編集部より
社会現象となっているポケモンGOですが、国内でもようやくリリースされ、はじめての週末が終わりました。この記事は、米国のリリース初週にNYのデザイナーであるTobias van Schneider
氏が感じたことをまとめたものです。ポケモンGOがリリースされた今、米国と日本では感じ方にどのような違いがあるか、考えながら読んでみてください。
今週、話題沸騰中の大人気モバイルゲームアプリ、ポケモンGOはもうご存知ですよね。
この記事ではそのレビューではなく、ポケモンGOが私たちに与える影響をまとめてみました。ポケモンに興味がない人にも価値ある記事になるように、商品とマーケティングという2つの観点からその舞台裏を覗いてみたいと思います。
私の場合、ポケモンGOが発売されてすぐにこのゲームに夢中になりました。その理由は色々あるのかもしれませんが、その懐かしさにとても惹かれました。10代の頃、ゲームボーイカラーで何時間もポケモンをするのが大好きでした(当時ポケモンで遊ぶには年が少しいき過ぎていましたが)。
今、そのポケモンGOが発売直後たった数日間でiOSのApp Storeで人気有料アプリ第1位となったのです。さらにユーザーはアプリをダウンロードするだけではなく、アプリ内課金にもたくさんお金を費やしています。Sensor Towerは、ポケモンGOは現在アメリカのiPhoneアプリの売り上げ第1位となり、さらにその収益を伸ばしていると発表。現時点で、発売直後の1週間にも満たないうちに約1000万ダウンロードを記録しました。
経済誌Forbesは、ポケモンGOの1日の利用者数(DAU)はTwitterを越える勢いだと発表し、たった数日でしかもまだアメリカ国外で正式発売されていないことを考えると、この数字の凄さを認めざるを得ません。
そもそも、ポケモンGOはどうしてこんなに人気になったのでしょうか? その理由は様々で、ポケモンGOのように人気になるための方法などあるわけないのですが、ここにいくつか挙げておきたいポイントがあります。
背景
ポケモンGOを開発したNiantic社は2002年にAndroid端末で、2014年にiOS端末で遊べるIngressというポケモンGOに似たアプリを発売しています。聞いたことがある人もいるかもしれませんが、約1200万人がプレイしたゲームにしてはあまり知られていません。このIngressは、物語は違えど、ポケモンGOと同じAR(拡張現実)ゲームなのです。
基本的にポケモンGOはIngressの技術的な面をかりて、世界的に知名度の高いポケモンの物語とそのブランド名を入れ替えたゲームなのです。ということは、Niantic社はポケモンGOを発売する前から豊富な経験があったということになり、一夜にして成功したわけではないことが分かります。またこのNiantic社は元々Google社内で設立されたようで、地理位置情報サービスに詳しいのも説明がつきます。
アクセス
ポケモンGOがiOS版とAndroid版の両方を同時発売したことは大きな成功の要因になったのではないでしょうか。今までゲーム開発元やその他の製品会社がこのようにiOS版とAndroid版の両方のを同時に発売したことがあったでしょうか。
そして、ポケモンGOには複雑な登録手続きが一切ありません。Googleアカウントでサインインするだけで、すぐにアプリが使えるようになります。Facebookのログインを使用すればよりシンプルになったかもしれませんが、Niantic社は(元)Googleということが関係しているのでしょう。
ゲームプレイ
ポケモンGOをするには、ゲームの説明はほとんどいりません。誰でも簡単に始められ、最初の報酬もすぐに獲得できます。チュートリアルもほとんどないのは、このゲームに必要ないからでしょう。
ロールプレイングゲームが成功する全ての要素がこのゲームには備わっているのです。キャラクターを自分流に設定するところから、最初のポケモンをキャッチして、道を歩きながらアイテムを集めるところまで、すべては数分の間に起き、気がつくとゲームに数時間も費やしているのです。「費やしてしまった時間やお金がもったいないから続けてしまう」スパイラルのはじまりです。
FacebookやInstagramの通知を見るのと同じように、即時にゲームはフィードバックされます。すぐ側にいるかもしれない新しいポケモンを捕まえることは、少なくともInstagramの赤い通知ボタンをクリックしたり、1日に何度も「画面をスクロールして更新する」を繰り返すのと同じような満足感を与えてくれます。
次から次へと私たちを満足させながらスムーズに誘導してくれるのです。これは商品デザインの視点から見ると、素晴らしいことです。ゲームにバグがあり1分ごとにクラッシュしても、わたしは何度も再起動してゲームをしようとしていたのですから。それだけこのゲームに夢中でした。
また、ポケモンGOはマーケティングのほとんどを口コミに頼っています。
ゲームの中には友達と繋がる機能や共有システムがありません。プレイヤーが自らスクリーンショットを撮り、ゲーム経過を他のSNSでシェアするのです。
ポケモンGOにフレンドリストがないのは、ある意味素晴らしいことです。ARゲームなので、外へ出て自分の足で歩いて、人と話さなければいけないのです。このゲームは知らない人とも交流を深めるよいきっかけになり、ゲームの中の小さなデザインアイデアが、自分はいつも決してひとりじゃないということに気づかせてくれます。(例えば、地図上で他のユーザーが集まっている場所や集合場所を見ることができます)
このゲームをすることで、すぐ簡単に友達ができるのです。それが、ポケモンGOのマジックであり、人気がこれ程まで速く広まった大きな理由なのです。他の多くのゲームやアプリは、たいてい鶏が先か卵が先かという問題に悩まされます。素晴らしいゲームであっても、まず初めに友達を加えないとゲームができなかったり、まだ友達がいないために、結局そのゲームをしないで終わったりするのです。そのゲームが自分に合っているかどうか試してみたいだけなのに。
ポケモンGOを実際にプレイしてみた結果は?
ここ数日間、私はポケモンを捕まえるためにiPhoneを自分の手から離すことなくブルックリン中を歩きまわっていました。とてもすばらしい体験でした。いつもはこんなに長くモバイルゲームに夢中になることはないのですが、こんなユニークなゲームは初めてです。
どこへ行っても、みんなポケモンGOをしていました。誰かが、変な場所で立ち止まりiPhoneを上にかざしているのを見ると、写真を撮っているわけではないというのがすぐに分かりました。
この写真は実際よりも非現実的に見えますが、私はここに写っている全員とここで出会い話をしました。昨日は、近所を数区画歩いて同じことをしている15人の全く知らない人と出会いました。
このゲームには従来のアプリやゲームでは体験できなかった何か特別なものがあります。拡張現実(AR)の世界では、デジタルと現実との間に繋がりができるのです。
普段はスマホを操作している見知らぬ人に声をかけるなんて絶対しません。もし自分と同じゲームをしていると分かったとしても、私は声をかけません。しかし、ポケモンは現実世界に存在しているといってもいいので(彼らを見るためにはカメラをオンになければなりませんが)デジタル世界が持つバリアが消えてしまうのです。
週末にポケモンGOをしている人を街で見つけた時や、または誰かが私を見つけた時は、いつも互いに声をかけ社会的な交流を持ちました。
このゲームが人と一緒にいることに難しさを感じている社交不安症の人達や、引きこもりの人、鬱の人などの数百万人にどのような影響を与えるかを考えずにはいられません。
私は、社交不安症だとは言いませんが、一人でいることを好み、大きなグループの人といるとすぐ疲れてしまうタイプです。今週のように街を歩くだけで、こんなにも知らない人と交流を持つことは今までなかったと思います。
ゲームがなくても努力すれば知らない人と話す機会を作れるかもしれませんが、言葉の方が行動より何倍も簡単です。
簡単なオンライン調査をした結果、ポケモンGOは心と体の健康に良いのではないかという何千件ものツイートをすでに見つけることができました。(もちろんこれは定性調査です)
同じような内容の記事もウェブでも多く報告されています。
さらに、読みたい方は、こちらとこちらからご覧ください。(Buzzfeed からのリンクですみません)
ポケモンGOはこの人気をキープできるか
それは、まだ誰にもわかりません。まだその答えを出すには早すぎるでしょう。ただし、何点か言えることがあります:
1. ポケモンGOは今以上の可能性を秘めています。今回のこの人気はすぐに停滞すると思いますが、このグループの中心にいる大勢のプレイヤーはこのブーム後も離れずに残るでしょう。
2. ポケモンGOは本質的なARの波を再度作り出したのです。ARはずいぶん前からありましたが、大体は注目を集めるだけ、実験的な理由だけで使われていました。今後、他の多くのゲームやアプリも必ずこの後に続くでしょう。
ポケモンGOはARを道理にかなった方法で使用できると証明したのですから。
私は数日後にはポケモンGOから離れていることでしょう。このゲームが好きじゃないわけではなく、元々私はモバイルゲームをよくするタイプではないからです。
ポケモンGOから学んだレッスンは商品デザイナー/製作者の私には、価値あるものでした。ポケモンやモバイルゲームが嫌いない人も、よく見てそこから学ぶことができるのです。