私たちは『How to Make Sense of Any Mess』という本について、この本の著者であり、情報アーキテクトでもあるAbby Covert氏と話をしました。今回は、その本の内容を抜粋してご紹介します。
この抜粋について
今回ご紹介するのは、『How to Make Sense of Any Mess』の第一章からの抜粋です。この本は現在、ペーパーバック版、Kindle版をAmazon経由で購入することができます。
編集部追記:
『How to Make Sense of Any Mess』は、日本語の翻訳版もございます。
『今日からはじめる情報設計』
監修:長谷川敦士氏、翻訳:安藤幸央氏
情報設計について、より詳しく読みたい方はぜひご購入ください。
はじめに
日常にあふれている、意味を理解しなければいけない様々なものについて考えてみましょう。プロジェクトや製品、サービス、プロセス、収集、イベント、パフォーマンス、箱、抽斗、クローゼット、部屋、リスト、計画、取扱説明書、地図、レシピ、道順、人間関係、会話、アイデア。リストはどんどん続きます。
混沌や混乱、複雑さに直面してもなお進んでいかねばならないという経験は、誰だってしているでしょう。
情報設計(以下IA)とは、情報の欠如や間違い、不十分さや過剰さによって生じる混乱を秩序立てるときに、誰でも、いつでも役立てることができる概念です。
学生、先生、デザイナー、ライター、技術者、分析家、経営者、マーケター、ディレクター、幹部社員など、あなたが誰であろうと、この本はあなたのためのものです。
ニューヨークからシカゴへのフライト程度の時間で、あなたが直面するどのような混乱も解決できるよう、IAについてお教えします。
「アップルパイを一から作り始めるなら、まずは宇宙を創造しなくてはいけない」– Carl Sagan, Cosmos
混乱は、情報と人々によって生み出される
混乱とは、なにか人を困らせたり困難だったりするあらゆる状況を指します。誰もが混乱に直面します。
例えば、日常生活の次のような場面で、混乱に対処しなければならないでしょう。
・チームや組織の構造
・実行中の共同作業の過程
・商品やサービスの表現、販売、伝達方法
・相互のコミュニケーションの方法
直面している混乱に光を当てることは難しい
人は混乱が目の前にあることを認めたくありません。暗い部屋の隅にいる子どものように、恐怖に身体をこわばらせ、どう対処すればいいのか、知ろうとさえしません。
困惑し、時間をずるずると引き伸ばし、自分を責め、不満を抱えるばかりで、世界を変えようとはしません。
混乱に上手く対処する最初の一歩は、それを光で照らし、明らかにすることです。それによって混乱の輪郭や深さを知ることができます。
一度作業空間を照らし出せば、混乱を解決するための困難な道のりでも、自分自身を案内できるようになります。
このガイドブックは、そうしたことにほとんど対処した経験のない方でも、これから出くわす情報(と人々!)から生じる混乱を上手く扱うことができるよう、書かれています。
IAは周りのあらゆるところにある
IAは、なにかのパーツを理解できるように並べる方法です。
例えば、
・辞書や百科事典で使われているアルファベット順の相互参照システム
・Webサイトのナビゲーションで使われているリンク
・レストランのメニューにおけるカテゴリー、細かな種類と名前
・ソフトウェアプログラムやアプリケーションにおけるカテゴリー、ラベル、タスク
・旅行者を導くための空港の案内看板
などです。
私たちを取り巻く世界を秩序立てるため、私たちはIAに頼っているのです。
世の中が変わろうとも、情報の混乱は存在する
物心ついたときから、私たちは情報を整理する方法を学んできています。
ページに番号を打ったり、アルファベット順に並べたり、目次や単語帳、地図、図表はすべて、情報化社会の時代が訪れる前から存在するIAの成果です。
テクノロジーは今も、私たちには理解できないほどの速さで、私たちが作り、使っている様々な物事を変え続けています。しかし、 落ち着いて見てみると、情報を混乱させている原因はそんなに多くはありません。
1.情報の過多
2.情報の不足
3.情報の間違い
4.上の3つの複合
人々は情報を整理する
もしかしたらあなたは、情報の混乱ははるか宇宙からやって来たエイリアンだと思いたいかもしれません。しかし、違います。
私たちが混乱を作り出したのです。
情報を整理するとき、私たちは伝えるメッセージの構造を決めます。
私たちの身の回りにあるものはすべて、誰かによって整理されたものです。その人が自分のやっていることを意識していたか、していなかったか、良い仕事をしたか、そうでないか、コンピューター任せにしたか、そうでなかったかに関わらずです。
情報は、私たち皆で共有すべき責任です。
これはもはや他人事ではありません。
情報を利用可能な素材と見なし、私たちのゴールに到達できるように整理する方法を学ばなければ、この新しい世界では、成功することはできないでしょう。
すべては複雑に絡み合っている
単純なものもあります。複雑なものもあります。そして、宇宙に存在する一つ一つのものは絡み合っています。
複雑さは困難の一要素であり、私たちはそこから逃れることはできません。
あなたが以下の三つのような複雑さに直面する可能性があるでしょう。
・誰かと共同作業をしているときに、対処方法について同意を得ていなかったり、明確な方向性が欠けているために発生する複雑さ。
・人々とシステムとの役に立つつながりを作り出し、変更を加え、アクセスし、維持する複雑さ。それを使わないと私たちはコミュニケーションを取ることができない。
・人々が、自分たちの周りで何が起きているかについて、異なる見方をしている。異なった解釈をしていることで生じる混乱の複雑さ。
知識は複雑である
知識は驚くほど主観的なものです。
地球は、それが平たくないと分かる前は人々にとって平たいものでした。冥王星は、それが惑星ではないと分かる前は人々にとって惑星でした。
真実は一つのはずですが、主観によって多様な見方があることは避けられないことに思えます。
しかし、事実を立証するために、私たちは矛盾や疑問点に気づくこと、改善する機会に出会うことを恐れず、混乱に立ち向かわねばなりません。私たちは存在する事実の多様性に寛容である必要があります。
これには、あるものがある人にとってどんな意味を持つかに同意することも含まれます。それは主観的な事実です。それによって対立を避け、本当の事実が何であるか仮説を立てることができます。
なにか私たちが作ったものについて、人々が異なる解釈の仕方をしていると、混乱はより大きく、より恐ろしいものになります。そうした場合には、自分たちが知っていることはとりあえず脇に置いておいて、疑問を解決するために前進しなければなりません。
すべての物事は情報を持っている
人生を通じて、あなたはたくさんの物事を作り、使用し、維持し、消費し、伝え、取り戻し、受け止め、与え、考え、開発し、学び、そして忘れます。
この本は物事です。今、読んでいるときに座っているのも、それが何であれ、物事です。1秒前に考えていたことは何? それも物事です。
物事の種類、形、大きさはそれぞれ様々です。
あなたが秩序立てたい物事は、アナログかもしれませんしデジタルかもしれません。一度きりの物事かもしれませんし、生涯に渡る物事かもしれません。人の手によって作られた物事かもしれませんし、機械によって製造された物事かも知れません。
私はウェブサイトや携帯アプリ、その他最新のトレンドについてのIAの本を書くことも出来ましたが、そうせずに、どのような物事から成立しているものであれ、私たちが議論することができるあらゆる混乱に焦点を当てる本を書くことにしました。
それは、すべての混乱やすべての物事は、ある一つ重要な物事ではないもの、すなわち情報を共有していると考えているからです。
情報とはなにか?
情報は一時的な流行りのものではありません。情報化社会になってから生まれたものでもありません。概念としては、共同作業や言語と同じくらい古くから存在しているものです。
情報について、私がお教えできる最も大事なことは、情報は物事ではないということです。それは主観的なものであり、客観的なものではありません。それは、ユーザーが出会った物事を配置すること、順序立てることから解釈されるものです。
例えば、パン屋さんの陳列棚をのぞき込んでいるところをイメージしてください。一つのお皿にはオートミールのレーズンクッキーがあふれんばかりに乗っていて、もう一つのお皿にはチョコチップクッキーが一個だけ乗っていたとします。あなたは、チョコチップクッキーが、お皿の上にはもっと乗っていたということで私に賭けますか? ほとんどの人は賭けに乗るでしょう。あらゆる、すでに知っている情報から推測して、おそらくもっと多くのクッキーがお皿の上に乗っていたと考えられるからです。
お皿の上にクッキーが乗っていたことが信じられるか信じられないかは、観ている人がクッキーの配置のされ方を解釈して得られる情報です。私たちが人々の解釈の仕方を変える意図でクッキーを配置するとき、私たちは情報を組み立てているのです。
私たちが何か特定の情報を伝えるために物事を配置するとき、私たちには情報を作り出すことはできません。見る人が私たちのためにそれをするのです。
情報はデータやコンテンツではない
データとは各要素であり、観察結果であり、なにかに対する疑問です。コンテンツとはクッキーであったり、言葉であったり、文書、イメージ、ビデオ、その他あなたが配置したり並べたりしているものです。
情報とデータやコンテンツを見分けるにはコツがいりますが、大事なポイントは、データやコンテンツが無くても、そこに何かの存在を意味し得るということです。例えばスーパーマーケットの陳列棚に空いている場所があったとして、それがなぜだと思うか二人の人に考えさせると、一方はその商品が売り切れたのだと解釈し、もう一方はその商品は人気があるのだと解釈するかもしれません。
瓶やジャム、値札、陳列棚はコンテンツです。人々がそうしたものを詳しく観察することによって得られるものはデータです。人々が陳列棚を見て、空いている場所について事実だと信じる事柄が情報です。
この続きは本で
本の抜粋はここまでです。下記がこの本の目次ですので、ここからどのような話が展開されるかお分かりになるかと思います。
・混乱を特定する
・あなたの目的を明確にする
・現実に対峙する
・方向を選択する
・距離を計測する
・構造と遊ぶ
・調整する準備をする
用語集や、この本ができることになった経緯はオンラインで見ることが可能です。このプロジェクトの詳しい情報は本のウェブサイトでご覧ください。
購入したい場合は、ペーパーバック版と、Kindle版がアマゾンで購入できます。
『How to Make Sense of Any Mess』を日本語で読みたい方はこちら:
『今日からはじめる情報設計』
監修:長谷川敦士氏、翻訳:安藤幸央氏