から車を買っていた人が多かったんです。なので車種や車体のこだわりが強かった。
でも今の世代は、「この車じゃないといけない」という指向があまりなくて、乗り換えに一貫性がないんです。こだわりが薄まっていて、自分で慎重に検討した上で出会った1台に心ひかれるところがあります。
そういった時代のニーズにあわせてサービスを改善しようとなると、やることは山ほどあります。
嘘をつかないUXを作りたい
― 今後のキャリアを考えたとき、この先もUXデザイナーとして仕事をやっていきたいと思いますか?
どのような仕事をするにせよ、UXデザインに関連したものにはなると思っています。UXデザイン以外の能力を伸ばすために、別の領域に踏み込んで肩書きが変わる可能性はあるかもしれないですが、最後にはUXデザインに戻ってくると思います。
変な話、“カスタマーの体験価値を高める”というUXの理念自体への思い入れがあるんです。
― 熱い想いですね! UXデザインに戻ってくると考えるのは、なぜなのでしょうか。
サービスを提供する側は、広告から実際に製品を使う所まで、一貫したユーザー体験を提供するべきだと思っています。
ユーザーに対する認知、空気感を伝えるのは広告業界でもできます。でも、サービスを作っている側の人たちは、意外とサービスの中身しか見えていなくて、「こんなCMを作りたい」みたいな広告のイメージがないことが多いんです。
「たまたまこのタレントを起用したから商品の売上が上がった」というように点でとらえるのではなくて、最後買い終わったときに、広告もユーザー体験も全部含めて、シームレスで一貫した「嘘をつかないサービス」がすごくいいなと思っています。
特にリクルートのサービスは、何が正解かわからない。就活や転職など、正解がわからないものに対する、言うなれば「お助けサービス」なんです。
ユーザーが満足できる体験のために答えがないものを探し続けることは、この会社のサービスだからこそできることだと思います。僕たちのサービスのおかげで、人生における大きな選択が良いものだったと感じてくれたらすごく嬉しい。だからこそ、今この会社でUXデザインをやっているんです。
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株式会社リクルートホールディングスでは、学生を対象にしたインターンシップ「WINTER INTERNSHIP 2018 UX DESIGNER」を今冬開催予定です。
テーマは、「ユーザーの意思決定にどこまでの影響を与えられるか」。
14日間のチーム対抗コンペティション形式のインターンシップとなっており、UXデザインの業務フローを網羅的に実務レベルで体験できるそうです。リクルートのサービスが抱える数千万のユーザー、そして数億回のアクションに影響を与えるユーザー体験を設計することができます。
学年・専攻は不問なので、UXデザインに興味がある方は応募してみてはいかがでしょうか。
応募締切 | 2017年11月9日(木) |
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開催期間 | 2018年2月13日(火)~3月2日(金) |
募集人数 | 15名程度 |
開催場所 | 株式会社リクルートホールディングス 本社 グラントウキョウサウスタワー 他 |
(締め切りました)