ソフトバンクが、イギリスの大手半導体企業ARM(アーム)を約3兆3000億円(240億ポンド)で買収すると発表し話題になりました。
ソフトバンクの孫正義氏は、ロンドンでの記者会見で「大きなパラダイムシフトはインターネットからモバイルに移り、その次はIoT(Internet of Things)」と述べており、今回の買収からソフトバンクが次の事業としてIoTに大きく賭けていることが伺えます。
ARMのビジネスモデル
ARMは、PCやスマートフォンの頭脳であるプロセッサの設計を手掛ける企業です。孫氏が「世界中のスマートフォンの97%がARM社設計チップを搭載している」と述べている通り、スマートフォンや自動車・IoTの分野で圧倒的なプレゼンスを発揮しています。
知財によって売上をたてるモデル
同じくCPUを扱うインテルとは異なり、ARMは工場を持たずCPUチップの設計(ライセンス)を他の企業に提供することで売上を立てるファブレスという形態をとっています。そのため、ARMのコストはほぼ研究開発費(R&D)に費やされます。
ARMが描くIoTの未来
ARMが描くIoTの未来で、重要なキーワードは「センサー」です。これは、ARMが掲げる「From Sensor to Server(センサーからサーバーまで)」というキャッチコピーにも表れています。
数十億ものデバイスが接続するIoTの未来
現在のIoTは、特定用途のセンサーがある特定のクラウドプラットフォームに接続するのみにとどまっていますが、将来は家電や服から医療機器、工業機械まで数十億ものデバイスが相互に接続されるようになります。そして、この未来のIoTで必要となるものが、長期の運用に耐えるコスパフォーマンスが良いセンサーです。
巨大なIoTのプラットフォームとなる
つまり、IoTの核となるのは、センサーであるとARMは考えています。ARMはセンサーの開発で必要となる低コスト・低電力消費のプロセッサの技術をライセンス提供することで、巨大なIoTのプラットフォームをつくりあげようとしていると考えられます。
さらに、これらのセンサーがひとつひとつのデータをプラットフォームに蓄積していくことでビッグデータとなり、さまざま分野のデータ解析に使われるようになります。
ソフトバンクのIoT領域への投資
ソフトバンクによるARMの買収に関しては、「買収額が高すぎる」「ポンド安を狙った投機的な買収」といった否定的意見から賛成する意見までさまざまあります。
孫氏は、今回の「ソフトバンクの長期的ビジョンに完全に合致する投資」と説明しており、長期的な展開にたった投資であるとしています。
ソフトバンクロボティクスへの巨額投資
実際、ソフトバンクはPepperを始めロボティクス分野への投資を増やしており、Pepperを扱うソフトバンクのグループ企業であるソフトバンクロボティクス株式会社のこれまで累計出資額は700億円を超えると見られており、ソフトバンクグループの中でも大きな投資分野となっています。
IoT分野でのアドバンテージ
ソフトバンクはARMの買収で、IoTのベースとなる世界最高のプロセッサ(センサー)の技術を獲得しました。これに、ソフトバンクが既に持っている通信に関する技術を組み合わせることで、次のパラダイムシフトであるIoT分野でソフトバンクはかなりのアドバンテージを得ることができるのでないでしょうか。