インターネットサービスが利益を得る仕組みはだいたい、課金・広告・仲介・ECの4つに分けられます。
例えば、ゲームアプリではスタミナやガチャが導入され、ユーザーにお金を使ってもらう(課金する)ように誘導する設計がされるようになりました。他にも、月額や年間の課金でさらに機能が使えるといったサービスなど、様々なプランと機能をもったアプリがアプリストアに並んでいます。
コンテンツは無料でも、アプリ自体が有料のものもあります。
また、ダウンロード無料で課金要素がないアプリも、利益をあげることを目的としていれば、上述の通り利用範囲が限定されているか、どこかに広告が入っています。
今、最初に挙げた4つの方法にない、新しい利益を得る仕組みをもって、規模を拡大しているサービスがあります。
それが世界に1億人のユーザーがいるともいわれているアプリ、Duolingoです。
語学学習アプリDuolingo
Duolingoは語学学習アプリです。
Duolingoにはゲームの要素がふんだんに取り入れられており、楽しく外国語を学ぶことができます。
ユーザーは、選択・翻訳・リスニングといった形式で出題される問題をクリアして、レベルを上げます。
出題される問題は、ユーザーの理解度にあわせて、文章が長いものや単語が難しいものになっていきます。
それだけなら「他の英語学習アプリと、それほど変わらない」と思うかもしれません。
しかし、Duolingoには、他の多くのアプリとの決定的な違いがあります。
無料で使えて、課金要素も広告もない
Duolingoは無料のアプリで、アプリ内に課金アイテムもありません。月額や年間使用でお金を払う必要もないです。さらに広告も見当たりません。
それらの要素も手伝って、多くのユーザーを抱える大きなサービスに成長しました。
通販も行っていますが、Duolingoで購入できるのは何種類かの公式グッズTシャツくらいです。
では、何かの仲介をして、手数料を取っているのでしょうか?
これは少し近いです。けれど、仲介手数料は取っていません。
それではどうやってDuolingoは利益をあげているのでしょうか。
ここで重要なのは、クラウドソーシング翻訳用プラットフォームという、Duolingoの持つもう一つの顔です。
Duolingoが実現させたWin-Winの関係
実は、BuzzFeedやCNNなどの大きなメディアが、Duolingoに文章の翻訳を依頼しているため、そこから利益を得ているのです。
そしてDuolingoの上級レベルユーザーによって文章が訳され、その翻訳された文章をDuolingoはだいたい1語あたり相場の2分の1ほどの価格でメディアに提供します。
複数の上級ユーザーによって各々翻訳がなされた後、投票で一番ふさわしい訳が選ばれるため、翻訳の質も担保されています。
メディアは格安で翻訳を依頼でき、Duolingoはそこで利益を得て、Duolingoユーザーは課金も広告も気にせず快適に実践的な語学学習ができる、三者が三様にWinとなる関係にあります。
CEOであるルイス・フォン・アン氏は、無料で、広告なしで学習できるということにこだわりました。
貧困層の人には、英語学習教材の価格は高く、また国に知識のある教師もほとんどいないために、英語を学習する意欲があってもそのための環境がないことを問題視したのです。そうして作られたのがDuolingoでした。
そして、Duolingoでされた取り組みは実際に、「貧困による学習機会の喪失」という社会問題の解決へ向けた、価値ある一歩となっています。ルイス氏の出身国であるグアテマラでは、試験的にDuolingoが公立学校の英語教育に導入されました。
クライアントを含めたユーザーにとって、ベストな経験や価値を提供する。Duolingoは理想的ともいえる、すばらしいUXを実現させたのです。
参考記事:
ルイス・フォン・アーン 「ネットを使った大規模共同作業」 ーTED
天才ルイス・フォン・アン氏が語る、言語アプリ「Duolingo」の開発経緯 ーマイナビニュース
Duolingo、無料の学校向け教育プラットフォームをリリース ーTechCrunch Jpan
来日中のDuolingo CEO、安価で手軽な語学検定アプリ提供でTOEICもディスラプトする予定と明かす ーTechCrunch Japan