モバイルアプリ領域の動きは非常に早く、UXデザインにおいて成功するためには、デザイナーは先見の明を持ち、新たな課題に備えなければなりません。
ここでは皆さんのタスクを軽減するために、2018年において影響力がもっとも大きいであろうトレンドをリストアップしました。
1. ユーザージャーニーの簡略化
アプリやWebサイトを使用する場合、ユーザーには特定の目的があります。その目的を達成するために費やす労力が少ないほど、より良い体験となるのです。
リニアユーザフロー
リニアデザイン体験とは、ユーザーが各ステップを1つのアクションで完了できるようにするための開始・途中・終了があるUXのことです。タスクを完了するために必要な時間を見積もることができるため、リニアユーザーフローはユーザーのためになります。
プログレッシブディスクロージャー
アプリに多くの情報や操作がある場合、すべてを一度に表示する必要はありません。デザイナーはプログレッシブディスクロージャー(段階的開示)という、ユーザーが必要な場合にのみ情報や操作を表示するテクニックを使います。プログレッシブディスクロージャーは認知負荷を軽減し、インターフェイスの理解を向上させることができます。
2. アニメーションと対を成すアプリ内ジェスチャー
iPhone Xのリリースに伴い、デザイナーは新たな課題に直面しました。物理的なホームボタンがないので、もっとも基本的なインタラクションでさえもジェスチャーベースとなりました。これは、デザイナーにとって何を意味するのでしょうか? デザイナーはジェスチャーに対してより注意を払う必要があるということです。
ジェスチャーベースのインターフェースにどのような課題があるのか知りたい場合は、そのトピックについて書かれたDon Norman氏の記事「ジェスチャーインタフェース:ユーザビリティの後退」を読んでみてください。この記事では見つけやすさや学習可能性の問題など、ジェスチャーベースのインタラクションに関連する重要な問題について説明されています。
これらの問題を解決するため、デザイナーはモーションデザインとマイクロインタラクションに注目するべきです。
アニメーションは、以下のような場合に使用されます。
- どのようなインタラクションが可能かを明確にする(アニメーション化されたヒント)
- それぞれのUI要素(アニメーション化されたトランジション)の空間的関係を明確にする
- インタラクションに関するフィードバックを提供する
3. コンテンツ中心の体験
うまく整理されアクセスしやすいコンテンツは、モバイルアプリを対象ユーザーにとって魅力的にすることができます。デザイナーは以下の項目を行うことで、コンテンツを中心にすることができるでしょう。
整理整頓
視覚的な混乱を取り除き、わかりやすくすることは、多くのUXデザイナーにとって共通の目標です。デザイナーはコンテンツを優先し、わかりやすい視覚言語を注意して作ることで、無関係の情報(ノイズ)を取り除き、関連情報(シグナル)の優先順位をつけことができます。
視覚的な混乱をすべて取り除くことで、コミュニケーションにおけるメッセージの核心部分に集中しやすくなります。
明確なビジュアルヒエラルキー
コンテンツをわかりやすくするために、UI要素に明確な順序を取り入れましょう。インタラクティブな要素や必須情報へとユーザーを誘導するために、強力なビジュアルの要素(コールトゥアクションボタンの対比色など)が使われます。
4. フルスクリーン体験
サムスンのGalaxy S8とiPhone Xのリリースに伴い、フレームレスデザインがトレンドになりました。ユーザーの利用可能な画面スペースが広がったため、フルスクリーン体験が期待されます。
HD画像と動画
アプリの全画面表示が重要であるということだけではありません。資産の品質が、アプリに関するユーザーの期待に直接的な影響を与えます。画像はモバイルの画面上に、ピクセル化されて表示されてはいけないのです。
5. 鮮やかな色合い
色は、デザイナーが扱うもっとも強力なツールの1つです。色によって注意を引き、雰囲気を整え、ユーザーの感情や行動に影響を与えることができます。モバイルアプリのデザインに関して言えば、今は間違いなく鮮やかな色合いの時代です。
機能要素としての色
色は美しさだけでなく機能的な体験の一部にも使われます。たとえば、デザイナーは色を使用してさまざまなタイプの通知を視覚的に区別するでしょう。
6. 感情的な体験
2018年は、さらに「心の知能」(EI=emotional intelligence)がモバイル体験に組み込まれるでしょう。EIが利用されるのは、もはやユーザーが特定のアクションを完了したときに表示されるアニメーション効果だけではありません。EIは、体験をより魅力的で楽しいものにする強力な方法なのです。
感情を表現するためのより良い方法
感情を表現することは人々にとって自然なことです。CUIの時代でさえも、私たちは顔文字を使って伝えてきました。
モバイルデバイスの時代では、より幅広い感情を共有することができるでしょう。たとえば、顔認識によってより適切なリアクションを提供することができます。このようなテクノロジーの1つが、iPhone Xでカメラを介して表情に反応するアニメーション絵文字のアニ文字です。
アプリとの自然なインタラクション
ジェスチャーをさらに重視することで、アプリとのインタラクション方法が変化するでしょう。たとえば、コンテンツに「いいね」をする方法です。ボタンやアイコンをタップする代わりに、画面上に「ハート」アイコンを描くことでより自然な方法になります。
フィードバックで感情を表現する
人間である私たちは、使用するすべての製品と感情的なつながりを確立します。したがって、製品とのインタラクションの際にある程度の人間的なフィードバックを期待しています。製品は人間ではないため感情がないとわかっていても、感じることができると信じたいのです。
7. ビデオの支配
2017年にコンテンツのマーケティング形式として、ビデオの人気が急上昇しました。Hubspotによると、78%の人がオンラインで毎週ビデオを視聴し、55%はオンラインで毎日ビデオを視聴しています。
モバイルデバイスのコンテキストでは、デザイナーはビデオフォーマットを媒体に適応させるでしょう。
集中力の短い持続時間に適応したビデオ
平均的な人間の集中力の持続時間は、2000年の12秒から2015年には8秒にまで低下しました。この変化に適応した結果、360度のビデオやFacebook Liveのようなフォーマットが作成されて、コンテンツの新しい配信方法が誕生したのです。2018年には、より多くのユーザーと企業がこのフォーマットを使用して、重要でタイムリーな情報を配信するでしょう。
ポートレートオリエンテーションのためのビデオの適応
Luke Wによると、携帯電話の94%が縦向きで使用されていました。これは、すべてのコンテンツ(ビデオを含む)が縦向きに適応する必要があるということを意味しています。
8. 生体認証
バイオメトリクスベースのテクノロジーを利用したアプリは、従来のログイン要件の要求を回避することができます。バイオメトリクスでは顔認証、指紋や音声認証などの、生理的もしくは行動上の特徴が必要とされます。
より多くの人々が生体認証を使用する
生体認証はまったく新しい技術というわけではありません。今日多くの人々は、パスワードの代わりに生体認証を使用しています。Appleによると、平均的なiPhoneユーザーは1日あたり80回デバイスのロックを解除し、89%はロック解除にタッチIDを使用しています。2018年にはバイオメトリクスがよりアクセスしやすくなり、認証やID管理の目的でのバイオメトリクスの使用が増えていくでしょう。これは、生体認証のテクノロジーをモバイルアプリに組み込んだ企業とエンドユーザーの両方のセキュリティを強化することもできます。
Touch IDの代替としてのFace ID
2018年にはもっとも安全性が高く、同時に認証のために使いやすいもの、つまり顔を認証に使用するようになります。iPhone Xユーザーが利用できるようになったFace IDは、来年にはもっとも自然な認証方法になる可能性があります。
9. 会話型デザイン
2015 comScoreの研究によると、一般ユーザーは大体3つのアプリのみを頻繁に使用しており、その内の少なくとも1つはメッセージアプリだそうです。人々は会話が好きなのです。そのため、2018年は人工知能を利用したチャットボットと音声認識アシスタントが注目されるでしょう。
アシスタントのチャットボットがメッセージ用プラットフォームに組み込まれる
チャットボットは通常のGUI体験の完全な代替品とはならないかもしれません。しかし、メッセージ用プラットフォーム(Facebookメッセージなど)にアシスタントとして組み込まれるでしょう。企業は顧客とリアルタイムでの自動会話ができるようになります。
より洗練された音声アシスタント
画面上のユーザーインターフェースは、私たちがアプリとインタラクションを持つ唯一の方法ではありません。自然言語処理と計算能力の大幅な進歩により、音声ベースという異なるタイプのインタフェースを使用することが可能になりました。2016年に、Googleはすべてのモバイル検索のうち約20%が音声起動によるものだと発表しました。音声起動型インターフェイスが今後重要なものとなることは、目に見えています。音声起動型インタラクションは、入力をなくすことでユーザー体験を向上させます。また、今まではアプリの使用方法を学習しなければならなかったため、アプリユーザーの抱える、ほかの潜在的なストレスのもともなくします。
最高のインターフェースには、インターフェースがありません
コピーライティングの重要性
デザイナーと開発者の間での会話型インターフェースブームにより、このタイプのインターフェースのためのコピーライティングの重要性が認識され始めるでしょう。チャットボットは、ほぼ完全にユーザーと機械の間の会話に基づいているため、各単語を慎重に選択する必要があります。
10. 高度なカスタマイズ
パーソナライズされたUXは、2018年も引き続き最新の流行となるでしょう。
ユーザーの位置に基づいてコンテンツを提供する
モバイルデバイスはユーザーと一緒に移動しているため、デバイスにインストールされたアプリは、ユーザーの現在地に関連するコンテンツを提供するために、位置情報を利用することができます。これにより、サービスをユーザーの周辺環境に対してよりレスポンシブなものにします。
スターバックスのような一部のアプリでは、既にこのプロパティを利用してユーザーに特別価格を提供しています。より良い体験にするために、2018年にはさらに多くのアプリがこのような性能を使うようになるでしょう。
オーダーメイドのユーザーインターフェイス
UIデザインにおけるパーソナライゼーションは、コンテンツに限りません。ユーザーは全員それぞれ違います。視力が良くない人もいれば、色盲の人もいるでしょう。では、なぜアプリは全員に同じUIを提供すべきなのでしょうか?
パーソナライゼーションは個人にレイアウトを適応させるということにもなるでしょう。レイアウトの適応は、ユーザーが既に提供している情報を利用したり、デバイスセンサー(ユーザーのアプリとのインタラクション方法や、どのような問題に直面しているかを追跡する)を使用することで達成させることができます。この情報に基づいて、アプリはより大きなフォントサイズが必要かどうか、動画を再生する際に音量を大きくするかなどを判断することができます。
11. 拡張現実
会話型インターフェースに加えて、アプリの見方や使用方法を完全に変えることを約束する別の方向性があります。それは、拡張現実(AR)の急速な発生です。1年前、Mark Zuckerberg氏はすべての画面が最終的にレンズに置き換えられると予測しました。すでに、2018年が拡張現実の年になることは明らかです。多くの人が携帯電話やタブレットを仮想世界へのレンズとして使用するでしょう。
AR体験の作成がずっとかんたんになる
今日、市販されているARベースのアプリはすでにたくさんあります。しかし、最近までARアプリの作成は簡単ではありませんでした。2017年にAppleとGoogleは、ARアプリの構築をより簡単にするARフレームワークをリリースしました。
エンターテインメントとしてのAR
私たちの大半はPokemon Goを良く知っています。Pokemon GoはAR体験がエンターテイメントとなる方法の素晴らしい例です。しかし、ARはゲームだけに限定されません。たとえば、ARレンズをメッセージ用アプリに組み込むと、より魅力的なユーザー体験を提供できます。
現実の問題に対する解決策としてのAR
ARは実際の問題を解決し、ユーザーに本当の価値を提供するテクノロジーへ急速に移行しています。たとえばAR Measureを使用すると、従来の物理的なものさしを使わずに現実の物体を測定することができます。
12. キャッシュレスの支払い
キャッシュレスの支払いは、多くのユーザーの新たな基準としてどんどん成長しています(この支払い方法の利用者数は、2017年にほぼ倍増しました)。
キャッシュレスの支払いは、日常レベルの商取引をくつがえすほどの強力なものです。たとえば、ユーザーの割合が特に高い中国などの地域では、キャッシュレスの支払いのほうが好まれています。
これは、モバイルアプリの開発者に対してどのような意味を持つのでしょうか。それはつまり、2018年にはオフラインとオンラインの両方で、Apple Pay/Android Payをデフォルトオプションとして提供する必要があるということです。