ソフトバンクの新規事業ではどのようにデザインを進めているのか?

UX MILK編集部

モノづくりのヒントになるような記事をお届けします。

前回の記事では、ソフトバンクの公式サイトリニューアルを中心とした既存事業についてインタビューをしてきました。

そこで、今回はソフトバンクの新規事業について、同社のクリエイティブディレクターである梅津氏にお聞きしてきました。

インタビュイー
ソフトバンク株式会社 顧客基盤推進本部 UX企画課 梅津 しおん氏

ソフトバンクの新規事業

── まず、新規事業における梅津さんの役割や担当範囲を教えてください。

梅津:私が担当するのは、主に新規事業におけるユーザー体験にかかわるクリエイティブ全般です。新規事業の場合は、サービス自体の開発とそのプロモーションでクリエイティブ制作が必要になってくるので、多くの新規事業に関わることになりますね。

クリエイティブのどの範囲までを担当するかは案件によって違います。ビジュアルアイデンティティの作成などコンセプト段階から入る案件もあれば、クリエイティブの監修しかしない案件まで幅広いです。

── あまりイメージがなかったのですが、ソフトバンクの新規事業案件を担当することは多いですか?

梅津:多いですね。私のチームが現在関わっている大きい案件だけでも4、5本くらいあります。小さい案件まで含めると、20本くらいですかね。

ただ、話題になるような大型案件の多くは社内でも当然、秘匿扱いですね。私もいくつか関わる機会がありますが、知らない案件も社内でいっぱい動いていると思います。

── けっこう数が多いですね。大きい案件と小さい案件はそれぞれどういったものですか?

梅津:大きな案件では、サービスコンセプトなど上流工程からサービスリリースまで関わるものがあります。小さな案件は単発のプロモーションページ制作などがありますね。

私のチームで対応している制作案件にフォーカスすると、小さいものではバナー1つのクリエイティブ制作まであります。どんな小さなものでも、きちんと一定のクオリティーを担保した上で世の中に出すという方針なので、バナー1つでも必ず私の方でクリエイティブチェックを実施しています。

バナー制作を例にすると、掲載箇所からリンク先のランディングページ、ゴールまでの流れも確認します。それは、なぜこのバナーを必要としているのか、その期待値を正しく理解することで、目的達成のためにどんなクリエイティブがふさわしいかを考えるためです。それならこう見せよう、ユーザーの気持ちの流れを考えるとコピーはこっちの方がいいよね、と企画担当へさらなる改善案を出したりもします。

言われたものを作るだけであれば外部の制作会社に依頼すれば良いと思うので、私のチームが関わるものは必ず一定のクオリティー以上のものを出すということを心掛けています。

最短でアウトプットを出すことを重視

── いくつも新規事業を担当されてきたと思うのですが、新規事業の案件に関して重視していることはありますか?

梅津:まずは実際にモノを作ることを重視しています。私たち現場の人であればワイヤーフレームを見るだけである程度どんなサービスのUIやユーザー体験になるか想像できるのですが、多くの人は実際にビジュアルが入っていないと伝わらないんですよね。そのため、レビューをするにしても、そもそもモノがないと良し悪しの判断ができず話が進まないのです。

そのため、まずモノを見せること。それに対して意見をもらって改善をするということをサイクルとして回しています。時間のない案件だとAdobe XDを使って1日程度でモノをつくり、レビューしながらその場で修正するということもあります。

── いわゆるMVPのようなものを作って、アウトプットを早めに出すということを重視しているのですね。

梅津:そうですね。開発がスタートしてからはアジャイルやスプリントといった開発手法をベースに進めることが多いです。スプリントで改善提案をしていくことで、早いタイミングから精度の高いものに仕上げることが出来るようになりました。

新規事業開発においては、サービスリリースまでいくつかフェーズ切りされており、次のフェーズに進むために必要なアウトプットも明確化されています。また各フェーズの中で必要に応じて何度でもユーザーテストを実施します。他にもグロースハックの浸透など、良いものを世に送り出すために社内の意識改革などにも注力しています。

── 新規事業では多くの課題にぶつかると思うのですが、特に新規事業の案件における課題などはありますか?

梅津:よくある話しですが、全体的に時間が足りないということはあります。ただ、時間がないからと言って、ユーザーではなく期日に合わせたサービス設計をするということはやらないようにしています。まずはじめにサービスの理想形を描き、フィージビリティテストをかけます。その上でユーザーの利用体験を意識して開発の優先順位を設定し、フェーズを分けて理想形を目指します。

── スモールスタートして改善を繰り返すという感じですね。

梅津:そうですね。その場合に気をつけないといけないのは、なかなか理想形にたどり着けないという問題です。どういうことかと言うと、もちろん一定以上のクオリティーは担保しているものの、それでもスモールスタートなのでどうしても粗が出てきてしまいます。こうした粗は指摘されやすいので早めに修正しますが、粗を直している間にまた次の粗が出てきてしまい、最初の理想形を目指した改善ではなく、改修作業のループになってしまうこともあります。こういった落とし穴にはまらないように気をつけています。

最近では、このクオリティーではリリースできないと判断すれば、リリースを1週間、2週間と遅らせてでもちゃんと改善されるまで外に出さないという、良いものを世に送り出す風潮になってきました。

新規事業のケーススタディ

── 梅津さんが最近担当された新規事業の中で印象的なものはありますか?

梅津:最近では、ビッグデータとAIを活用したレンディングサービス「J.Score」や学習支援プラットフォーム「Classi(クラッシー)」、アプリ使い放題サービス「App Pass」などがありますね。なかでも、Classiはサービスの立ち上げ時に関わっているので印象的です。

── では、Classiについてお聞きしたいのですが、具体的にどういったサービスなのですか?

梅津:Classiはベネッセホールディングスとソフトバンクのジョイントベンチャー(JV)として始まったもので、全国の高校の約4割が導入、約80万人が利用するまでに成長しています。簡単に説明すると「先生方の授業・生徒指導」「生徒の学習」を、ICTを活用してサポートするサービスですね。

当初は、ICT教育に関するサービスということしか決まっていなかったので、まずUX設計に入る前に「校務をより快適に、先生と生徒につながりを」というサービスコンセプトをたてて開発に入りました。

開発当初のUIイメージ。2014年以降は、学校現場の声を聞きながらClassi社が独自で開発を進めている。

── これはサービスコンセプトを決めるところから入っているんですね。

梅津:そうですね。あとは、コーポレートアイデンティティ(CI)もなかったので、これも作りました。

この時は、ブランドカラーを決めるためにイメージスケールという手法を使ってプロジェクトメンバーで配色設計を行いました。サービスコンセプトから想起できる抽象的なコトバをもとにイメージスケールに落とし込んでブランドカラーを決めました。その時に決めたCIは、現在もキーカラーとして活用されています。

── Classiの場合は青ですか?

梅津:そうです。やはり教育には誠実さや爽やかさなどが重視されるので青に寄りがちになるということはわかっていたのですが、青の中でもどういう色味や配色でいくかということを検討しました。

デザインをしていると、「なぜこの色なのかと」と聞かれることが多いと思うのですが、イメージスケールを使うと、配色設計の考え方を論理的に説明できるので良かったですね。JVだったこともあり、関係者は多かったのですが比較的スムーズにCIを決めることができました。

さらに加速するソフトバンクの新規事業

── これからの話になるのですが、ソフトバンクとして新規事業は注力していくのですか?

梅津: いろいろな話が動いているので新しい事業はさらに増えていくと思っています。

── そうなると、梅津さんのチームも拡大していきそうですね。

梅津:拡大して欲しいですが、いまの時点では何とも言えないですね(笑)。ただ私の組織の本部長自身はロジカルな人なので情報設計などにはすごくうるさいのですが、クリエイティブに関しても理解を示してくれており、そこは任せてもらえているので仕事はやりやすいです。

新しい案件も常に動いているので、さまざまなことに挑戦したい人にはすごく楽しい現場だと思います。チーム内でもよりスキルアップにつながる実践形式や座学の育成プログラムも行なっているので、環境は整いつつありますね。

── さまざまな案件に触れて経験を積めるのは魅力的ですね。今回はありがとうございました。

・・・

今回はソフトバンクにおける新規事業の事例についてご紹介しました。

梅津氏が所属しているUX企画課では、UXデザイナーを募集しています。巨大な既存事業からさまざまな業種の新規事業まで経験できるのは、ソフトバンクの魅力だと思うので、興味がある方は募集要項をチェックしてみてください。

募集要項を見る

提供:ソフトバンク株式会社
企画制作:UX MILK編集部